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第9話 闘技場

 試合当日、エアハルトは朝早く起きていつものように稽古をする。エルメンヒルトも起きてくる。

 「今日試合があるのにいつもと一緒なのね。」「僕は、1日の初めにこれをやらないと落ち着かないよ。」

 「本当に戦うの。」「いまさら何を言っているの。」

 「死んでしまうかもしれないわ。私、一緒に逃げてもいいわよ。」「僕は逃げないよ。一緒にいてくれることは光栄だけど。」

エルメンヒルトがエアハルトに顔を近づけてくる。

 「エル、顔が近いよ。」「・・・・・」

エルメンヒルトはエアハルトに口づけをする。

 「必ず生きて帰ってきてね。ずっと一緒にいるのだから。」「あわわわーーーー」

エアハルトは驚いて後ずさりしりもちをつく。そして顔が真っ赤になる。

 「気の利いたこと言えないの。」「ご、ごめん。うれしい・・・」

エアハルトは好きな女の子にキスをされてうれしいのだが、言葉が出ない。そこへ声がかかる。

 「私のエアハルトさんにキスしないでください。」

いつからいたのかベアトリスが近づいて来る。エルメンヒルトが張り合うように言う。

 「私もキスをしたわ。ずっと一緒にいると約束したわ。」

エアハルトは約束なんてしていないと思ったがエルメンヒルトの勢いに言い出せない。

 「まあいいでしょう。エアハルトさんが勝ったら私はエアハルトさんのものになるのですから。にぎやかなことも良いでしょう。」「何を言っているの。」

 「エアハルトさんの伴侶が2人になっても構いません。」「エアハルトにハーレムでも作れせるつもり。」

 「私は一向にかまいませんわ。エアハルトさんも奥さんがたくさんいたほうが嬉しいでしょ。」「僕はそこまで考えていません。アルフレートさんのことで手いっぱいです。」

 「まあ、男の人に負けるなんて、ショックですわ。」「私はあなたの考え方にショックを受けたわ。」

エルメンヒルトはベアトリスが何を考えているのか理解できない。エアハルトはキスのことを一旦忘れて試合に集中しようとする。

 エアハルトとエルメンヒルトは食堂で朝食を食べているとアルノー、アルマ、バッシュパーティー、グーゲルパーティーが来て朝食を注文する。

 アルノーがエアハルトに言う。

 「良く寝ることはできましたか。」「はい。」

 「後は訓練の成果を出すだけです。」「アドバイスはないのですか。」

 「あのアルフレートに小細工が通用するわけありません。全力で戦うだけですから。アドバイスはありません。」「分かりました。」

代わりにアロイスが言う。

 「ヤバくなったら殺される前にギブアップするんだぞ。」「僕は最後までやります。」「そんなことをしたら死ぬぞ。」

アロイスはエアハルトの目を見る。そして理解する。こいつは前しか見ていないんだ。アルフレートが立ちふさがるなら意地でも乗り越えていくだろう。見る間に成長してきたが試合でまた大きくなると確信する。

 エアハルトたちは、時間になり闘技場に向かって出発する。通りを歩くとグリムを討伐したセクメト・クランが勢揃いしているので注目を集める。

 「あれがグリムと言う化け物を討伐した連中か。」「セクメト・クランだ。リーダーは魔力がないらしいぞ。」「あのポンコツだろ。なんでリーダーなんだ。」

 「これから閃光のアルフレートと試合をするらしいぞ。」「勝負は見えているな。」「ポンコツに何ができる。」

エアハルトの耳に観衆のひそひそ話が聞こえてくる。アルノーがエアハルトに言う。

 「みんな、あなたのことを知らないのです。帰りには称賛の言葉に替えましょう。」「はい。」

いまだにポンコツの異名がついて回る。これも魔力が無いからだ。もし、魔力があったらどうなっていただろうか。いや、かえってここまで活躍できなかったのかもしれない。

 僕は自分の道を進んで行けばいいのだ。

 エアハルトの顔が自信に満ちた顔になる。それを見たアルノー、アロイスはエアハルトはやってくれると思う。

 闘技場に着くとギルドの職員に控室に案内される。控室は豪華な造りで広く、セクメト・クランのメンバーが全員入ることが出来る。エアハルトにはアルノーが付き添うことになる。

 アルフレートはすでに自分の控室に入っている。クルトとアライダが一緒にいる。アルフレートは一言もしゃべらない。精神統一をしているのだ。

 闘技場は直径100メートルの円形の闘技スペースがあり、周りにはすり鉢状の観客席がある。収容人員は約1000人で街の中では最大の面積を誇る建物だ。

 まだ、試合開始に1時間もあるのに観客席の半分が埋まっており、今も観客が増えている。

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