第8話 試合前
訓練の最終日、エアハルトはアルノー相手に高速の打ち込みを自分のものにしていた。訓練を終えてアングラートの食卓に戻るとバッシュパーティーとグーゲルパーティーが集まっいた。
アロイスがエアハルトたち3人をねぎらって言う。
「どうなるかと思っていたが、うまくいったようだな。今日は俺たちのおごりだ。お疲れ会をやろう。」「試合はこれからですよ。」
「分かっているよ。でも、訓練をやり切ったんだろ。後は戦うだけじゃないか。」「分かりました。ごちそうになります。」
いつものように宴会が始まる。しばらくするとアルマが入って来る。アロイスがアルマに言う。
「エアハルトの訓練が無事に終わったからお疲れ会をやっているんだ。参加してくれ。」「そうか。訓練はうまくいったのか。」「・・・・・」
アロイスたちは黙り込む。アルマは心配になりエアハルトに聞く。
「アルフレートに勝てるんだよな。」「やれることはしたよ。後は試合をするだけさ。」「答えになっていないよ。」
アルノーが代わりに言う。
「エアハルトは本当に強くなったよ。でも相手はゴルドベルク最強の男だよ。勝つことは簡単ではないよ。」「俺だってわかっているよ。でも勝つと言って欲しいよ。」
「アルノーさんと命がけで訓練したんだ。勝ってみせるよ。」
エアハルトは言い切る。アロイスたちはエアハルトの言葉に盛り上がる。しかし、エルメンヒルトは不安だった。できるのなら試合をやめてほしい。
アルノーの打ち込みを受けただけで意識を失い、回復ポーションの力を借りても立つこともできなくなるくらいのダメージがあるのだ。
アルフレートの打ち込みを受ければ即死するかもしてないという考えが頭から離れない。
ベアトリスがいつの間にかエアハルトの隣にいる。エルメンヒルトとアルマは完全に意表を突かれる。
「エアハルトさん、私があなたを勝たせてあげます。」「えっ、顔が・・・」
ベアトリスが目をつむってエアハルトに顔を・・・いや、唇を近づけてくる。エアハルトはうろたえるがベアトリスは口づけをする。
「あーっ」
エルメンヒルトとアルマが声を上げるがすでに遅い。ベアトリスはエアハルトの耳に口を近づけて言う。
「勝ったら、私をエアハルトさんにあげますから、頑張ってください。好きですよ。」
アルマがベアトリスに文句を言う。
「俺のパートナーだぞ。手を出すな。」「ごめんなさい。好きになってしまったの。」「俺だって好きだぞ。」
茫然としているエアハルトにエルメンヒルトが詰め寄る。
「エアハルト、ベアトリスをもらうつもりなの?私がいるでしょ。」「うん・・・あー僕どうしたらいいのかな。」
「エアハルト、うらやましいぞー」「とうとうベアトリスをものにしやがった。あと何人女を作るのだ。」
アロイスたちはエアハルトをうらやましがる。アルノーはエアハルトを気の毒に思う。エルメンヒルトとアルマは手を結んでベアトリスの魔の手からエアハルトを守ることにする。
エアハルトはベアトリスの好意を受けることが出来ない。目標があり、恋愛にうつつをぬかす時間はない。最高の冒険者になるのだ。それにエルのことが好きだった。
ベアトリスはエアハルトに一方的な好意を突き付けている。それは、彼女がエアハルトの返答を恐れているようでもあった。
その頃、アルフレートも訓練を終えていた。クルトがアルフレートに質問する。
「仕上がりはどうだ。」「ベストですよ。」
「それはエアハルトがかわいそうだな。」「かわいそう?」
「そうだろう、本気の一撃を食らえばそれで試合終了だ。」「エアハルトはそんなに甘くありませんよ。」
「お前の一撃は人間相手だと死そのものだぞ。」「そうですね。死んでしまうようなら、そこまでの相手だというだけです。」
アルフレートは、全力を出せる相手に気持ちが高ぶってくる。試合をすれば、どちらかが地面に沈むことになるだろう。もしかしたら2人とも倒れることになるかもしれない。
どのような展開になってもし烈な戦いになるに間違いないと予想する。




