第7話 近づく試合
エアハルトとアルノーは新しい木剣に替えて訓練を再開する。アルノーは構えるが手が汗で湿っている。エアハルトの剣速がアルノーの剣速を上まっていた。
まだ、経験の差でアルノーに分がある。だが、この訓練の中で立場は逆転するだろう。
アルノーとエアハルトが高速で打ち込み合う。エアハルトの剣は空を切り、腹に木剣の打ち込みを受ける。エアハルトはまたしても倒れ意識を無くす。
エルメンヒルトが回復ポーションを口移しで口の中に流し込む。エアハルトは意識を取り戻すとすぐに立とうとする。エルメンヒルトがエアハルトを止める。
「すぐには無理よ。もう少し休んで。」「エアハルト、立ちなさい。行きますよ。」
アルノーが冷酷にもエルメンヒルトの言葉を無視して言う。エアハルトは、フラフラとたちあがる。そこへアルノーが高速で動いて打ち込みをする。
エアハルトは剣をまともに受けず、剣撃を剣筋をそらして力の方向をそらして耐える。アルノーが心の中で笑う。一瞬の間に剣の打ち込みをそらされたのだ。
昨日より確実に進歩している。エアハルトは折れずに前に歩みを進めている。それがうれしい。
エアハルトに自覚はない。エルにかっこ悪い姿を見せることが嫌だった。それよりも最高の冒険者になるためアルフレートさんを追い越さなくてはならない。
でも、アルノーにかなわない。打ち込まれて、何度も沈んだ。そして、必ず立ち上がって来た。
もう何回の立ち上がって、十分ではないか。いやまだだ、僕はこの先に進むんだ。
アルノーは高速の打ち込みに限界を感じ始める。だが、エアハルトは立ち上がって来る。諦めないのだ。そして、ボロ雑巾のように沈んでしまう。
2人の限界まで体力を使った訓練が何日も続く。アロイスが、やつれていくアルノーと毎回エルメンヒルトに背負われて帰って来るエアハルトを見て言う。
「お前たち死ぬつもりか、もうやめたらどうだ。」「心配いりません。エアハルトがやる気でいる限り、続けて見せます。」「大丈夫です。まだまだ立ち上がれます。」
「黒水晶、どうなんだ。2人とも限界だろ。」「ええ、限界だと思うけどやめないのよ。私には止められないわ。」
エルメンヒルトは泣きそうな顔をする。アロイスは黙り込む。他のメンバーも心配そうな顔をしているが何も言わない。
これはエアハルトの試練だと言えた。エアハルトを止めることは誰にもできなかった。
訓練日が残り3日になった時、アルノーの打ち込みが空を切り、エアハルトの打ち込みがアルノーを直撃する。アルノーは吐血して倒れる。意識を失っている。
エアハルトが急いで回復ポーションを口移しでアルノーの口の中に流し込む。アルノーはしばらくして意識を取り戻す。
「やりましたね。しかし、打ち込みの衝撃がこれほどとは死んでもおかしくありませんよ。」「アルノーさん、大丈夫ですか。」
「申し訳ありません。今日はまともに動けないでしょう。」「分かりました。自分で訓練を続けますので休んでいてください。」
エアハルトは木剣を振り始める。エルメンヒルトが心配してアルノーに声をかける。
「街に戻ってヒールしてもらった方が良いと思います。」「いいえ、エアハルトの時間をとることはできません。」
「分かりました。エアハルトの訓練に付き合いますので休んでいてください。」「エアハルトは何度も起き上がって来たのに私は情けない。」
「立ち上がっても、高速の剣撃が出来ないでしょ。」「その通りです。明日は魔力で防御することにします。」
「エアハルトのことお願いします。」「はい、仲間ですから、私はアンカーパーティーに残ることにします。」
「良かったです。」「エアハルトの成長を見たくなったのです。」
この日からエアハルトは剣技でアルノーを凌駕するようになる。訓練の中でアルノーも腕を上げていたが、エアハルトはそれを越えて成長していた。
アルフレートも試合までの間、訓練を続けていた。アルフレートがアライダに聞く。
「エアハルトはどうですか。調べているでしょ。」「街の外で訓練をしているようよ。毎日、ボロボロになって帰ってきたいるわ。」
「それは楽しみです。」「負けたらどうするつもり。」
「どうもしない。彼の腕を知りたいだけだ。弱ければつぶすだけです。」
アルフレートは訓練の汗を拭きながら言う。体は細いが戦うための必要な筋肉で覆われている。体を無駄なものが無いように絞って仕上げている。




