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第2話 ベアトリスのプロポーズ

 閃光のアルフレートは、鉄壁のクルトと業火のアライダに言う。

 「済まないが、私はイーリスクランを抜けさせてもらう。」「アルフレート、エアハルトと決闘をするつもりか。」

 「そうだ。クランに迷惑はかけられない。」「却下です。決闘なんかさせませんよ。」

クルトとアライダはアルフレートを引き留める。冒険者同士の決闘は禁じられている。アルフレートがエアハルトに剣を抜けば、冒険者の資格は剥奪されるだろう。

 アライダがアルフレートに提案をする。

 「冒険者ギルドにエアハルトとの試合の申請をしましょう。」「エアハルトは受けるかな。」

 「押し掛けて戦って、廃業するよりましです。私たちはダンジョンを攻略する使命があります。レベル7のあなたに抜けられては困ります。」「分かった。ギルドに申請して試合をしよう。」

 「私とクルトは応援します。まずはエアハルトの了承を得ることですね。」「俺も行くのか。」「そうです。これはイーリストリニティの問題です。」

アングラートの食卓では、休みのエアハルトをめぐって、エルメンヒルトとベアトリスが競っている。どちらが先にデートの約束を取り付けるかの勝負だ。

 エルメンヒルトは朝食の時を狙う。しかし、ベアトリスはもっと早く早朝の稽古をしているエアハルトを狙う。

 エアハルトが日課の朝の稽古を始めるとベアトリスが話しかけてくる。

 「毎朝、稽古を欠かさないわね。」「もう、習慣になっているよ。」

 「本当に剣ばかりね。」「僕にはこれしかないんだよ。」

 「たまには女の子のことを考えないの。」「僕は最高の冒険者になることで手いっぱいだよ。」

 「残念、ここにはこんなにかわいい娘がいるのに。」「うん、ベアトリスはとてもかわいいよ。」

 「本当に?」「本当だよ。」

 「だったら証拠に今日デートに誘ってくださらない。」「デート!・・・僕でいいのならデートしてください。」

 「うれしいわ。誘ってくださるのね。」「お願いします。」

エアハルトはベアトリスとデートすることになる。稽古を終えて、着替えてから食堂に行くとエルメンヒルトがいる。

 「エル、おはよう。」「おはよう。今日、一緒に出掛けない。」

 「僕、用事があるんだ。」「付き合うわよ。」

 「えーと、僕一人で行くから・・・」「どこに行くの・・・」

 「それは・・・」「誰と行くの?」

 「えっ、1人でだよ。」「うそ、ベアトリスとでしょ。」

 「どうしてわかるの。」「エアハルトに隠し事はできないわよ。」

 「エルメンヒルトさん、今日は、エアハルトさんは私とデートして下さるのよ。」「ベアトリス、抜け駆けしたわね。」

いつの間にかベアトリスがエアハルトの横に立っている。いつもの給仕の服ではなく、白いブラウスに赤色に黒の格子柄のベスト、同じ柄のふわりと広がったスカート姿である。

 「エアハルトさんは私のこととてもかわいいと言ってくれましたわ。」「本当なの?」

エルメンヒルトの目がすわっている。エアハルトは冷や汗を流しながらエルメンヒルトに言う。

 「エル、あとで落ち着いて話そう。」

エアハルトは逃げるようにベアトリスの手を引いて出かける。食堂にはエルメンヒルトが残される。しばらくするとアルマが入って来る。

 「エアハルトはいないのか。」「ベアトリスとデートに行ったわよ。」「くそ、先手をとられたか。」

エルメンヒルトとアルマは朝から酒を飲み始める。イーリストリニティは不幸にもそこへやって来る。アルフレートがエルメンヒルトに言う。

 「黒水晶、朝から飲酒とは感心しないな。」「飲まないとやっていられないわ。」「そうだ、俺たちの気持ちがわかるかー」

 「エアハルトに会いたい。」「デート中よ。ベアトリスに鼻の下を長くしているわよ。」

 「黒水晶、ベアトリスと張り合っているのか。」「悪い?どうせ私はかわいくないわよ。」

 「ベアトリスとは戦うなよ。」「ベアトリスの肩を持つの。」

 「いや、危ないから忠告したのだ。」「どういうこと。」

 「あれは私たちよりも強い。」「ベアトリスはただの宿の娘で給仕よ。」

 「ただでのではない。本当に人間かと思っている。」「アルフレートさんにそこまで言わせるのね。」

 「クルトもアライダも感じていることだ。」「ありがとう。気をつけます。」

 「私たちはここでエアハルトの帰りを待つよ。」「エアハルトに用事なら用件を伝えます。」

 「直接に話をしたいのだ。」「重要な用ですか。」

 「エアハルトに、直接に話すよ。」

エアハルトはベアトリスとデートをしていたが楽しめない。思いを寄せている、エルの目の前で他の女の子とデートして、エルに嫌われたのではないかという思いが頭の中を駆け巡っている。

 どうすればいい。ベアトリスはきれいでかわいいが心はエルに決めている。だが、最高の冒険者になることが先だ。

 ベアトリスがエアハルトの心を見透かすように言う。

 「エアハルトさん、ちゃんと私を見てくれていますか。」「どうして?」

 「今、他の女の子のことを考えていたでしょ。エルメンヒルトさんのことかな。」「違うよ。最高の冒険者になりたいと思っていたんだ。」

 「エアハルトさんは冒険のことばかりですね。」「僕にはこれしかないから。」

 「エアハルトさんは商売も向いていると思いますよ。2人でお店をやってみたいな。」「ごめん、僕は冒険者だから。」

 「残念、振られてしまいましたわ。」「僕がベアトリスさんを振るなんて恐れ多いですよ。」

 「だったら私の彼氏になってください。エアハルトさんのこと好きですよ。」「えっ・・・あ・・・」

エアハルトはベアトリスの言葉に声が出ない。ここで断ったらベアトリスを傷つけてしまう。でも僕はエルが好きだ。なんていえばいい。

 「エアハルトさん、すぐに返事をしなくてもいいですよ。私の気持ちを知っていて欲しかったの。」

ベアトリスは少し悲しげに言う。


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