第15話 不死性の秘密
ディータとカールが心臓に炎をまとわせた剣で切り裂く。一方、グリムの頭の上では、アルノーが炎をまとった剣を突き立て脳を焼く。
エアハルトは、これでグリムの急所を破壊した。これなら、再生も終わり勝負がつくと考える。
しかし、切り裂いた心臓が動き始める。頭は本体に繋がるように再生を始める。エアハルトは思わず叫ぶ。
「脳を焼いて、心臓を止めた。急所はつぶしたんだぞー、なぜ再生するんだー」
エルメンヒルトが頭の再生箇所に雷光をまとった剣を振るいながら言う。
「エアハルト、落ち着いて見落としがあるかもしれないわ。」「でも、きりがない。心臓と脳以外のどこをつぶせばいいんだ。」
アロイスたち、ディータたちが頑張っているがいつまでも体力が続くものではない。
みんなの様子を観察していたアルマがエアハルトに声をかける。
「エアハルト、グリムは脳を2つ持っているかもしれないぞ。魔物の中に頭と胸に脳を持つものがいるんだ。」「ありがとう。アルマ。」
「エアハルト、私が本体の脳を焼くわ。」「エル、そんな火力出せるのか。」
「これでもレベル6よ。任せて。」「うん。」
エルメンヒルトはグリムの背中に飛び乗るとディータとカールに忠告する。
「今から最大火力で焼くから気をつけて。」「まって、攻撃をやめると心臓がまた埋まってしまうぞ。」
ディータが言うがエルメンヒルトから返事はない。エルメンヒルトは剣を突きあげ炎をまとわせる。まとった炎は火柱になる。
巨大な炎の剣をグリムの背中に突き入れる。エルメンヒルトの剣はグリムの体を内側から焼いて行く。ディータとカールが心臓を切り裂くと血が沸騰して水蒸気が噴き出す。
エアハルトがアルノーに言う。
「お願いします。」「分かった。もう一度試すぞ。」
アルノーが炎の剣を頭に突き入れる。グリムの頭の脳が高熱で焼かれる。するとグリムの再生が止まる。そして、体が崩れ始めて、ダンジョンの地面に吸収されるように消えていく。
アロイスが喜びの声を上げる。
「やったぞー、グリムを討伐したぞー」「勝利だ」「やっと終わった。」「帰えれるぞー」
体力の限界に達していたメンバーは、終わったことにホッとする。エルメンヒルトはエアハルトに抱き着いて言う。
「私たち勝ったのよ。」「うん、やったよ。」
そこへアルマが走ってきてエアハルトの背中に抱き着いて言う。
「俺のアドバイスのおかげだぜ。」「そうだね。アルマはすごいよ。」
アルノーはグリムの魔石を拾うとかつての仲間たちに報告する「やっと化け物を討伐しましたよ」死にそびれていまいましたね。これからどうしましょう。
アロイスが指示を出す。
「各自装備を点検、25階層のベースに戻るぞ。」「「「了解」」」
メンバーが準備を終えると25階層のベースに移動する。今回の遠征は長期戦に備えて準備してきたので食料が余っていたため、ダンジョン内ではやらないような食事会を始める。
とはいってもメンバーは警戒心を緩めない。アロイスが言う。
「携帯食でなくて、新鮮な食材を持ってくればよかったな。」「ダンジョンにそんなものを持ち込むもの好きはいませんよ。」
カミルがあきれたように言う。アルマがアルノーに言う。
「おまえ、これからどうするつもりだ。」「グリムを討伐した後のことは考えてもいませんでした。冒険者をやめてしまってもいいですね。」
「そんな勝手、許されると思うのか。」「どういうことですか。私はグリムを討伐して、あなたたちは強くなる。帳尻は合っていますよ。」
「深層に引き入れた責任をとれ。エアハルトの目的は最高の冒険者になることだ。」「アルマ、あなたは私がいない方がいいのでしょ。」
「そうだよ。でも、エアハルトが成長するためにはあんたが必要だ。」「エアハルトは大丈夫ですよ。」
アルノーのパーティーから抜ける意思は強い。エアハルトがアルマとアルノーの話に割り込む。
「アルマ、また、アルノーに絡んでいるの。」「そうだよ。こいつパーティーを抜けるつもりだ。」
「アルノー、これからも一緒にやりましょうよ。」「私は目的を果たしたんだ。分かってくれ。」
「まだ、終わっていませんよ。アルノーの仲間も目的があったんじゃありませんか。」「ああ、イーリスクランより早く最深部に到達することだ。」
「僕たちと目指しましょう。最深部の一番乗りです。」「そうだな。気持ちの整理がつくまで待ってくれ。」
「はい、僕はいつまでも待っていますよ。」
エアハルトに新たな目標を示されてアルノーの心は揺れ動く。少数精鋭のセクメト・クランでダンジョンの最深部に一番乗りする。魅力的な話だ。
翌日、25階層のベースをかたずけると帰路に入る。エアハルトたちは、途中15階層に一泊してダンジョンを出る。
ギルドの地下1階に出てきたセクメト・クランを見つけた冒険者が大声で言う。
「ポンコツのクランが帰って来たぞー」「グリムはどうなった。」「討伐は失敗したのか。」「無事に帰って来たみたいだぞ。」
冒険者たちが遠征の成果について声に出し、ざわつく。アルマがバックの中からグリムの魔石を取り出して、両手で掲げる。
「成功だー」「グリムを倒したぞー」
冒険者たちが騒ぎ出す。あのイーリスクランが失敗したグリム討伐を成功させたのだ。セクメト・クランがイーリスクラン、アウロラクラン、トラの爪クランに並んで有力クランの仲間入りを果たす。
エアハルトはグリムの魔石を提出するとともにアメリーの聴取を受ける。セクメト・クランには魔石の換金の代金の他、グリムにかれられていた懸賞金が入る。
入った金は大金のためアロイスに触らせることなく、カミルが管理することになる。




