第14話 戦いの再開
アロイスは、心を鬼にして指示を出す。このままでは全滅だからだ。
「ディータとカール、アルノーは左に回り込め。俺とデニスは右だ。エゴンとクヌートは魔法攻撃で隙を作ってくれ。」
みんなが動き出すがアルノーがアロイスに言う。
「エルメンヒルトには指示を出さないのですか。」「なっ。」
アロイスは驚く。エルメンヒルトは戦える状態ではない。エアハルトがかばってブレスに巻き込まれたのだ。アロイスの頭に血が上る。
「アルノー、てめー、何言っている。黒水晶が動けるわけないだろ。人の気持ちがわからんのか。エルフやろー」「エアハルトはきっと生きていますよ。」
アルノーは笑顔で返すとグリムに突っ込んで行く。デニスがアロイスの肩を叩く。
「行こうぜ。」
アロイスはグリムに集中する。デニスがグリムの首に雷撃をまとった槍を突き入れる。アロイスがデニスがつけたキズにすかさず剣撃を入れる。キズは広がるが一瞬のことで消えていく。
再生が速すぎる。どうやれば首を落とせるんだ。アロイスとデニスが攻めあぐねるとグリムが爪で切りつけてくる。アロイスとデニスはぎりぎりでかわして、すきを窺う。
左側ではアルノーが首に斬撃を入れ、続いてディータとカールが剣で打ち込む。しかし、キズは骨までも届いていない。エアハルトとエルメンヒルトが抜けたことは大きい。
エルメンヒルトは顔を覆って座り込んでいる。今、死地にいることが関係ないように泣き崩れている。その細い肩に手が置かれる。
「エル、泣いているの?」「え、誰?」
エルメンヒルトが顔を上げるとエアハルトが立っている。
「エアハルト、無事だったの。」「僕、死ぬかと思ったけど何ともないよ。」
「バカー、心配したのよ。」「ごめん、心配かけて。まずはやることをやろう。」
「やること。」「あいつを倒すのさ。」
エルメンヒルトが泣き止んで立ち上がる。エアハルトが言う。
「僕たちは正面から行こう。」「分かったわ。」
エアハルトとエルメンヒルトは走り出し、どんどんスピードを上げていく。2人はそのままのスピードで斬撃を繰り出す。グリムの頭から血が噴き出し2本のキズが鼻先から首まで続いている。
2人はこのままグリムの背中を切り裂きながら尾に向かって走る。2人の姿にアルノー、アロイスたちは活気づく。左右から首に向かって攻撃が始まる。
グリムは本能で今戦っているものたちは危険だと判断する。そして、攻撃目標を離れた所にいるアルマ、カミル、ユリアーネに定める。グリムは全力でジャンプする。
グリムの突然の動きにエアハルトとエルメンヒルトは振り落とされる。グリムはアルマたちの前に降り立つと3人を切り刻もうと爪を振るう。
3人はなすすべもなく切り刻まれて肉塊に変わるはずだった。3人はナイフや短剣で爪をはじく。同時にエゴンとクヌートの魔法攻撃がグリムに命中する。
その隙に3人はグリムから距離を取る。グリムは尾を使って跳ね飛ばそうと体をひねるが振るべき尾が切り落とされていた。
グリムの後ろにはエアハルトとエルメンヒルト、アルノーが立っている。またしてもこの3人に切り落とされたと理解する。まずこの3人を殺さなくてはならない。
グリムはのどに高温の炎をためる。のどが光出しブレスを3人に向かって吐き出す。エルメンヒルトとアルノーは左右に大きく飛んでブレスを避ける。
エアハルトはブレスを避けない。アンチマジックが守ってくれる。ブレスの中を前に進んでグリムの下に出ると剣でのどを切り裂く。
のどから高温の炎が漏れ出し、グリムの体を焼き始める。グリムは高熱でのたうち回る。エアハルトは攻撃をやめない。グリムの右腕を一閃して切り落とす。
さらに左腕を切り落とす。アロイスは、アルノー、エアハルト、エルメンヒルトに指示する。
「もう一度、首を落とせないか。」「やって見ましょう。」「やりましょう。」「やるわ。」
アルノーは炎を物とせずグリムの首に近づき、炎をまとった剣で首に斬撃を打ち込む。刀傷で首の骨が見える。そこへエアハルトが同じく剣を打ち込む。首の骨が断たれる。
エルメンヒルトが雷光をまとった剣で切り落とす。グリムは首を落とされ動きを止める。アロイスは引き続き指示を出す。
「エアハルトたちは首が再生しないように見張れ。ディータ、カールは本体の心臓に止めを刺してくれ。俺とデニスは尾の再生を見張る。」
みんな一斉に動き出す。アロイスとデニスが尾の方に回ると尾はすでに再生している。アロイスとデニスは尾を切り落とす。
エアハルトたちは首を見て目を疑う切ったはずの骨がくっついている。さらに血管や神経がつながっていく。エアハルトは直ちに斬撃を繰り出して切断する。
「どうすれば再生が止まるんだ。」「まさに化け物ですね。」
エアハルト、アルノー、エルメンヒルトが再生を止める方法を考えるが良い考えが浮かばない。アロイスが言うように心臓に止めを刺せば良いのだろうか。エアハルトがアルノーに言う。
「グリムの脳を焼いてはどうですか。」「炎に包まれても生きているんだぞ。」
「きっと脳は無事だったはずです。」「そうか。試してみましょう。」
この時、ディータとカールは剣に炎をまとわせてグリムの胸を切りつけて傷を深くして心臓を目指していた。
グリムを包んでいた炎が消えて、焼けた皮膚が割れてはがれ、中から再生した皮膚が出てくる。




