第13話 かりそめの勝利
アロイスがみんなに忠告する。
「グリムは本気になったぞ。ブレスに注意!」「はい。」
アルマ、カミル、ユリアーネが岩陰に身を隠す。エゴンとクヌートは防御魔法の用意をする。エアハルト、エルメンヒルト、アルノー、アロイス、デニス、ディータ、カールがグリムと対峙する。
エアハルトとエルメンヒルトは、グリムの左右に回り込む。アルノー、デニスが正面から突っ込む。グリムののどが光始める。ブレスを吐こうと準備をしているのだ。
デニスが雷光をまとった槍をのどに投擲する。雷光をまとった槍はのどを突き破り、槍の重さでのどが切り裂かれる。のどのキズから高熱の炎が噴き出す。
アルノーが大声で言う。
「今のグリムには魔法が効きます。攻撃してください。」
それを聞いたエルメンヒルトは剣に炎をまとわせる。そして左からグリムの横腹を切り裂いて行く。エアハルトも右から横腹を切り裂いて行く。
グリムは自らの炎に包まれ焼かれていく。さらには腹を切り裂かれて血だまりを作っている。炎が高温のため近づくことが出来ない。
エゴンとクヌートが防御魔法から攻撃魔法に切り替えて攻撃を加える。2人は炎と風で火災旋風を起こしてグリムを巻き込む。
グリムは全身を焼かれて、咆哮をあげる。
「ぐるるるるるーーーーー」
エアハルトたちは、グリムが驚異的な再生力を持っていてもダメージを与えたと考える。炎が下火になった時、グリムは黒焦げになっている。
ディータとカールが首を落とそうと飛び出す。アルノーが叫ぶ。
「まて、うかつだぞ!」
ディータとカールが剣を振り下ろそうとした時、グリムの黒焦げの体がひび割れて皮がむけるように中から赤銅色の体が出てくる。
グリムが体を振って尾をむちのように振り回す。ディータとカールは尾の攻撃をぎりぎりでかわして、首に剣を突き立てる。グリムは首を振ってディータとカールを振り落とそうとする。
2人は振り回され、振り落とされる。ディータが叫ぶ。
「くそっだめだ!剣で切ってもすぐに再生しやがる。」
アルノーがエアハルト、エルメンヒルト、アロイスに言う。
「私が切り込みますから同じところを切りつけてキズを大きくしてください。3番手はエルメンヒルトがいいでしょう。」「はい。」「分かったわ。」
「出来るのか。あの爪にかかったらひとたまりもないぞ。」「私たちが攻勢に出ているうちに首を落とさないとじり貧になります。」
アロイスは黙り込む。体力があるうちに勝負を決めないと分が悪くなることは目に見えている。
アルノーが高速で走り、正面から右に回り込み飛び上がるとグリムの首を切り裂く。切り込んだのはアルノー1人ではなかった。アルノーのすぐ後ろにエアハルトがついている。
首のキズが再生を始めるより早く、エアハルトが斬撃を打ち込む。剣は首の骨まで達する。そして、エアハルトに続いてエルメンヒルトが剣に雷光をまとわせて光る剣を首に打ち込む。
エルメンヒルトの斬撃が決め手になる。グリムの首が切り離されて頭が落ちる。グリムは頭を切り落とされると本体は動きを止めて地面に伏す。
アルマとカミルが叫ぶ。
「やったぞ!」「俺たちは勝ったぞ!」
ディータとカールは胸をなでおろす。エルメンヒルトがエアハルトに抱き着く。
「私たち、やったわよー」「う、うん。」
エアハルトは憧れのエルに抱き着かれて赤くなる。アルノーは、やっと敵を討てたと仲間の冥福を祈る。みんなが勝利を受け入れ、気が緩む。
その中でアロイスだけグリムに対して警戒を解いていなかった。なぜ、グリムの死体は他の魔物のように地面に吸収されていかない。本当に死んでいるのか。
アロイスはゆっくり気をつけてグリムに近づいて行く。グリムの爪を見る長さ50センチはあるだろうか。まるで剣のようだ。そして、頭を見る。
アロイスは思わず後ずさる。切れているはずの首がつながっているどころか首が光っている。もう、ブレスを吐く寸前だ。
「生きてるぞー、ブレスだー、逃げろー」
アロイスが大声で叫ぶがみんな反応できない。グリムが生きていることに凍り付いたように固まって動けない。
グリムの口の前にはエアハルトとエルメンヒルトが立っていた。グリムが口を開く。口の中は高温の炎で光っている。
エアハルトは力いっぱいエルメンヒルトを突き飛ばす。同時にグリムがブレスを吐く。エアハルトはブレスをまともに受けて、高温の炎の中に消える。
エルメンヒルトは飛ばされながらスローモーションを見るようにエアハルトのちょっと情けない顔をした笑顔が炎に包まれるのを見る。
叫ぶが言葉にならない。ただ、目から涙があふれる。




