第4話 エアハルト化ける
エアハルトはヒュドラのブレスに巻かれて姿が見えなくなる。
「いやーーーっ」
エルメンヒルトが悲鳴に似た叫び声を出す。アルノーは言葉を失い棒立ちになる。
「ウソだ。エアハルトがやられるはずがない。これまでだって・・・・・」
アルマがうめくように言う。
「バカ野郎・・・・・」
アロイスたちバッシュパーティーはなみだ目になっている。グーゲルパーティーも顔から血の気が引いている。
エアハルトは彼らが戦う原動力になっていた。今、それが炎に巻かれて姿を消したのだ。
ヒュドラはブレスを吐き続ける。まるで目標がいまだに燃え尽きていないとでもいうように執拗に攻撃を続ける。
異変にアルノーが気づく、なんでヒュドラは攻撃をやめないのだ。エアハルトは今頃灰になっているはずだ。いや、違うのか。まだ戦いは続いているのか。
その時、炎の中からエアハルトが飛び出してくる。アルノーは目を疑う。
「エアハルト!」
エルメンヒルトが叫ぶ。アルマがホッと息を吐く。バッシュパーティーとグーゲルパーティーに活気が戻る。
エアハルトはブレスを吐いた頭を剣で切り落とす。1つの頭が伸びてエアハルトに打ち付けてくる。エアハルトは瞬時に判断して飛び上がりかわしざまに頭を切り落とす。
これで半分の4本の首を落としたことになる。2つの頭がブレスを吐くがエアハルトは炎を剣で切り裂く。普通なら大やけどをするはずだがエアハルトは無事である。
「あいつ、化けやがった。」
アロイスが嬉しそうに言う。アルノーは考える。エアハルトのあれは何なのだ。炎が効いていないのか。もしかして、防御魔法か。そうなら、エアハルトは魔力を使えるようになったことになる。
どちらにしろ、ヒュドラの炎がエアハルトに効果なくなったことになる。アルマがヒュドラの攻略法を伝える。
「ヒュドラは8つの頭を切り落とすか、胴にある心臓を壊せば倒せるぞ。」
エアハルトが右腕を上げて答える。アルマの声はエアハルトに届いていた。やはり、エアハルトは期待を裏切らない。アルマにとって最も信用できる人なのだ。
エルメンヒルトは、エアハルトが戦いの中でレベルアップしたのではないかと思う。
「エアハルト、信じているわ。がんばって!」
エルの叫びがエアハルトに届く。みんなが信じて応援してくれている。僕は今、1人ではないんだ。
ヒュドラが首を光らせてブレスを吐く用意をする。エルハルトはその首めがけて走り出す。ヒュドラにブレスを吐かせるつもりはない。
左右から頭が突っ込んでくる。エアハルトが避けようとするが間に合わない。左から来る頭はかろうじてかわすが右から来た頭に突き飛ばされて壁にたたきつけられる。
ヒュドラはそこへブレスを吐く。エアハルトは避けることはできない。今度こそまともにブレスを浴びる。
アルノーが、エルメンヒルトが、アルマが、アロイスが固まる。
ヒュドラがブレスを吐き終える。ダンジョンの壁が溶けてガラス状になっている。そこにはエアハルトがいた。外見は焼かれたように見えない。
エアハルトは手足に力を入れて動かす。すると溶けてエアハルトにへばりついているガラス状のものが割れて地面に落ちる。
「生きてる。」「生きているぞー」
アルノーたちは奇跡を見せられているような感じになる。エアハルトが地面に立つ。ヒュドラが4つの頭の口を大きく開けて威嚇する。
しかし、通用しない。ブレスが通用しない以上、もうエアハルトにとってヒュドラは巨大なだけの魔物である。再びヒュドラに向かって突っ込む。
4つの頭が迎え撃つ。1つ目の頭の右目を剣で切り裂く。2つ目の頭を跳躍してかわすと3つ目の頭が口を広げてエアハルトを飲み込もうとする。
エアハルトは口の中に入った瞬間、剣を一閃する。3つ目の頭の下あごが切り落とされる。エアハルトは落下していく。
4つ目の頭が迎え撃つ。エアハルトが着地すると同時に襲い掛かって来る。4つ目の頭はエアハルトに巻き付くと締め上げ始める。
エアハルトは顔色1つ変えず。腰の短剣を抜くと短剣を突き立てて切り裂き始める。ヒュドラは筋肉を切り裂れて締め付ける力が弱くなっている。
エアハルトは抜け出すと、独り言を言う。
「さあ、お前の心臓はどこだ。」
ヒュドラの巨体が後ろに下がる。ヒュドラがエアハルトに恐怖を感じている。
3つの頭がエアハルトに向かって行く。3つの頭の攻撃をかわしながら前に出て太い胴に剣を突き立てる。しかし、剣は心臓に届いていない。
エアハルトは剣を突き立てたまま尾の方向へ走る。胴のキズが開いていく。3つの頭が狂ったようにもがき始める。
エアハルトは切り裂かれた傷口の中に脈動する部分を発見する。そこに心臓があるに違いない。そこを剣で一閃する。多量の血が噴き出す。
ヒュドラの頭は痙攣するように震えると地面に落ちる。アロイスが叫ぶ。
「やったかー」「よし、動きが止まったぞ。」
アルマも両手を握りしめて言う。倒れたヒュドラが地面に吸収されるように体が消えていく。エアハルトが剣を掲げて勝利を示す。
「倒したぞー」
アルノーが思わず叫ぶ。エルメンヒルトは涙を流しながら喜ぶ。




