第2話 エアハルトの苦境
エアハルトたちは15階層に到達している。ヘルウルフが炎を吐いて襲って来るがエアハルトは炎をかわして、首をはねる。
ヘルウルフは11階層から現れ、最初はエアハルトを苦しめていた。ヘルウルフの吐く炎は15メートルほどまで届き、近接戦しかできないエアハルトにとって天敵のような魔物だった。
エアハルトは炎をかわすために走る速度を上げ、ダンジョンの壁まで足場にして戦うようになっていた。地面だけでなく、壁を使うことで3次元的な動きが出来るようになった。
おかげで、ヘルウルフの炎に対応できるようになる。レベル5のエルメンヒルトがヘルウルフを余裕で片づけながらエアハルトに言う。
「ヘルウルフに余裕で対応できるようになったわね。」「いや、まだまだ僕には速さが必要だよ。」
アルマがエルメンヒルトに文句を言う。
「エルメンヒルトさん、戦闘中ですよ。エアハルトの気を散らさないでくれ。」「私のエアハルトは大丈夫よ。」
「幼馴染なだけだろ。」「俺は何回もキスしているんだぞ。」
「何度も聞いたわ。ポーションを飲ませるためでしょ。」「それでもキスに違いないよ。」
「分かったわ。本当のキスをしたら報告してね。」「本当にするぞー」
いつものようにエルメンヒルトとアルマの言い合いが始まる。エアハルトは戦いに集中していて聞いていない。アルノーはまた始まったと思うが口には出さない。
初めのうちは注意していたが無駄な努力だと身に染みているのだ。バッシュパーティーはレベル5、グーゲルパーティーはレベル4が主力になっている。
ヘルウルフとポイズンスネークを中心とした魔物は余裕で討伐されていく。エアハルトたちは魔物を全滅させると休憩にする。
アロイスがエアハルトに言う。
「ヘルウルフの対応は十分だな。」「はい、1人で倒せるようになりました。」
アルノーがエアハルトに忠告する。
「15階層からサンダーラビットが出現する。」「サンダーラビット?」
「ソードラビットの上位種だ。雷撃をするから気を付けてくれ。」「僕に対処できるでしょうか。」
「雷撃は速いから避けることが難しいぞ。」「エアハルトには私がついているから少しづつ慣れていきましょ。」
エルメンヒルトがエアハルトのサポートに付くつもりのようだ。
休憩が終わって移動を始めるとサンダーラビットが出てくる。アロイスたちは剣に魔力を乗せて、サンダーラビットの雷撃を防いで倒していく。
魔力の無いエアハルトは雷撃をかわさなければならない。エアハルトはサンダーラビットを発してからではかわせないと考える。
エアハルトはサンダーラビットの角に電気が集まるのを確認すると斜め前に飛び出して雷撃をかわして、サンダーラビットに迫り剣で首をはねる。
うまくいったぞー、これなら雷撃も何とかなる。エアハルトは自信を持つ。すぐに2匹目のサンダーラビットと対峙する。
エアハルトはさっきと同じように斜め前に飛び出す。すると体にショックを受ける。全身がしびれて動かない、意識が途切れる。
目が覚めると目の前にエルメンヒルトの顔がある。エルメンヒルトが嬉しそうに言う。
「気がついたわ。エアハルト、私が判る。」「エル、僕はどうしたんだ。」
「サンダーラビットの雷撃にやられたのよ。」「僕はかわしたはずだ。」
「サンダーラビットは広範囲に雷撃を放ったのよ。おかげで雷撃が弱くて黒焦げにならずに済んだのよ。」「そうか。やられたのか。」
エアハルトは意識がはっきりとして来て、自分がエルに膝枕されていることに気づく。恥ずかしくなって起き上がろうとするとエルが言う。
「まだ、じっとしていなさい。ポーションは私が口移しで飲ませたから安心して。」
エアハルトはなぜかアルマを見る。アルマは涙を流して悔しそうにしている。そして、考えをめぐらす。さっき、口移しと言ったよなーー口移し・・・・
えっ、キスじゃないの。僕とエルがキス・・・頭に血が上って来る。
エルメンヒルトはエアハルトの顔が赤くなっていることに気づく。
「あら、熱があるのかしら。」
エルがエアハルトの額に自分の額をつけて熱を測る。エアハルトはエルの顔が近くなって限界を超えて頭の回路がショートする。
「あ、また気を失ってしまったわ。」
エルメンヒルトがうろたえる。アルマが顔を赤くして怒るがじっとこらえる。アロイスがあきれて言う。
「こりゃダメだな。」
アルノーもため息をつく。少ししてエアハルトは気がつくが、アルノーは今日はここまでにして帰ることにする。
エアハルトには、雷撃対策という宿題が出来る。




