第12話 グリムの切り札
剣士と戦士たちの攻撃にグリムは諦めたように動かなくなる。しかし、グリムの目は輝きを失っていない。体色が瑠璃色から赤銅色に変化する。
すると全身の傷口がふさがっていく。驚異的な再生力を見せる。アルフレートは驚きながらグリムから距離を取るように指示する。さらにクルトに言う。
「行くぞ。急いで致命傷を与えるぞ。悪い予感がする。」「ああ、まだ何か隠していそうだ。」
アルフレートとクルトがグリムに迫る。2人はグリムの下に潜り込み。腹にキズをつける。2人は違和感を感じる。うろこの強靭な硬さが失われていた。
代わりに驚異的な再生力でキズがふさがっていく。アルフレートとクルトは諦めず腹を切り裂いてく。
グリムはアルフレートとクルトを無視する。アルフレートは、こいつ無敵にでもなったつもりか、なぜ私たちを無視すると疑問に思う。
グリムの喉が光始め魔力が高まっていく。まずい、グリムはブレスを吐くつもりだ。アルフレートは叫ぶ。
「ブレスだ!物陰に隠れろ!」
グリムは炎のブレスを吐き出す。剣士と戦士たちは地面に伏せるが高温の炎は地面を溶かし始める。ブレスは広範囲に吐き出され、剣士と戦士たちは焼き殺されていく。
生き残ったのはアルフレートとクルトだけになる。クルトがアルフレートに言う。
「おい、逃げるぞ。」「どうやって逃げるのです。」
「おまえの俊足ならブレスより早いだろ。」「クルトはどうするのです。」
「俺は盾で防御するからかまうな。」「死ぬつもりですか。」
「俺の防御は鉄壁だろ。」「私はグリムの首を落とします。」
クルトは、首を横に振る。いくらアルフレートでも一撃で首を落とすことは無理だった。
「なにしているの。早くグリムから離れて。」
突然、アライダの声が聞こえる。グリムが再び喉を光らせ始める。アルフレートとクルトはアライダの声がした方向へ走る。グリムが2人に向けてブレスを吐き出す。
炎のブレスはアルフレートとクルトに届かず、途中で遮られる。アライダが防御結界を張ったのだ。アライダはさらに防御結界をグリムの周りに張って動きを封じる。
「今のうちに逃げるわよ。」「どうして、ここにいるんだ。」
「魔法で26階層の状況を把握していたのよ。」「助かったよ。」
「まだ助かっていないわ。防御結界が長く持つとは思えないわ。」「そうだな、ブレスまで使えるとは思っていなかった。」
3人は25階層に向かって走り続ける。グリムは防御結界を壊して3人を追い始める。グリムは3人との距離を一気に詰めていく。しかし、強力な防御結界に阻まれる。
魔法使いたちが共同で1枚の防御結界を作りだしていた。魔法使いたちも3人と一緒に逃げる。いくら強力な結界でもいつグリムに破壊されるかわからない。
魔法使いたちの予想は当たっていた。強力なはずの結界が壊され、グリムがありえないようなスピードで迫り魔法使いを2人鋭い爪で切り裂く。
アルフレートは、もう戦うしかないと考え足を止めようとする。その時、天井が爆発して岩がグリムの上に落ちてくる。煙で視界が無くなった通路をアルフレートたちは必死に走る。
「グルルルルーーーーー」
グリムの唸る声が聞こえてくるが追撃は終わった。ポーターたちが万一に備えて天井の岩が落ちるように爆薬を仕掛けていた。その仕掛けが役だったのだ。
25階層に上がり、アルフレートたちは崩れ落ちる。34人の剣士と戦士が全滅した。グリムは切り札を隠していた。
助けに入った魔法使いが2人爪で切り裂かれて死んだ。グリムは強力な防御魔法すら破壊してのけた。
アルフレートたちは死力を尽くしたがグリムに届かなかった。イーリスクランの討伐隊は完全に敗北したのだ。
今は、斥候役のポーターが25階層への入り口で見張っている。グリムが25階層へ上がる気配はない。
グリムが25階層に上がって、ベースを襲えばイーリスクランの討伐隊は壊滅するだろう。そして、地上へ戻る可能性は無くなるに違いない。
クルトがアルフレートに言う。
「グリムはなぜ25階層まで追ってこないんだ。」「奴に聞いてみるか。」
「それはいい案だ。あのまま追撃が続けられたら死んでいた命だ。」「私たちの命は重いぞ。何しろ多くの仲間の死の上にあるのだから。」
「分かっている。詮索はダンジョンを出てからだ。今は生きて戻ろう。」「ああ、私とクルトが前衛をやりますよ。」
「グリムの相手をした後だ。楽勝だよ。」「ずいぶん自信があるようだね。」
「奴と戦ってから体が軽い。」「私もそうだ。」
2人はレベルアップしたように感じる。そうでなければ、あの化け物から逃げることはできなかったはずだ。
アライダが心配してアルフレートとクルトに言う。
「地上まで前衛をしてもらわなければならないわ。2人で地上まで体力が持つの?」「大丈夫だ。不思議と疲れを感じていない。」
「ベースを片付けてすぐに出発しよう。」
アルフレートたちは今は逃げるが必ず仲間の敵を討つと誓う。




