第10話 26階層の探索
イーリスクランの討伐隊は、クルトが進言したように安全策をとって魔物と戦う。魔物に魔法使いが遠距離攻撃をしてダメージを与えた後、剣士と戦士が倒す常套手段に徹している。
ケガをする者は出るが大ケガを追う者はいない。25階層まで消耗も少なく到着する。
討伐隊は25階層の魔物を一掃しようとするが、この階層からミノタウロスが出現する。俊敏なうえ皮膚が硬く剣が通りづらいばかりかある程度の魔法をはじいてしまう。
あるパーティーの前にミノタウロスが現れる。魔法使いが魔法攻撃を加える。ミノタウロスは魔法を全てよけて、右手に持つ大剣で前衛の剣士に迫る。
打ち込まれる大剣を前に出た戦士が盾で受け止める。戦士は盾に魔力を乗せて大剣の斬撃を防ぐ。その隙をついて剣士がミノタウロスの腹を一閃する。
しかし、皮1枚を切っただけでダメージは少ない。
「なんて硬いんだ。」「スイッチ」
戦士が斧をミノタウロスの右太ももに打ち込む。
「うおおおおぉぉぉぉーーーーー」
ミノタウロスが吠える。
「スイッチ」
剣士が後ろに回り込んで首に突きを繰り出す。剣は突き刺さり喉に突き抜ける。
「スイッチ」
戦士が大剣を持つ右腕に斧を撃ち込む。ミノタウロスは大剣を落とす。魔法使いが叫ぶ。
「さけて!」
巨大な火炎がミノタウロスを包む。ミノタウロスはもがきながら暴れる。炎に包まれているため呼吸ができない。ついには倒れて炎に焼かれていく。剣士がぼやく。
「ミノタウロスは厄介だな。やっと1匹だぞ。」
魔物討伐の様子を見ていたアルフレートがクルトとアライダに言う。
「ミノタウロスに手間取りすぎているな。」「仕方がない。25階層では最強だからな。」
「ミノタウロスは私たち3人が倒そう。」「いいの。思いっきりやるわよ。」
「ああ、消耗は避けたい。」「分かったわ。」
アルフレートは俊足を生かして次々とミノタウロスを切り裂いて行く。クルトは盾で大剣を受けるとともに大剣を砕いてしまう。そして、斧でミノタウロスを両断にする。
アライダは炎を自在に操って視界にいるミノタウロスを炎の渦に巻き込んでいく。イーリストリニティがミノタウロスを一掃したことで魔物討伐がすすむ。
しばらくして魔物は一掃される。これで魔物がダンジョンから生まれるまで、しばらくかかるはずだ。
ポーターたちが中心となってベースとなるテントを張り始める。みんな忙しく作業を進める。
作業が終わるとアルフレートは、みんなに話しかける。
「私たちはやっとここまで来た。途中、私のミスで仲間を失ってしまった。済まなかった。」「・・・・・・」
沈黙に包まれる。クルトとアライダがアルフレートの肩を叩く。アルフレートは顔を上げると指示を出す。
「今から食事と休憩をとってくれ。3時間後、26階層の探索に出る。時間は2時間を予定している。」「見つからなかったらどうするのですか。」
「私はすぐに見つかるとは思っていない。私たちはすでに34階層まで到達しているが、これまで遭遇したことがない。」「本当にいるのか?」
「26階層でアウロラクランの遠征隊が壊滅したことは事実だ。26階層の探索は回数を分けて隅々まで行う。」「「「はい」」」
討伐隊のメンバーは食事をとりながら歓談して休憩する。この時、メンバーには余裕があった。
3時間経って、アルフレートとクルトを含む剣士、戦士36人は26階層に出発する。探索の予定時間は2時間なので26階層の入り口付近を重点的に探索する。
結局、グリムを見つけることが出来ず戻って来る。探索隊のメンバーは皆、異変を感じていた。2時間の探索の間、全く魔物に出会わなかったのだ。
クルトがアルフレートに言う。
「おかしいだろ。魔物がいないぞ。異変にみんな気づいているぞ。」「グリムのせいかもしれないな。」
「まさか、グリムが食ってしまったのか。」「魔物が逃げたかもしれない。」
「いやな感じがする。まだ続けるのか。」「予定に変更はない。」
「6時間の睡眠をとったら2回目の探索だな。」「ああ、そうだ。」
アルフレートは横になる。しかし、眠れない。アルフレートは探索の間、何者かに見られているような視線をずっと感じていた。
探索隊は、睡眠をとった後、食事をとる。アルフレートはクルト、アライダと探索範囲の検討をする。
「探索時間は4時間でいいか。」「集中力がいる。4時間が限界だろ。」
アルフレートの確認にクルトが答える。探索隊は2回目の探索に出かける。
結果は、グリムを発見できないどころか魔物にも会わない。探索は4回続けられたがすべて空振りだった。アルフレートは、この間ずっと視線を感じ続けている。
そして5回目の探索が行われる。ここまで来るとメンバーたちの気が緩んでくる。
「これ何回続けるんだ。」「知るか。グリムなんていないかのしれんぞ。」
そして、メンバーの1人が天井を見上げて何かが動いていることに気づく。
「おい!天井に何かいるぞ!」「えっ、何も見えないぞ。」
「見たんだ。何かいたんだ。」「どんな奴だ。色は。」
「形は分からない。天井と同じ色だった。」「グリムは瑠璃色だぞ。」
みんなが天井を見る。さらに1人が天井に何かいることに気づく。
「やっぱり。天井だ!」「どこだ!」
「あそこだ。あれ?見失った。」「何している。」
アルフレートは、目を凝らして探す。そして見つける。大きなトカゲのような化け物が体表を天井の色に同化させて張り付いている。
「いたぞー、グリムだ!カモフラージュしている。戦闘準備!」
全員が得物を手にして陣形を作る。グリムは体表の色を瑠璃色に変化させて天井から降りてくる。アルフレートは、視線の主がグリムだったことに気づく。
グリムは最初から探索隊について動き、観察していた。




