第6話 アルフレートの焦り
イーリスクランのグリム討伐隊は10階層で訓練を積んでいた。魔力を使わなくても戦える剣士たちがパーティーを越えて連携をとる訓練をしている。
イーリストリニティがキャンプベースで会議をしていた。閃光のアルフレートが考えを述べる。
「26階層には、剣士と弓使いだけで進むつもりだ。魔法使いとポーターは25階層で待機してもらう。」
「魔法使いなしで26階層に行くのですか。魔物はグリムだけではないわ。」
業火のアライダは不満があることを隠しもせずに言う。鉄壁のクルトが間に入る。
「アライダ、魔法使いはグリムに真っ先に狙われるぞ。被害は最小限にしたいのではないか。」「グリムに防御魔法が効くかもしれないわ。」
「不確かな予想で動くことはできない。それに魔法使いには25階層のベースキャンプを守ってもらわなければならない。」「剣士たちだけど10階層で訓練していて役に立つのかしら。」
「11階層からは魔力を使う魔物が出るから仕方がない。それに魔力を使わないで10階層で戦うことはかなり難しいぞ。」「でも、グリムに通用しなければ意味がないわ。」
「アルフレート、アライダの言い分も一理あるぞ。」「それは分かっている。だが、クランの剣士は10階層あたりが限界だ。魔力を使わないことは、力を半分使わないようなものだからな。」
クルトは話を取り持とうとするが、アルフレートは耳を貸さない。イーリストリニティの中でアルフレートはリーダー的存在だが、今回はアライダからの反発が大きい。
アライダがアルフレートの心を見透かすように言う。
「あなた、焦っていない。もしかしてエアハルトのことを気にしているのではないの。」「何を言っている。エアハルトは魔力の無い、先の無い冒険者だぞ。」
「エアハルトにはアルノーが付いたわ。魔力を持たない冒険者はグリムにとって天敵になるのではないの。」「その通りだが、エアハルトは26階層にたどり着けない。」
「1人ならばね。」「・・・・・」
「エアハルトには3つのパーティーが一緒に行動しているわ。」「・・・・・」
「彼らはモンスターラッシュを起こして訓練しているそうね。」「そこまで知っているのか。エアハルトたちはレベルを上げている。」
「たった、3つのパーティーに何ができるの。気にすることわないわ。」「そうはいかない。エアハルトはレベル4だ。アルノーはレベル6になってしまった。」
「魔力がないのにレベル4、剣技をどこまで昇華したら実現するの。」「奴は、レベル6のアルノーに剣技で匹敵するらしい。」
「それって、あなたと剣技で並ぶかもしれないのね。」「そうだ、イーリスクランにはプライドがある。グリム討伐は我々がなさなければならないのだ。」
「私たちがポンコツと蔑まれていた冒険者に追われているの・・・」「アライダ、済まないが指示に従ってくれ。チャンスは1回あるだけだ。2度目はエアハルトに後れを取る。」
ダンジョンの町ゴルドベルクに君臨してきたイーリスクランが一介の冒険者に追いつめられる。そのようなことあってはならない。
グリム討伐はイーリスクランが町で一番であることを証明するために必要だ。アライダは危機的状況に魔法使いのプライドは不要だと判断する。
「アルフレート、グリムは確実に討伐できるのね。」「アライダとクルトが力を貸してくれれば、やって見せる。」
「分かったわ。魔法使いは25階層に残ります。」「ありがとう。グリムは仕留めてみせる。」
イーリストリニティの話がまとまる。だが、剣士たちの練度はまだ足りていない。
アライダは、エアハルトたちの真似をすればよいと考える。
「モンスターラッシュを起こして剣士にぶつけたらどうかしら。」「死人が出るぞ。それにパニックになる。」
「エアハルトたちはモンスターラッシュを訓練に使っているのでしょ。イーリスクランにできないわけないわ。」「たしかに・・・そうだな。」
アライダにそこまで言われるとモンスターラッシュの訓練をしなくてはならない。しかし、剣士の中には10階層の魔物にぎりぎりで戦っている者も多い。
モンスターラッシュなど起こしたら死傷者や脱落者を量産することになるだろう。アルフレートは戸惑う。アライダが言う。
「魔法使いがバックアップに着くから大丈夫。死人は絶対に出させないから。」「よろしく頼む。」
アルフレートは魔法使いのバックアップがあるなら、何とかなると考える。アルフレートは剣士等を集めて言う・
「これから、君たちはモンスターラッシュを相手にしてもらう。」「おい、死人が出るぞ。」
「みなさん、今ここにいるのは何のためですか?」「グリムだ。あれを倒さないと。」「俺たちが一番乗りだ。」
「そうだ。グリムを討伐して、我々が一番だと証明してくれ。」「やるぞ、みんなでやれば、できるはずだ。」
イーリスクランのメンバーたちは、無謀な訓練をやるきになる。




