第4話 黒水晶、ソロで挑む
翌朝、エアハルトとエルメンヒルトは剣の訓練をする。エアハルトはこれまで剣も魔法もかなわなかったエルが必死に剣を振るう所を見て不思議な感じがする。
エルメンヒルトは、エアハルトの剣の腕に驚く。イオンがレベル5だったがエアハルトの剣の腕はその上を行っている。イオンはエアハルトが魔法を使えないためバカにしていた。
だが、それは大きな誤りだと確信する。魔力がなくても剣の腕があれば一流の冒険者になれるのだ。
エアハルトは剣技だけを鍛えてレベル3に至っている。自分は魔力のおかげでレベル4になった。魔力がない分、エアハルトは剣で強くなったのだ。
エルメンヒルトは、朝食を終えるとば冒険者ギルドに向かう。受付で申告書を提出する。エリスがエルメンヒルトに言う。
「ソロでダンジョンに潜られるのですか。」「はいそうです。」
「レベル4のエルメンヒルトさんなら4階層でも大丈夫たと思いますが。」「私、魔力を使わずに探索をしますので2階層にします。」
「魔力を使わないのですか。剣技だけだと勝手が違いますので注意してください。」「分かりました。慎重に行動します。」
これまでリーダーのイオンが指示を出して、仲間がついていたが、これからは、自分で判断して行動しなくてはならない。
地下1階に降りてダンジョンに入る。エルメンヒルトは、飛び掛かってくるスライム切り裂きながら進むと棍棒を持ったゴブリンが現れる。
エルメンヒルトは縮地を使って一気に距離を詰めると袈裟切りにする。2階層に降りるまでにゴブリンを5匹討伐する。
2階層に降りると剣や斧を持ったゴブリン4匹が出てくる。ゴブリンは弱いので大した魔物でないはずだが、1人で4匹を相手すると勝手が違ってくる。
エルメンヒルトは後ろに回り込まれないように立ち回る。壁を背にして戦うことにする。1匹がうかつにも間合いに入って来る。剣で突きを繰り出して心臓を貫く。
剣を抜くと2匹目の斧の斬撃を剣でそらして返す刀で切り裂く。ゴブリンが2匹になると攻撃に転じる。3匹目を上段から剣を打ち込み切り裂くと4匹目を横一閃する。
「エアハルトはこんなことをしてきたの。よく死なずに済んだわね。」
エルメンヒルトは独り言を言うと前に進んで行く。途中、コボルトを3匹討伐して、3階層へ下る坂道に到達する。そこで休憩して帰ることにする。
2階層の魔物の数が少ないことに疑問を感じて速めに帰ることにしたのだ。休憩していると振動を感じる。
エルメンヒルトは、地面に耳をつけて音を探ると地響きが近づいて来る。モンスターラッシュが向かってきていると判断する。3階層へ逃げようかと考える。
しかし、ダンジョンがそんなことで助かるほど甘くないことはこれまでの経験で分かっている。エルメンヒルトは、モンスターラッシュを突っ切ることに決める。
いざとなれば魔力で切り抜ければいい。いや、エアハルトは魔力なしで切り抜けてきたはずだ。エルメンヒルトはもう一振りの剣を抜くとモンスターラッシュに向かって走り始める。
切り抜けて出口へ向かうだけだ。目の前にゴブリンとコボルトの群れが迫る。先頭のコボルトを切り裂くと群れに突っ込む。
エルメンヒルトは、右の剣でコボルトの首をはね、左の剣でゴブリンの腹を裂く。しかし、数が多すぎる。攻撃を全て避けることはできない。
コボルトやゴブリンを倒していくが、魔物の剣や斧が体を傷つけていく。エルメンヒルトは何とか魔物の群れを突破する。両足に深い傷を負って痛むが、痛みを無視して足を動かす。
少しでも早く走って魔物の群れから離れなければならない。これまで、ここまで追い込まれたことはなかった。ソロで活動することの過酷さが身に染みる。
エルメンヒルトは、魔物の群れを引き離して1階層に上がる。体中にキズが出来、防具も傷だらけである。回復ポーションを飲んでケガを治す。
まだ、ダンジョンはエルメンヒルトを逃していなかった。前方から棍棒を持ったゴブリンとスライムの群れがやって来る。
エルメンヒルトは覚悟を決めて突進する。群れを突破してダンジョンを出た時には、体力の限界が来ていた。回復ポーションを飲んで地下1階の通路に座り込む。
少し眠ると立ち上がり、受付へ行く。エルメンヒルトの姿を見てエリスが驚く。頭から足まで血まみれになっていたのだ。
「どうしたのですか。2階層に行ったんですよね。」「2階層でモンスターラッシュにあったわ。そして、1階層でも・・・」
「よく、無事でしたね。このままではいけませんからシャワーを浴びて行ってください。」「ありがとう。助かるわ。」
エリスはエルメンヒルトを職員証のシャワー室に案内する。エルメンヒルトは血を洗い流すと受付に戻り、魔石の換金をする。エリスは言う。
「ソロはやめた方がいいですよ。それに魔力を使わないなんて自殺行為です。」「エアハルトは乗り越えたんでしょ。」
「確かにそうですが、何度も死にかけていますよ。」「覚悟はできています。」
エリスはそれ以上言わなかった。エアハルトに対抗するなら死線を乗り越えなければならない。
エルメンヒルトはアングラートの食卓に戻ると自分の部屋へ行き、ベットに倒れ込む。初日からこのざまでは先が思いやられる。だが、音を上げることはできない。




