第11話 6階層の戦いの始まり
エアハルトたちはダンジョンに入り6階層を目指す。アルノーがみんなに言う。
「みなさん、魔物相手に時間をかけ過ぎていますよ。6階層で1泊するつもりですか。」「言ってろ。これでも調子よく魔物を討伐しているんだぞ。」
アロイスが毒気づく。アルノーは気にせずに言う。
「調子よくではありません。素早くです。魔物に出会ってもスピードを緩めずに瞬殺してください。」
アルノー以外は全員そんなことできるわけがないと沈黙する。コボルトが3匹出てくる。エアハルト、アロイス、ディータがそのままの勢いで突っ込みすれ違いざま一閃する。
アルノーは拍手をしながら言う。
「そうです。できるではありませんか。」「コボルトが弱いだけですよ。」
エアハルトが言う。彼にとって、ゴブリンやコボルトはとるに足らない小物になっている。最近、2階層の罠の部屋で30匹のコボルトを相手にして死にかけたことがウソのようだ。
「みんな、強くなっているんですよ。どんどん行きますよ。」
アルノーはみんなに声をかけて6階層に急がせる。エアハルトたちは駆け足で下るように下の階層へ向かって行く。
6階層に着くと休憩できそうな所へ行く。アルノーは疲れたような感じは全くない様子で言う。
「みなさんはここで休んでいてください。私は準備をしてきます。」「ここでもモンスターラッシュをやるのか。」
「ええ、皆さんには死闘を経験してもらいます。」
アルノーは1人奥へ進んで行く。ディータがグーゲルパーティーを代表して言う。
「本当にモンスターラッシュを起こして、戦うのか。」「アルノーが冗談を言うと思うか。」
「もーいやだ。俺は帰るぞーーー」「クヌート落ち着け。」
「あああーーこれは夢だ。俺は宿の部屋で寝ているんだ。」「クヌート戻ってこい。」
ディータとカールが落ち着かせようとするがクヌートは現実逃避している。アロイスがこぶしでクヌートを殴る。クヌートは吹っ飛んでいく。
クヌートは地面を転がるとおとなしくなる。アロイスがクヌートに言う。
「これは現実だ。逃げられないぞ。」「あああーーー」
「戦え。冒険者だろ。」「俺は魔法使いだ。なんで剣士のまねごとをしているんだ。くっそー、アルノーのバカやろー」
クヌートは息が荒いが正気を取り戻した。エゴンがクヌートの肩を叩く。アロイスはみんなに指示を出す。
「エアハルトはアルノーと先頭へ出てくれ。俺とデニスはエアハルトたちの右後方、ディータとカールは左後方を固める。後方はアルマ、カミル、エゴン、クヌートで固める。ユリアーネはヒールに専念してくれ。」「「「おう」」」
みんな配置に着くと装備を確認する。アルノーが戻ってくれば戦闘開始になる。
アルノーが戻って来る。彼は魔物を誘引するニオイ袋をアロイスとディータに投げつける。アロイスは機嫌が悪くなる。ディータとカールは袋の正体に気づいて、前方に投げ捨てる。
アロイスはアルノーに指示する。
「エアハルトと組んで先頭で戦ってもらう。」「了解。」
すぐに地響きと共に魔物が押し寄せる。中にはシルバーグリズリーが混じっている。レベル3の冒険者だとシルバーグリズリーを1人では相手にせずパーティーで相手にするのが普通である。
今回は複数のシルバーグリズリーを1人で相手にする可能性が高い。エアハルトはシルバーグリズリーと戦う覚悟はとうに出来ている。考えているのはどうやれば効率的に立ち回れるかだ。
隣にいるアルノーがホブゴブリン5匹を瞬殺して、残ったシルバーグリズリーをエアハルトの方へ受け流す。彼はわざとエアハルトにシルバーグリズリーをけしかけたのだ。
エアハルトはホブゴブリン3匹とシルバーグリズリー1匹と対峙していた。そこへ後ろからシルバーグリズリーが襲って来る。エアハルトは前進して鋭い爪をかわす。
同時にホブゴブリン2匹を剣で切り裂く。前後からシルバーグリズリーが迫る。エアハルトはスライディングをして前方のシルバーグリズリーの股の下を潜り抜ける。
残りのホブゴブリンを首をはねて仕留めると低い姿勢でシルバーグリズリーに迫り下段から剣を切り上げる。エアハルトは手ごたえを感じる。
シルバーグリズリーは切り口から血を吹き出してゆっくり倒れる。もう1匹が鋭い爪を振るう。エアハルトはぎりぎりでかわし、爪が防具の胸当てに接触して火花を散らす。
大振りの前足の一撃は隙が出来る。エアハルトは逃さず、剣で横腹を切り裂くと切り口から血と共に内臓がこぼれる。シルバーグリズリーは四つん這いになつて突っ込んでくる。
エアハルトはすれ違いざまに首をはねる。これで終わったわけではない目の前には見渡す限り魔物であふれている。エアハルトはさらに前進して次の魔物に切りかかる。
アロイスとデニスはエアハルトたちの右後方でコボルトの群れを相手にしている。アロイスがエアハルトに声をかける。
「前に出過ぎるな。陣形が崩れるぞ。」「分かりました。」
エアハルトは返事をすると少し後退する。アルノーは手近な魔物を瞬殺するが左後方のディータとカールに適度に魔物を回している。そして、強力なシルバーグリズリーはエアハルトにぶつけている。
ディータとカールはホブゴブリン6匹を相手にしている。2人は連携して1匹づつ片づけていく。
戦いが始まってアロイスの指示した陣形が働いて後方に魔物が行くことはなかった。しかし、戦いは始まったばかりである。




