第6話 アルノー仕掛ける
エアハルトたちは、受付で申告書を提出する。アメリーがエアハルトに言う。
「パティー名を決めたのね。アンカーパーティーか、エアハルト君がリーダーなのね。」「はい。頑張ります。」
続けてアロイスが申告書を出す。
「アロイスさん、エアハルト君と同行するの。」「ああ、俺たちは鍛え治すことにするよ。」
「エアハルト君を頼みます。」「アメリーの頼みは断れないな。」
アロイスの機嫌がよくなる。アンカーパーティーとバッシュパーティーは5階層を目指して進んで行く。アロイスたちはエアハルトの剣技に驚く。
これまでのことからエアハルトが剣の腕が立つと想像していた。だが、想像以上に立ち回りがうまく、剣の扱いもレベル2とは思えないものだった。
アロイスがエアハルトに言う。
「エアハルト、お前本当にレベル2なのか。レベル3でもお前ほど動けない者は多いぞ。」「僕はレベル2になったばかりですよ。」
アルノーが説明を加える。
「エアハルトは魔力が使えないから、その分、剣士としての数値が高くならないとレベルが上がらないと思いますよ。」「だからグリムと戦うのに有利なのか。」
「代わりに深層では苦労することになります。」「確かに炎などを操る魔物がいるからな。」
「やはり、僕は魔力が欲しいなー」「まだスキルが発現していないでしょ。スキル次第では戦えますよ。」
「スキルかー」
エアハルトは魔力がない分、スキルに恵まれることを願う。
5階層に降りると通路が広く。魔物の数が多ければ囲まれる可能性が高くなる。5階層に入ってすぐワーウルフの群れに出会う。攻撃に魔法などを使わないので魔法使いのエゴンの援護はない。
戦うのは剣士のエアハルトとアロイス、槍使いのデニスに限られる。エアハルトが言う。
「突っ込みますから、あとはお願いします。」「待て、囲まれたら終わりだぞ。」
アロイスの忠告を無視してエアハルトはワーウルフの群れに突っ込む。ワーウルフの群れが混乱する。エアハルトは左手で腰の後ろの短剣を抜いて、右手の剣でワーウルフを切り裂く。
そして、襲ってきたワーウルフを短剣でさばく。エアハルトに向かっているワーウルフだけでない。エアハルトを無視して襲って来るワーウルフもいる。
アロイスとデニスが襲ってきたワーウルフを仕留める。アロイスとデニスはもっと深い所で戦っていたのでワーウルフの相手は余裕がある。
魔法使いのエゴン、ポーターのアルマとカミルは見ているだけになる。アルノーは戦いの様子を見て、ワーウルフの群れでは役不足だと判断する。
明日は6階層でシルバーグリズリーと戦わせるとして今日はどうする。モンスターラッシュでも起きればちょうどいいが・・・
エアハルトたちは間もなくワーウルフを全滅させる。アルノーがみんなに言う。
「ここで休憩をとりましょう。私は少し離れますが気にしないでください。」
アルマがアロイスに言う。
「どう思う。アルノーは何をしに行ったんだ。」「分からんが嫌な予感がする。エルフの考えることは分からないからな。」
「エアハルト、お前は耳がいいから魔物の動きに気を付けてくれ。」「分かった。今の所、動きはないよ。」
アロイスは少し考え込んでからみんなに言う。
「今のうちに装備を確認してくれ。エゴンは必要と思ったら魔法を使ってくれ。」「アロイス、魔法は使わないのじゃなかったのか。」
「いやな予感がする。いざとなったらエゴンの魔法は頼りになるからな。」「俺の判断で使うぞ。」「「頼む。」
アルノーは帰って来ない。エアハルトが地面に耳をつける。
「エアハルト、何している。」「静かに、地響きみたいな音が遠くからするみたいだ。」
「近づいてきているか。」「待って・・・だんだん大きくなっている。近づいて来るよ。」
アロイスが目を見開く。ポータのカミルがアロイスに言う。
「逃げるなら早い方がいいぞ。」「ああ、だが・・・アルノーが・・・」
「迎え撃とう。アルノーが追われているかもしれない。」「聞いたか、モンスターラッシュかもしれない。出し惜しみはなしだ。」
エアハルト、アロイスが剣をデニスが槍を構える。エゴンは詠唱を始める。最初に強力な魔法を放つつもりだ。アルマとカミルはボーガンを構える。
地響きが聞こえてくる。間違いない5階層の魔物があふれてきている。モンスターラッシュだ。
先頭を青い髪のエルフが走っている。アルノーは魔物に追われている。アロイスが叫ぶ。
「アルノーが追われている。間違えてあてるなよ。」「「「おう」」」
エゴンはアルノーが邪魔で魔法を撃てない。アルノーはエアハルトたちに近づいても減速しない。そして、エアハルトたちとすれ違う。
この時、アルノーはニオイ袋をエアハルトとアルマに投げつける。すぐにアルマは気がつく。
「はめられた!魔物を惹きつけるニオイ袋だ。これはアルノーの仕業だ。」
同時にエゴンがサンダーストームを撃ち込む。魔物たちが雷撃に焼かれて燃える。焼かれた魔物たちが障壁になる。炎が消えれば魔物が大波となって襲って来るだろう。
アルマがエアハルトに言う。
「ニオイ袋を投げ捨てろ。」「分かった。」
エアハルトとアルマがニオイ袋を炎の向こう側へ投げる。立ち止まったアルノーが困ったように言う。
「魔法を使ってはだめじゃないですか。」「アルノー、お前、何をやったかわかっているのか。」
「ええ、モンスターラッシュをあなたたちにぶつけたのですよ。」「俺たちを殺すつもりか。」
「このくらい乗り越えてもらわなければ・・・」「やりすぎだ。」
「アロイスさん、そろそろ始まりますよ。」
アロイスが振り向くと炎の勢いが衰えてきた。魔物との死闘が始まろうとしている。




