第3話 冒険者殺しの魔物グリム
アウロラクランの遠征隊がたった5人になって帰ってきたことで、冒険者ギルドの1階は騒ぎになる。
「どうしたんだ。5人しかいないぞ。」「深層でやられたのか、ボロボロだぞ。」
冒険者たちが口々に言う。居合わせたカリスパーティーが言葉を失う。イオンが青ざめている。
エルメンヒルトは、アウロラクランの遠征隊は30人ほどいたことを知っている。戻っていない25人位はダンジョンで死んだことになる。レベル3になって魔物に対して余裕が出て来ているが、深層に行けばまだまだ腕が足りていないと気を引き締める。
アウロラクランの5人は受付に行くと奥へ通される。これ以上の騒ぎになることを防ぐためだ。
冒険者ギルドのギルド長コンラート・グーゲルが直接聴取する。
「ダンジョンで何が起こったのだ。」「26階層で未確認の魔物に遭遇して30人のメンバのうち24人が殺された。」
「魔物は殺したのか。」「いや、退けるだけで精一杯だった。」
「どんな魔物だ。」「大きなトカゲのような姿で全身を瑠璃色のうろこに覆われていて魔法が効かない。」
「剣はどうだ。」「うろこが硬くてよほどの腕前でないと切ることはできないだろう。それにキズつけてもすぐに新しいうろこが生えてくる。」
「そんな化け物、倒すことできるのか。」「いや、あれは冒険者の天敵だ。」
「魔法が効かなくて、剣技で戦うほかないのか。エアハルトならレベルが上がれば倒せるか。」「エアハルト、だれだ。」
「駆け出しの冒険者だ。レベル2になったが魔力が0なんだ。」「そいつについて教えてくれないか。」
アルノーが身を乗り出して聞く。
「8カ月でレベル2になっている。」「エルメンヒルトの最速記録と同じか。それで魔力が使えないんだな。」
「そうだ、エルメンヒルトと同郷で黒髪に黒い瞳だ。」「魔力なしで8カ月でレベル2か。」
「アルノー、そいつにあれを討たせるつもりか。」「ああ、俺も剣技を鍛え治す。エアハルトにはレベル5になってもらう。」
「魔力なしでレベル5になれるわけないだろ。」「前例がないだけだ。あれはそういうやつにしか倒すことはできないよ。」
「アルノー、エアハルトをアウロラクランに向かえるつもりか、笑いものになるぞ。あいつはポンコツと言われているんだ。」「ケヴィン、俺はクランを抜ける。俺がエアハルトのパーティーに入るよ。」
「アウロラクランが大変な時に何を言っている。」「済まない。仲間の敵を討つと決めたんだ。」「好きにしろ。敵はアウロラクランが討つ。」
ギルド長のコンラートがアルノーとケヴィンに尋ねる。
「話は済んだか。聴取を続けたいのだが。」「済まない。続けてくれ。」
「魔法が効かなくて、通常の斬撃もダメなことが判ったが、なぜ、24人も冒険者が殺された。」「魔物はまず逃げようとした冒険者を攻撃した。」
「どういうことだ。」「魔物は俺たちを全滅させるつもりだったんだ。」
「戦意の無い者から狙ったのだな。」「そうだ、爪の一撃で冒険者は防具ごとばらばらに切り裂かれた。」
「爪が武器になっているのか。」「噛まれても鋭い牙で切り裂かれる。」
「魔物は魔力を使わなかったのか。」「いや、使っていない。毒もなかった。」
「そうか・・・新種の魔物だな。グリムと名付けよう。」「グリムか。」
「明日、発表する。エリス、魔物の特徴を聞いて絵にしてくれ。」「私がですが、アメリーの方がうまいですよ。」
「アメリーはギルド内の騒ぎを抑えている。君が描いてくれ。」「分かりました。」
エリスは、話を聞いて絵を描き始める。苦労してグリムの絵を仕上げると明け方になっていた。
朝になり、グリムの絵とアウロラクランが遭遇した状況がかかれた紙が張り出される。
26階層の冒険者殺しの魔物グリムは冒険者の間で話題になる。イーリスクランのイーリストリニティは話を聞いて冒険者ギルドを訪れる。
イーリストリニティは張り出された紙を見て、アウロラクランの遭遇戦の状況を知る。閃光のアルフレートが魔法使いの業火のアライダに言う。
「どうだ、魔法は通用しそうか。」「魔法の援護は期待できないわ。」
「そうか。」「グリムの爪が鋭かろうが俺が止めてやる。」
「魔法は通用しないから女神の加護は使えないぞ。」「なに・・・それでも盾がある。」
鉄壁のクルトが答えるが閃光のアルフレート続けて言う。
「グリムの爪が盾を引き裂いたらどうする。」「まずいな・・・アルフレートなら切れるだろ。」
「やってみないとわからない。」「俺たちは通用しないとアウロラクランの二の舞だぞ。」
「ああ、対策が立つまで遠征は中止だな。」「仕方ありませんね。」
イーリストリニティはその場で遠征の中止を決める。イーリスクランもメンバーは魔力頼って戦うためグリムの相手はリスクが大きすぎるのだ。




