第10話 エアハルトの激闘
エアハルトは呼吸を整えると一気に間合いを詰めて剣を振る。剣は受け止められる。というより強烈な斬撃が来る。剣同士が切り結んだ瞬間後ろに飛ぶ。それの斬撃の力も上乗せされる。
エアハルトはダンジョンの壁まで飛ぶ。壁を足場にそれに向けて突貫して突きを繰り出す。剣はかわされる。しかし、それの左目を刃がかすめる。それは左目をつぶされて屈辱を感じる。
「ガウ、がおおおおーーーーん。」
それはいら立つように両腕を振り回して暴れまわる。エアハルトはそれの振り回す暴力をかわして剣で袈裟切りにする。会心の一撃であるはずだ。コボルトなら2つに切り裂いていただろう。
しかし、浅いキズをつけただけだった。それの体は固い筋肉の鎧に包まれていた。
エアハルトは自分の非力を呪う。僕に力があれば。強く、強く、強く、強く、強くなりたい。強く願望を願う・・・・・
それは切られたことで冷静になる。非力でのろまな人間のくせに挑んでくる奴・・・敵だ。残った右目でエアハルトを睨む。
エアハルトが距離をつめて切りかかるとそれは飛んでエアハルトの後ろに回り込み、背中を剣で切りつける。金属の防具が火花を散らす。
剣は防具が防いだがエアハルトは斬撃の強さに突き飛ばされる。地面を転がり、それと距離を取って立ち上がる。しかし、それは目の前にいる。左の爪がエアハルトの顔面を捕らえようとする。
エアハルトはそれに近づくことで爪をかわすが顔面に左腕を受けて、打ち飛ばされる。地面を転がりながら意識が遠のく。
立ち上がるんだ・・・寝るな・・・戦え・・・戦え。エアハルトは、フラフラと立ち上がる。それは手を抜くことはしない。右手の片手剣で切りつける。
エアハルトは反射的に斬撃を剣で受け流す。それは、剣撃を続けるが、ことごとく剣で受け流される。
バッシュパーティーのアロイスたちは2階層で狩りをしていたため。逃げる冒険者パーティーと入れ違いになり、異常種のことを知らずに3階層に入ってきていた。
アルマが走って来る。アルマはアロイスたちを見つけるとまくしたてる。
「助けてください。仲間が殺されそうなんです。お願いします。」「この赤毛の女の子、エアハルトのポーターだよな。」「ああ、この前まで男装していたんだ。」
「お願いします。冒険者でしょ。」「エアハルトが危ないのか。」
「はい、異常種と戦っています。」「とにかく行くぞ。案内してくれ。」「はい。」
アルマとアロイスたちはエアハルトの所に向かって走って行く。
エアハルトは戦いの中で闘志を燃やし始める。ダメージがある。相手は自分より力があり、早く動ける。それがなんだ。最後まで食らいついてやる。
「はあああああーーーーー」
自然に声が出る。それの剣撃を受け流しながら、隙を伺う。それの剣の振りが大きくなる。そこだ。エアハルトは左手で腰の後ろに装備している短剣を抜いて、心臓にめがけて突き出す。
短剣は刺さるが、それの厚い筋肉が短剣を阻む。エアハルトはそれの左わき腹に刺さっている剣の柄を蹴って離脱する。その行為は、それに激痛を与える。
「うおおおおおおーーーー」
たまらず吠えて、肩で息をする。それは分からない。弱いはずの人間が向かってくることをやめない。十分、ダメージを与えているはずである。なぜ、向かってこられる。
エアハルトはもっと速く動いて剣を振るうことを考え、集中する。
「いけえええぇぇーーーーー」
それの間合いに躊躇なく向かって行く。会心の一撃は受け止められる。力比べはしない。剣筋をずらして移動して、再び打ち込む。
アルマとアロイスたちが激闘の場にたどり着く。
「お願い助けて。」「エアハルトの奴、互角に戦っているじゃないか。」
アロイスが目を見開いて言う。今、繰り広げられている戦いは、レベル1の冒険者が出来るものではない。アルマも戦いを見る。エアハルトの動きが速くなっている。
「エアハルト、倒せ。それはお前の獲物だ。勝ってくれー」
アルマが応援する。デニスがうわごとのように言う。
「あの化け物はなんだ。見たことがないぞ。」「イレギュラー、異常種だ。強いぞ。」
エゴンが言う。ポーターのカミルがアルマに言う。
「こういう時、俺たちポーターは攻略法を考えて指示を出すんだ。」「指示を・・・」
あの化け物の弱点はなんだ。左わき腹に剣と心臓の所に短剣が刺さっている。両方とも急所に届いていないはずだ。後は左目がつぶれている。エアハルトがやったのか。
「エアハルト、左に回れ、化け物の死角だ。左が見えていないぞ。」
アルマは大声でエアハルトに指示する。エアハルトから返事はないが、左側に回って攻撃するようになる。アルマはアロイスたちにお願いする。
「魔法使いはいませんか。援護をお願いします。」「エアハルトは十分に戦っている。他人の獲物に手を出すことはできないな。」
エゴンがアルマに答えて言う。
エアハルトは、左に回り込みながら剣を打ち込む。それでもそれは剣で受け止める。もっとスピードが必要だ。もっと、もっと、もっと速く動くんだ。
すでに体は悲鳴を上げている。でも、もっと速く動けると思う。不確かなものではない確信している。




