第4話 ダンジョン孤児
エアハルトとアルマは、ダンジョンを出て地下1階から1階へ向かう。エアハルトの体力は限界でアルマが支える。受付へ向かうと気づいたアメリーが出てくる。
「あなたたち血だらけじゃないの。どうしたの。」「ほとんど返り血だから大丈夫です。モンスターラッシュに巻き込まれたのです。」
「エアハルト君とあなたは・・・」「アルマ・ヤーンです。エアハルトに助けられたのです。」
「アルマ・ヤーン・・・確か行方不明になっているわよ。」「ヤンセン兄弟におとりにされたのです。」
「おとりに・・・見過ごせないわ。話を聞かせて。」「ギルドは何もしないでしょ。私が無事なことは隠しておいてください。」
「ヤンセン兄弟を処罰できるのよ。」「ギルドはダンジョン孤児の言うことを信用しないでしょ。」
「そんなことはないわ。」「あるよ。俺は何度もだまされたり、置き去りにされたことがあるけどギルドは取り合ってくれなかった。」
「分かったわ。行方不明は取り消すけどヤンセン兄弟には知らせないわ。」「ありがとうございます。エアハルトをお願いします。」
「待って、血だらけだからシャワーを使って行って。」「結構です。」
アルマは、エアハルトをアメリーに預けると冒険者ギルドを出ていく。アメリはエアハルトの装備を外すと奥の床に毛布を引いて寝かせる。
日が落ちかかる頃、エアハルトは目を覚ます。ぼやけた頭であたりを見回す。あれ、ダンジョンじゃない。アルマはどこに行ったんだ。アメリーが声をかける。
「寝込んでいたのよ。」「アルマは、僕を助けたんだ。」
「アルマは帰ったわよ。職員用のシャワー使っていいから血を洗い流してきて。」「アメリーさん、ありがとう。」
エアハルトはシャワーを浴びると、バックに入れてあった服に着替える。
「さっぱりしたわね。何があったの。」「アルマが3階層で助けを呼んでいたから助けに行って、魔物の群れの中を切り抜けてきたんです。」
「3階層に行ったの。私は2階層までと行ったわよね。」「あっ、すみません。」
「助かったからよかったものの。これは蛮勇よ。」「でも、助けを呼んでいるんですよ。」
「エアハルト君はレベル1なのよ。今度から助けに行ってはだめよ。」「でも・・・」
「自分の命を一番に考えなさい。生きてダンジョンから戻ることが大事なのよ。」「あのモンスターラッシュてなんですか。」
「ダンジョン中の魔物が一斉に襲って来ることよ。」「僕はそんなところに飛び込んだのか。」
「エアハルト君、本当に生きて帰って来てくれてよかったわ。」
エアハルトはアメリーに心配させてしまったことに気づく。アングラートの食卓に戻るとアロイスたちが食事を始めていた。
「エアハルト、こっちだ。」「今日は早いですね。」
「ああ、3階層に行こうとしていたんだがヤンセン兄弟がモンスターラッシュにあって逃げて来たから1階層でゴブリンとスライムを狩りまくっていたんだ。」
それで1階層に魔物がいなかったんだ。アロイスさんたちに助けられたな。
「ありがとうございます。」「なんで、礼を言うんだ。」
「僕は3階層でアルマを助けたんです。1階層に魔物がいなかったから助かったんです。」「アルマってダンジョン孤児のあいつか。逃げ遅れたそうじゃないか。」
「いいえ、足を刺されておとりにされたんです。」「ヤンセンたちひどいことしやがる。」
「どうしてそんなこと。」「それは助かるためだが、ダンジョン孤児は冒険者にいいように使われているところがあるからな。」
「ひどいじゃないですか。」「使い捨てにしても文句を言うやつはいないからな。悪い奴は、物扱いにしているのさ。」
「・・・・・」「まあ、関わらないことだな。」
翌朝、エアハルトはフィンの工房へ行く。
「どうした。もう、武具を壊したんじゃないよな。」「ごめん、防具の修理をお願いしたいんだ。」
「防具を1回で壊すなんて何をやったんだ。」「3階層でモンスターラッシュに巻き込まれたんだ。」
「良く生きているな。」「死にかけたよ。」
「分かった。見せてくれ。」「ありがとう。」
「これなら明日までに治せるから。剣の方はどうだ。」「使い易いよ。」
「俺の作った剣だからな。」「早く看板を出せるようになるといいな。」「おう。」
朝早くから、アメリーのいる受付にアルマが来る。
「魔石の換金お願いします。」「ヤンセン兄弟に見つかると危ないでしょ。」
「ここなら暴力は振るえませんから。」「そうね。」
アルマは周りを見ている。
「奥で隠れて待っている?」「いいえ。」
アルマは換金が終わっても1階のふちに座り込んでいる。アメリーは気になるが他の冒険者の応対がある。昼頃になるとアルマがアメリーの所に来る。
「エアハルトは来ないの?」「エアハルト君を待っていたの。あなたには彼に関わって欲しくないな。」
「俺がダンジョン孤児だからか。」「あなたがトラブルを呼びそうな気がするからよ。」
「俺はエアハルトのポーターになる。やっとまともなパーティメンバーになってくれそうな人を見つけたんだ。」「エアハルト君はソロ冒険者よ。」
「でも、ポーターがいれば戦闘に集中できるだろ。それに俺なら10階層まで経験がある。」「・・・・・」
たしかにエアハルトはダンジョンの知識が足りていない。アルマならそれを補うと思える。しかし、いずれアルマはヤンセン兄弟とトラブルになるだろう。
アメリーの考えはまとまらない。それに決めるのはエアハルトである。




