第2話 勇気のあり方
イオンは、アルフレートがエアハルトを勧誘した時、エアハルトが「冒険をしたいのならイーリスクランを抜けて僕の所に来ると良い」と言って断ったことで激怒している。
剣士のイオンにとって閃光のアルフレートは、憧れであり目標であった。それをエアハルトが一介の冒険者に貶めたのである。許せるはずがない。
魔法使いのケープがイオンを諭すように言う。
「エアハルトの小僧は、礼を失しておるがアルフレート殿は許しているのだ。イオン、お前が怒ることではないよ。」「だが、許せない。」
「レベル3のお前がレベル1の小僧を痛めつけるのか。」「手は出さない・・・一言いうだけだ。」
イオンは握った拳が震えている。エルメンヒルトが心配して言う。
「そんな状態じゃケンカになるわよ。会わない方が良いよ。」「エアハルトがかわいいんだろ。黙っていてくれ。」
「エアハルトは大切だけど、イオンはカリスパーティーのリーダーでしょ。こらえて。」「いいや、我慢できない。」
イオンは朝、冒険者ギルドに来るエアハルトを待ち伏せることにする。パーティーメンバーはイオンが暴走しないようについて行くことになる。
エアハルトは朝起きると日課の剣の素振りをして、部屋に戻り装備を整えると1階の食堂に行く。食事をしているとベアトリスがいつものように弁当を手渡す。
弁当をバックに入れるとエアハルトは冒険者ギルドに向かう。
エアハルトが冒険者ギルドに入るとイオンたちカリスパーティーがエアハルトを取り囲む。
「こんなポンコツに何の用だい。」「アルフレートさんに何と言った。」
「イーリスクランに入れと言われたから、代わりに僕の所に来いと言ったよ。」「アルフレートさんと釣り合うと思っているのか。」
「いいや、すごく強い人だよ。でも、追い越さなくてはならないんだ。」「お前がアルフレートさんを追い越すだって、笑わせるな。」
「用がないなら行くよ。」「待て、アルフレートさんに謝れ!」
エアハルトは無視して受付に向かう。イオンはエアハルトにつかみかかろうとするがパーティーメンバーが止める。
「アメリーさん、おはようございます。」「怒っているわよ。」
「もう済んだことですから。」「敵を作っちゃだめよ。ダンジョンの中では何かあってもわからないんだから。」
「分かりました。」「装備、新調したの。」
「防具は修理しました。剣は新品です。」「この前は運が良かっただけだから、まだ3階層に行ってはだめよ。」「はい。」
エアハルトは地下1階へ行き、ダンジョンに入る。1階層の魔物はエアハルトの敵ではなかった。出てきた棍棒を持ったゴブリンは新しい剣の試し切りの餌食になる。
2階層に行く坂を下って、2階層に入ると通路が広くなる。剣を持ったゴブリンが3匹出てくる。エアハルトは突っ込みすれ違いざまに2匹のゴブリンを屠る。
3匹目はひるんだ隙に突きを繰り出して剣を心臓に突き立てる。ほんの数秒で3匹のゴブリンを討伐する。
エアハルトは違和感を感じる。ゴブリンが前回より動きが遅く弱く感じるのだ。
次にコボルトが5匹現れる。1匹が上段に剣を振りかぶってエアハルトに切りかかる。エアハルトは半身になって剣をぎりぎりかわして、剣を下段から振り上げ、コボルトの両腕を切り飛ばす。
さらに首をはねると、残る4匹に向かって行く。2匹目を袈裟切りにして、斜め後ろにいた3匹目を突きを繰り出して剣で首を貫く。エアハルトは腰の後ろに装備している短剣を左手で抜く。
4匹目がエアハルトを横一閃しようとするが左手の短剣に受け止められる。エアハルトは右手の剣で4匹目の心臓を貫く。
5匹目が切りかかって来るが右手の剣で剣筋をずらして近づくと短剣で5匹目の水月を貫き仕留める。
「調子いいよな。剣がいいからかな。」
エアハルトは独り言を言う。コボルトを30匹相手したエアハルトにとって5匹のコボルトは脅威にならなかった。
コボルトとゴブリンを討伐しながら2階層を進んで行く。エアハルトは3階層に降りる坂の近くまで進んで、ここで折り返すことにする。
魔物の気配がないので、ベアトリスからもらった弁当を食べることにする。エアハルトにとってベアトリスの弁当は、食べられないことはないが不思議な味がする。
でも、毎朝作ってくれるので、残さず食べる。もちろん感謝している。今日も残さず食べる。
すると男が2人、3階層から駆け上がって来る。男たちはエアハルトに声をかける。
「モンスターラッシュだ。ここも巻き込まれるかもしれない。逃げろよ。」「モンスターラッシュ?」
男たちはエアハルトの疑問には答えず走り去る。エアハルトはこれは退散した方が良いと考えて立ち上がる。その時、3階層から声が聞こえてくる。
エアハルトが耳を澄ますと助けをよんでいるようだ。おそらく逃げ遅れてモンスターラッシュと言うものに巻き込まれているのだろう。
どうする。僕1人が行ってどうかできるのか。さっきの男たちは手に負えないから逃げていたのではないか。どうする、助けを呼んでる人がいるんだぞ。
勇気を出せエアハルト。助けられるのは僕だけかもしれない。行かないと後悔するぞ。エアハルトの足が動き出す。足は走り出し3階層への坂を駆け下りる。




