第13話 魔法石
1人だけ防御魔法の中にいなかった者がいた。エアハルトはスキル、アンチマジックの効果でドラゴンの引き起こした灼熱地獄の中を走り抜け、ドラゴンに迫り跳躍すると斬撃を加える。
エアハルトの剣はドラゴンの左目を切り裂く。ドラゴンが吠える。
「ごあああああぁぁぁぁーーーーーーーー」
エアハルトは止まらない、着地すると俊足を使って右足に高速の斬撃を加える。剣は硬いうろこを切り裂き肉を断つ。他の魔物なら足を切り飛ばしていたはずが、小さなキズをつけただけである。
ドラゴンの体が大きすぎるのである。エアハルトの行動にエルメンヒルト、アルノー、アルフレートが触発される。アロイスが止める。
「やめろ、エアハルトにはアンチマジックがあるんだ。」「それがどうしたの。エアハルトが戦っているのだから戦うわよ。エゴン、クヌート、魔法を解除して。」
エゴンとクヌートは肩をすくめて防御魔法を解除する。熱気が入って来る。エルメンヒルト、アルノー、アルフレートが飛び出す。4人はエアハルトに加勢して切りかかる。
するとドラゴンは羽ばたいて空中に逃げる。そして、来た方向へ飛び去って行く。アロイスは大きく息を吐いて力を抜く。エルメンヒルトがエアハルトの声をかける。
「大丈夫、ケガはない?」「大丈夫だよ。ダメージをほとんど与えることが出来なかったよ。」
「退けただけでも大したものよ。」「あいつ、僕たちを試していたと思う。」
その時、ドラゴンが立っていた地面が崩れて穴が開く。アロイスたちは足場に気をつけながら穴に近づく。穴の中を覗き込んだデニスが言う。
「中に何かあるぞ。」「魔物はいるか。」
「いいや、見当たらない。降りて調べるか。」「そうだな。デニス、降りて危険がないか調べてくれ。」
「俺がやるのか。」「援護するから心配するな。」
デニスは穴の中に飛び降りる。深さは3メートルほどだ。中を見回すと正方形の部屋のようになっていて、中央に石碑と石の台の上に大きな魔石が置いてある。
「大丈夫だ。中央に石碑と魔石があるだけだ。」「分かった。みんな降りるぞ。」
セクメト・クランのメンバーが穴の中に降りる。アルマが石碑を読む。
「ダンジョン攻略者に魔法石を捧げる。攻略の証とするが良い。」「ダンジョン攻略者だって!」「俺たちはやったのか。」
アルノーが考えを言う。
「ダンジョン攻略したということは、さっきのドラゴンがダンジョン主と言うことになりますね。」
アルフレートが言う。
「ドラゴンは倒していないぞ。」「エアハルトが追い払っているわ。」
エルメンヒルトが反論する。
「細かいことはいいじゃないか。ゴルドベルクのダンジョンは今、攻略成功したんだ。」
アロイスが気楽に言う。アライダとエゴン、クヌートは台に置いてある魔石を調べている。
魔石は赤く卵型で長さ10センチほどの大きさでかなり大きい。エアハルトが3人に質問する。
「その魔石に何かあるの。」「この魔石はただの魔石ではないわ、加工して魔法石になっているわ。」
「魔法石?」「ええ、魔石の中に魔法陣が描かれているわ。世界に数個しかないはずよ。」
「だったら、僕たちは大金持ちだね。」「価値の付けようがないわよ。」
アロイスが話を聞いて言う。
「これで毎晩宴会が出来るな。」「これまでもしているでしょ。稼ぎはみんなに平等に使えるように管理します。」
カミルがアロイスが暴走しないようにくぎを刺す。クルトがアライダに質問する。
「さっきから、その魔石に触れてないようだが何かあるのか。」「トラップを警戒しているのよ。」
「僕たちはダンジョン攻略したからトラップなんてありませんよ。」
エアハルトが気軽に魔法石を持ち上げる。アライダ、クルト、エゴン、クヌートの顔色が変わる。しかし、何も起きない。アライダが怒る。
「エアハルト、何をするの。死ぬつもり。」「驚かせてごめん。何も起きなかっただろ。」
「そうだけど心臓に悪いわ。」「これどうやって使うの。」
「魔法石に魔力を流して魔法陣を起動するのよ。強力だから試したらだめよ。」「僕には魔力はないよ。」
「そうだったわね。おそらく氷結魔法だと思うわ。」「とりあえず。カミルに預かってもらおう。」「俺が持つのか。」
カミルは嫌そうな顔をする。値がつかないような高級品である。無くしたりは出来ない、責任は重大だ。
アロイスは指示を出す。
「穴から出るぞ。凱旋の準備だ。」「「「おーっ」」」
この時、エルメンヒルトがナイフを部屋の何も無い所へ投げる。ナイフは空中で停止する。