第12話 ドラゴンの脅威
セクメト・クランは50階層に進む。50階層は巨大な空洞になっている。天井は、はるか上で横幅も先が見えないただ中央に石畳の道が続いている。そして、魔物は出てこない。
セクメト・クランは進んで行くが地平線が見えている。アロイスがぼやく。
「今度は超巨大な空間か。気が遠くなりそうだ。」
途中で野営をすることになる。魔物の気配はないが2人づつ警戒することになる。デニスがエゴンに言う。
「この階層をどう思う。」「想像もつかないよ。地中に世界がもう1つあるようなものだ。」
「そうだな。このまま進んで行くと食料が尽きるな。」「余分に用意捨てあるが帰還できないかもな。」
デニスたちの心配はアロイスたちも考えていた。アロイスはエアハルト、アルノー、アルフレートに話をする。
「この階層だが、このままだと踏破は不可能だと思う。」「食料が足りなくなりますね。」
「どこかで引き返さないといけませんね。」「5日ではどうでしょう。」
「この階層に10日もいることになりますよ。」「はい、48階層と50階層攻略に時間をかけていませんからこのくらいの余裕があるはずです。」
「少し安全マージンを取りましょう。3日ではどうですか。」「私はアルノーの考えに賛成します。」「僕も構いません。」
エアハルトが5日の意見を放棄してアルノーの考えに賛成したため、3日進んで引き返すことになる。翌朝、早くからセクメト・クランは出発する。
何もない直線の石畳の上を進んで行く。3時間程歩いたところで、エルメンヒルトが鋭い視線を感じる。
「何か遠くから向かってきています。」「何も見えないぞ。」
「はい。でも向こう側は見ています。」
すると進行方向のかなたに黒い点が見える。レベル7以上の目でも何なのか判別できない。分かるのは宙に浮いているらしいことである。
その黒い点はだんだん大きくなる。明らかに真直ぐにこちらに向かってきている。飛んで来ているのだ。ゴルドベルクのダンジョンに飛ぶ魔物は存在しない。
存在しないはずだが、ここは未踏の50階層である。何が出て来てもおかしくはない。さらに大きく見えるようになり、トカゲに翼が生えているようだ。
アロイスがアルマに質問する。
「トカゲに翼が生えている魔物に心当たりはあるか。」「えーっと、ドラゴンかな。」
「ドラゴンだと天災級の魔物ではないか。」「逃げたほうがいいかもしれないぞ。」
アルマが言うとアルフレートが言う。
「もう遅いと思います。あれがドラゴンならものすごいスピードで近づいてきています。逃げることは不可能です。」「どうする。」
「戦いましょう。」「エアハルト、相手はドラゴンだぞ。国が亡ぶこともあるんだ。人間の手には負えないぞ。」
アロイスはどうすれば被害を最小限にできるか知恵を絞る。
それはさらに近づいて来る。セクメト・クランのメンバーはそれの大きさに緊張する。
大きな翼を背中に生やして凶悪な顔に頭には一対の角を生やして、頑丈そうなうろこに体を覆い体の割に小さめの腕と太い足、長い尻尾を持っている。
アルマがうわごとのように言う。
「ドラゴンだ。なんでこんなところに。」
ドラコンはセクメト・クランの前で急停止してホバーリングする。メンバーは、地面に伏せて衝撃で飛ばされないようにする。
エアハルトたちは相手が空中にいるのでドラゴンの出方を待つことにする。ドラゴンはゆっくり高度を下げると静かに2本足で立つ。
ドラゴンの目は敵意に満ちている。アロイスが叫ぶ。
「後退!できるだけ距離を取れ!」
ドラゴンの長い首が光始める。アロイスが指示する。
「アライダ、エゴン、クヌート、防御魔法だ。多重でかけろ!」「「「おう」」」
アライダ、エゴン、クヌートが詠唱を始める。ドラゴンの首の光が強くなる。アロイスたちは防御魔法が間に合えと祈る。
ドラゴンの口から灼熱地獄の炎が吐き出されて周囲を炎で満たす。威力も攻撃範囲もヒドラやベヒモスの比ではない。防御魔法はぎりぎり間に合う。
3重の障壁がメンバーを守る。しかし、一番外側のアライダが張った一番強力な防御魔法が破られる。エゴンとクヌートはまずいと考える。
幸いにもドラゴンのブレスが収まる。しかし、まだ防御魔法は解くことが出来ない。周りの地面は赤く焼けていて外に出たら焼け死ぬだろう。
アロイスは防御しかできない状態でどうやって逃げるか考えている。