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第11話 ゴーレム

 セクメト・クランは翌日、48階層のベースを出て49階層へ向かう目標の50階層まであとわずかだ。49階層に入って、、エアハルトとエルメンヒルトは異常に気づく。

 全く気配や魔物の視線が無いのだ。エアハルトはアロイスにハンドサインを送る。アロイスはエアハルトたちに戻るように指示する。

 「エアハルト、どう考える?」「分かりません。この階層には何もいないとしか言えません。」

 「黒水晶、どうだ。」「今の所、魔物はいないわ。」

 「グリムのような異常種がいる可能性はありませんか。」「なら、私が気づきます。」

アルノーの言葉にエルメンヒルトが否定する。アルマが言う。

 「階層そのものが罠になっているかもしれないぞ。」「そんなことがあるのか。」

 「その場合、魔物がいると罠が作動するから、魔物はいない。」「気をつけて進むしかありませんか。」

 「こうして、止まっていても仕方がないな。」

セクメト・クランは慎重に進んで行くが、本当に魔物は出てこない。このままだと何もなく50階層に行けそうだ。

 アルマが言っていた罠も今の所、見つかっていないし、作動もしていない。奥へ進んで行くと巨大な石の像が通路の脇に立っている。アルフレートが言う。

 「あれは武神の像かな。剣を持っているな。よくできている。」「こんなの誰が作ったんだ。」

像を過ぎれば50階層へ下る道になりそうである。ヨルがふと像を見上げると目が合う。ヨルは「えっ」と思う。まさか動くわけないよな。ところが首が動く。驚きのあまりつまづく。

 ユリアーネがヨルに言う。

 「上ばかり見てると危ないですよ。」「いや、像が動いたんだ。」

 「像が・・・」

ユリアーネは思わず見上げる。すると目が動いてユリアーネと目が合う。

 「う、動いている。像が動いているわ。」

ユリアーネの声に、メンバーは皆、見上げる。すると像は右手の剣を振り上げる。アロイスが叫ぶ。

 「散開!逃げろー」

メンバーは素早く動き、像の剣の斬撃に巻き込まれる者はいなかった。その中で、エアハルト、エルメンヒルト、アルノー、アルフレートが反撃に転じる。

 それぞれ跳躍して剣を打ち込むが石の像に効果は無い。すでに頭は武神の像を倒すことにフル回転している。しかし、答えは出ない。

 石の像が動くなど聞いたこともなかったのだ。アロイスも指示の出しようがない。アルマがアロイスに言う。

 「あれはゴーレムだ。魔道兵器だよ。」「聞いたことないぞ。」

 「ギルドの文献にあったんだ。魔石を使って動いているんだ。」「どうやって倒せばいい。」

 「倒した記録はないんだ。おそらく魔石を壊せばいいと思う。」「魔石はどこだ。」

 「分からない。倒した記録がないってことは無敵なんだろ。」「逃げるしかないな。」

アルマの話を聞いてアロイスは決断する。

 「いいかー、これから50階層へ逃げ込むぞ。ゴーレムの攻撃に当たるなよ。」「50階層に何があるかわからないぞ。」

カミルが意見するがアロイスは無視して言う。

 「いけー、エアハルトたちが気を引いているうちに行くんだー」

アルマが真っ先に走り出す。つられるようにユリアーネとヨルが走る。ゴーレムはエアハルト、エルメンヒルト、アルノー、アルフレートの相手をしている。

 残りのメンバーも走る。残っているのはアロイスだけである。50階層へ下る道の大きさではゴーレムが入ることはできない。

 エアハルト、エルメンヒルト、アルノー、アルフレートの斬撃はゴーレムの表面にひっかき傷をつけるだけ効果がない。アロイスが叫ぶ。

 「ゴーレムの攻撃はもういい。50階層へ逃げ込むぞ。」

エアハルトはこれ以上戦っても勝ちは見えてこないと判断してアロイスに従う。エルメンヒルトも後を追う。ゴーレムが左のこぶしをエルメンヒルトをつぶそうと振るう。

 エルメンヒルトは俊足で加速してかわす。アルノーにアルフレートが言う。

 「しんがりは私が務めます。行ってください。」「分かりました。気をつけて。」

アルノーが離脱するとアルフレートが俊足で逃げ出す。ゴーレムは剣を50階層の道の入り口に向けて切り込むがアルフレートは間一髪で逃げ込む。

 アロイスがエアハルトたちに言う。

 「ゴーレムを倒すことは不可能だ。このまま50階層を踏破するぞ。」「50階層には太刀打ちできない魔物がいるかもしれませんよ。」

 「アルノー、わかっている。49階層でゴーレムを倒すことが出来なかったんだ。さらに強い魔物が出てくる可能性がある。」「アロイスさんが指揮を執っているんですから従いましょう。」

エアハルトの一言で50階層へ聞くことが決まる。アロイスの指示で陣形をまとめるとセクメト・クランは動き出す。

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