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第13話 アビリティの再測定

 コボルトの剣がエアハルトの腹を貫く。コボルトは動きを止める。コボルトの背中には剣が生えている。エアハルトは、剣を突き上げ、コボルトの胸を貫いていた。

 最後の1匹のコボルトが倒れる。エアハルトは腹に刺さった剣を力を振り絞って抜く。意識がはっきりとしない。このまま死ぬのかな。

 違う、違うぞ生きるんだ。背負っていたバックから回復ポーションを取り出す。簡単なことのはずなのにゆっくりとしかできない。左腕が全く動かないし、体が鉛のように重い。

 ポーションの栓を苦労して開ける。回復ポーションを口の中に流し込む。そして、エアハルトは気を失う。

 気がつくと体のキズが消えている。だが、体が血を失い過ぎたのだ。エアハルトは弁当を食べる。足りない、体はもっと栄養を欲している。

 バックの中の携帯食を全てむさぼるように食べる。エアハルトは横になって体に力が戻ることを待つ。左手を動かしてみる。思い通りに動く、後遺症はないようだ。

 エアハルトは横になりながら部屋の中を見回す。扉はコボルトを倒しても開かないようだ。さらに白骨が転がっていることに気づく。

 おそらく、同じように罠にかかった冒険者だろう。白骨は4体分ある。遺体を発見したら冒険者プレートを持ち帰るだったよな。

 エアハルトは起き上がる。まだ体が重いが動けないことはない。4人の白骨から冒険者プレートを回収する。さらにコボルトの魔石を拾い集める。扉は周りの壁を調べると開けるための仕掛けを発見する。

 エアハルトは折れた剣の代わりにコボルトの剣を持って、罠の部屋から出る。帰る途中、ゴブリンに出会うが、ある程度、近づくと慌てて逃げていく。

 コボルトの返り血を全身に浴びているため、コボルトと間違えているのかもしれないと考える。エアハルトは何とかダンジョンを出るが体力の限界に来ている。

 エアハルトは冒険者ギルドの地下1階で座り込む。もう動けない。精一杯やったんだ。生き残ったぞ。そして、そのまま眠りに落ちる。

 ダンジョンから出てきた冒険者が受付に報告するついでに受付嬢に話す。

 「地下1階でポンコツ野郎が血まみれで倒れていたぞ。」

隣の受付にいたアメリーの耳に入る。

 「ちょっと行ってくる。」

アメリーは慌てて回復ポーションを持って地下1階に走って行く。そこには、全身血で赤黒くなったエアハルトが座り込んでいた。新品だった防具は傷だらけになっている。

 服は何か所も破れてボロボロだがケガはない。回復ポーションでけがを治したのだろう。呼吸はしていることを確かめてホッとする。

 「起きて、エアハルト君。」「・・・う・・・うん。もう少し寝させて・・・」

 「甘えない!起きなさい!「・・・は、はい。」

エアハルトは目を覚ます。アメリーと目が合って頭が回転を始める。

 「アメリーさん。ここは・・・」「冒険者ギルドの地下1階よ。こんなところで寝ない。ボロボロで血まみれじゃないの。」

 「生きて戻って来れた・・・」「とりあえず。血まみれの格好をどうかしましょ。」

 「そんなにひどいですか。」「外に出たら騒ぎになるわよ。職員用のシャワーがあるから貸してあげる。」

アメリーはエアハルトをシャワー室にあんないするとエアハルトの服を買いに出かける。エアハルトは着替えてアメリーと受付に行く。アメリーはエアハルトを睨んで言う。

 「もしかして3階層に行ったのではないわよね。」「行ってません。2階層の隠し部屋の罠にはまったのです。30匹のコボルトがいたんですよ。」

 「2階層に隠し部屋があるなんて聞いたことがないわ。場所は分かる。」「はい、分かります。」

 「報酬が出るわよ。」「隠し部屋を見つけたからですか。」

 「そうよ、地図にない道などを発見すると報酬が出ることになっているわ。」「そうですね。分かっていれば罠を回避できますから。」

 「よく、生きて出て来られたわね。」「はい、死ぬところでした。隠し部屋には遺体が4体ありました。これが冒険者プレートです。」

 「ありがとう。所有者を確認するわね。」

隣の席にいた受付嬢が冒険者プレートをアメリーから受け取り、奥へ入って行く。エアハルトは魔石を取り出す。コボルトの魔石だけで50個以上ある。

 アメリーが魔石を鑑定していると受付嬢が戻ってきて言う。

 「冒険者プレートの持ち主が分かったわ。半年前に行方不明になったイーリスクラン所属のパーティー4人よ。見つけてくれてありがとう。」「いいえ。4人もいたのに勝てなかったのか。」

 「将来、有望だったのよ。そんなところから帰って来るなんて本当にレベル1なの。」「そうです。まだ駆け出しですから。」

 「もう一度、アビリティを測定した方が良いと思うわ。」「分かりました。測定します。」

エアハルトは再測定したら魔力0が間違っていたかもしれないと期待する。水晶玉に手をかざすと宝具がアビリティを紙に書きだす。

   適正 剣士 俊敏140 力132 剣技120 持久力101

 「すごい、全てが100を超えているわ、レベル2になってもおかしくないわ。」

受付嬢は、驚愕する。いったいどんな冒険を続けていれば短期間でこんなアビリティになるのだろう。

 「魔力はどうですか。」「えっ、魔力・・・0だわ。」「そんな~」

 「毒耐性47、どういう体しているの。」「毒耐性47はおかしいですか。」

 「あなた、2階層までしか行っていないでしょ。毒を持つ魔物は11階層からしか現れないのよ。ポイズンスネークに噛まれてもこんな耐毒性は持つことはないわ。」「毒を受けた記憶はありません。」

 「まあ、ポイズンスネークに噛まれても大丈夫だから。」「まだ11階層なんていけませんよ。」

 「ソロなんかやめて、どこかのパーティーに入れてもらいなさい。十分強いのだから。」「僕はソロで行きます。最高の冒険者になるんです。」

 「そのうち死ぬわよ。アメリーを悲しませるつもりなの。」「僕は生きて帰っています。」

受付嬢は呆れる。エアハルトは魔石と隠し部屋の発見、行方不明者の冒険者プレート回収の報酬をもらう。報酬は新しい防具と剣を買ってもおつりがあるくらいあった。

 アメリーはエアハルトに明日から体力が戻るまで休むように言う。


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