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終章:封魔神器の行方(2)

 数日後、二人は皇都セレスブルクの主座教会教皇応接室にいた。今度は教皇カール9世の正面にガイウスとセシリアが座った。


「弑逆鬼神の討伐、お見事でした、ハイト卿様。我々は成功するものと確信しておりましたよ。」

 教皇は笑顔で言った。

「それ(成功)は、我々をタンタロスへ送り込むことですか?。」ガイウスはあてこすった。

「その際は、大変失礼しました。我々の魔法技術が不十分だったばっかりに貴殿と臨席天使を危険な目に合わせてしまいました。大変申し訳ありませんでした。」カール9世は丁寧に謝った。

「わかりました、その話は無しにしましょう。教皇様が念のために闇刻盾の裏に付けておいて戴いた物資で我々も助けられました。おいしいお茶を味わうことができましたのでね。」ガイウスは返した。


「それにしても、素晴らしいお力です。総攻撃の際に発揮戴いた闇魔法力量は只事ではない、天変地異に等しいものでした。この力できっと弑逆鬼神を完全に消滅させて戴けるものと思っていました。」

 教皇は続けた。

「そこで、今回の鬼神退治の一部始終をお教えいただけないかと思います。書記官に筆記させ、公式記録として残したいと思います。」そう教皇は依頼した。


 二人は総攻撃の日にタンタロスへ到着してから、ハイリヒローゼン聖堂に戻ってくるまでのことを教皇に語った。

 教皇は話の始めから最後まで注意深く聞いていた。鬼神との最終決戦や、タンタロス神殿の成り立ちや仕組み等、十数世紀にわたる因果関係をすべて紐解き、理解しようとしているようであった。


「鬼神討伐だけでなく、タンタロスの謎も解明し、封魔神器も無事回収するという、まさに神業のような偉業を成し遂げられましたな。恥ずかしながら、素晴らしいの一言以外に言うべき言葉を持ちません。」

 教皇は話を聞き終わると、感嘆極まりない感で言った。

「まずは、弑逆鬼神の災厄からこの地上世界をお救い戴いたことに、大変感謝致します。今のお話を聞くと、数週前の魔物の襲撃を撃退戴いただけでなく、近いうちに起こったであろう世界の破滅を未然に防いで戴いたことがよくわかりました。我々セルシウス聖撰国の全国民、いやエウレカ大陸の全住民があなたに感謝するでしょう。」教皇は言った。


「セルシウス聖撰国教皇政府としては、凱旋式を挙行してハイト卿様の業績を国民を挙げて讃えたいと考えます。もちろん、あなたを守護した我が皇女のセシリア臨席天使も一緒にです。」教皇は続けた。

「そして、我が国に多大な貢献を戴いたハイト卿様には、特等護国大勲章を進呈し、永年年金を提供します。」

「また、よろしければ教皇内閣の名誉閣外大臣の任について戴き、古代聖闇魔法技術研究開発の推進役をお願いしたいと思います。そのための活動資金として、北方沿岸地域の一代領有権を寄贈いたしたいと思います。いかがでしょうか。」教皇は述べた。


 ガイウスは微妙な顔つきになった。政治に関心が薄い彼でも、北方沿岸地域はあまり豊かな地域ではなく、すすんで領有したいような地域ではないことを知っていた。

「勲章と年金につきましては、大変名誉なことでお断りすることが難しいと感じています。また、古代聖闇魔法技術研究開発については非常に興味をそそられるところではありますが、私は故国に帰り首都統治の任に戻らねばなりません。北方沿岸地域の領有権は辞退し、その代わりに信頼できる人物と一緒に任務を遂行できればと思います。」ガイウスは答えた。


「それは、いったいどういうことですかな?」教皇はたずねた。

「古代聖闇魔法技術研究開発を行うにあたって一番都合の良い地は、今回の件でローゼンブルクと分かりました。その地の地方総監と密に連携して、推進したいと考えています。」ガイウスは言った。

「ローゼンブルクには聖闇古代魔法遺跡が多く、研究施設も多くあります。今回の事件における弑逆鬼神のような、古代魔法技術を悪用する者が現れないように、ファーレンハイト封魔国統治者のアウレリウス家と、ローゼンハイム教皇家が手を取り合って保護・研究をしていくことが必要と考えているのです。」

 ガイウスは続けた。


「しからば、どのような手段をお考えかな?」教皇は促した。

「貴家の第三皇女でローゼンブルク地方総監のセシリア様がファーレンハイト封魔国王太子の私と結婚することが、一番の良策かと思います。」ガイウスはしれっと答えた。

 その答えに、その場にいた皆が噴き出してしまった。

「わかりました。お望み通り、取り計らいたいと思います。セシリアは、どう思うかな。」

 教皇は笑いながら聞いた。

「異存ありません。最良の策かと。」

 セシリアは笑いながら返答した。少し涙ぐんでいるようにも見えた。


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