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第1章:弑逆鬼神の髑髏杯 (2) 朱雀瑞鬼襲来①

「領主朱雀王様からの速達便があり、ハイト卿様へ感謝の意が記されていました。」

天鬼国新都を出発して3日目の朝、移動の馬車の中で外務副大臣が報告した。

「まもなく旧都です。先に旧都についた速達便を当方へ送り戻してくれたようです。封魔神器襲撃の首謀者はじきに解明できるだろうとのことでした。領主はことのほかお喜びのことだそうです。」

「我々も見くびられたものですね。この程度の罠にひっかかるとは。」ガイウスが答えた。

「領主が会談で公式に我々を招待したことで信じてしまったのでしょうね。とんだ狸親父ですな。これで、あの会談に参加し、晩餐会にも出席していた者の中に首謀者がいることが明らかになってしまったのですから。」と副大臣。

「それくらいの小芝居ができないと領主は務まらないんでしょうね。晩餐会でも話題に困ったらしく、自分の趣味の陶磁器コレクションの話ばかりしていましたよ。まあ、下手な話題を持ち出すと厄介なことになりかねないですしね。無事に公務を終えて帰国したら、お礼にハイランド磁器のセットでも送っておこうかな。」ガイウスは独り言のようにつぶやいた。

「わかりました。準備させておきます。ハイト卿様のお気遣いに先方も感謝するでしょう。」

「ありがとうございます。頼みます。」

「そういえば、ルキウスが晩餐会で浮かない顔をしていましたが、何か聞いていますか?」ガイウスは思い出したように尋ねた。

「なんでも、領主一族に知人がいらっしゃるらしく会いたがっていたのですが、都合で晩餐会を欠席されたとのことでした。」と副大臣。

「ほう、それは初耳だな。後で本人に聞いてみよう。晩餐会ではキレイどころに取り囲まれてまんざらでもないようだったのに。なぜか弟の周りにはいつの間にか美人が集まってくるんだよな。」

「そうですな。ランド卿はモテますからな。特に美人に。」副大臣も羨ましそうに言った。

「まあ、天性の美少年で明朗快活ときているからな、やむなしとしないといかんのだろうね。」とガイウスは若干意味不明な説明をした。

「やむなしとせんといかんのでしょうな。確かに。」副大臣も同様に意味不明に納得した感想を述べた。


そのようなやや意味不明なやり取りをしているうちに馬車は旧都城門の関所を通過し、大通りをいくつも曲がっていった。すると突如として深い堀と石垣に囲まれた城郭が現れた。旧都の一角を占める九条城には堀にかかった橋を渡った城門のから内部へと道が繋がっていた。一行は馬車のまま大手門を通り、何回かの直角な曲がり角を過ぎると、石垣と堀に囲まれた広場に出た。軍勢を集結させるための場所らしい。

「おかしいな、城門が閉まっている。」副大臣がつぶやいた。

確かに内部へ続く城門は固く閉じられており、上部の櫓に多くの人影が動く気配が見えた。

すると、通って来た道から武装した兵士が現れ帰り道を塞ぐとともに、城門の横の通用門から兵士たちが続々と現れ、石垣沿いに並ぶと盾を並べ槍を構えた。みな軽装ながら鎖帷子と陣笠で武装している。その様子をみるとローバック隊長の合図の下、特使親衛隊が馬車を背に取り囲み護衛の体制に入った。封魔神器護衛隊も同様に荷馬車の護衛体制をとった。

「次代様、囲まれました。彼らは城を守る城兵と思われます。いかがいたします?。」馬から降りたローバックが馬車の窓からガイウスへ問いかけた。同じく馬上で移動していたルキウスも馬をおり、馬車に駆けよって来た。

「私が出よう。武装していない副大臣は馬車で伏せていてください。すぐ攻撃してくるわけではないようだ。」ルキウスは軍装魔術マントを羽織り、魔術士帽を被ると、魔法杖を持って、馬車の外へ出た。

「兄上危険です。」大剣を構えたルキウスが叫んだ。


ガイウスが城門のほうを見ると、通用門から紅白の派手な巫女装束に二刀を背負った首領とみられる少女が現れた。肌も髪も真っ白で赤い瞳が輝いている。額に2本の角が控えめに突き出ているのが見えた。典型的な天鬼族の特徴である。

「お役目ご苦労様です。」白髪の美少女鬼はガイウスの正面まで来ると、口上を述べた。

「ただし、天鬼国国宝髑髏杯をお預けするには、タダというわけには参りません。その任にかなうかどうかお手合わせ願います。いざ!!」掛け声と共に猛烈な勢いで駆け出した少女は、それに気づいてガイウスを守るために前進してきた親衛隊前衛騎士の目の前でジャンプし、軽々と防御を超えると、空中で二刀を抜き放つと落下の勢いのままガイウスへ強力な斬撃を繰り出した。

二刀がガイウスを切り裂いたと思った瞬間、その姿は掻き消すようになくなり、代わりに大剣を構えたルキウスが二刀をがっちりと受け止め、鬼娘を弾き飛ばした。

「チッ、熱光学的迷彩か!!」

間髪を入れずに体制を立て直した鬼娘は、目にもとまらぬ速さで二刀をふるいルキウスへ連続攻撃を掛けた。ルキウスは大剣を巧みに操り、守勢を保ちながら確実に鬼娘の斬撃を防いでいく。刀と剣が弾きあう鋭い音が練兵場に響き渡った。

「エイッ!!」

気合と共に全力で叩きつけられた二刀をルキウスは受け止めると、次の瞬間大剣を引くと共に頭を突き出した。全身の体重をかけて刀を押していた鬼娘は急に支えがなくなり前のめりになったところに、もろにルキウスの頭突きを額にくらってしまった。

「ガッツーーーン!!」

ローバックも思わず顔をしかめるような大きな音が鳴り響き、脳震盪を起こした鬼娘はよろめいて刀を握ったままルキウスの腕の中で気を失ってしまった。


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