第4章:結アウレリウス戦役 (1) 封印城壁の間①
「イタタ。」
腰から石畳の床に落ちたガイウスは起き上がると、自分が落ちて来た上空の円形の穴を見上げた。
「うわわわっ。」
同じ穴から白い人影が落ちてくるのが見えたガイウスは、受け止めるために駆け寄った。受け止めることに間に合ったものの、落ちて来た勢いを受け止めきれず、ガイウスはまた、しりもちをついてしまった。落ちて来た人影はセシリアだった。セシリアを膝に乗せたまま上空を見上げると、穴は急速に閉じてしまい、浮かんでいた聖煌剣と闇刻盾はゆっくりと降下し、床のうえに着地した。髑髏杯はかたわらに転がっている。
セシリアは魔法流に引き寄せられた時の衝撃で気を失っていた。ガイウスは彼女をそっと床に降ろすと、軽く揺さぶった。
「ここは?」ゆっくりと目を開けたセシリアはガイウスを見、周りを見渡すと尋ねた。
「周りの感じからすると、タンタロスに飛ばされて来たようだね。」
ガイウス答えた。あたりを見渡したが、二人のほかには生物の気配はなかった。
「あ、ごめんなさい。私を受け止めてくれたのですね。」
自分がガイウスに介抱されていることに気づいたセシリアが言った。
「いや、君が落ちて来たので、とっさに受け止めたんだ。大丈夫。」
ガイウスはなんとなく照れて答えた。
「ありがとう。助かりました。」セシリアは少しはにかみながら答えた。
二人はお互い照れながら微笑みあうと、そのまま黙って周りを見渡した。
そこは、城の大広間のような場所だった。床も壁も石造りで天井も高く、かなり広い空間になっている。片方の壁は巨大な城壁の様になっており、よく見ると巨大な古代聖魔法紋章が刻まれている。反対側の壁には大きな木の扉があり、壁には明り取りの窓が穿たれている。建築様式がローゼンベルクの古代城に似ているが、圧倒的にシンプルな装飾になっていた。人工的な建造物であることがは明らかだが、非常に年代が古いことが見て取れた。今は先程の大騒動が嘘のように静まり返っている。
「まんまと、君の父上の策にはまってしまったようだね。」ガイウスは言った。
「ごめんなさい。こんなことになるとは思わなくて・・・。」セシリアはうつむいた。
「まあいいさ。その報いにセルシウス聖撰国は、大切な臨席天使で聖女であるセシリアを失ったのだから。仕方ないよ。」ガイウスは言った。
「そんなことより、これからどうするか、だな。少しここを調べてみよう。立てるかい?」ガイウスは立ち上がると、セシリアを抱き起した。
二人はまず真っ先に聖煌剣と闇刻盾の所へ行き、状態を調べた。どちらも先ほどのエネルギーを放出しきっており、冷たく横たわっていた。しかし、傷や破損した箇所は全くなく、鋭い輝きを放っていた。ガイウスは聖煌剣を鞘から抜いて刃を一通りチェックして、一振りしてから鞘に納めると背中に背負った。今度は闇刻盾を取り上げると、漆黒の表面をチェックした後、ひっくり返してみた。するとそこには平たい包みが括り付けられていた。
「ああ、教皇様は用意周到に準備なされていたのだな。」
包みを開けると携帯食料や野営道具、救急箱など行軍に必要なものがコンパクトにまとめられていた。
「ありがたく、使わせてもらおう。」ガイウスは言った。
包みに気を取られていたが、闇刻盾の裏面を改めて見て、ガイウスは息を飲んだ。
「これは、古代聖魔法紋章!?」
闇刻盾の裏面は白く輝き正十字とシンボルアイテムが刻まれていた。黒光りする表面の古代闇魔法紋章と対をなすデザインとなっており、どちらが表面でもおかしくない作りになっていた。
セシリアは胸元からペンダントを取り出すと裏を返してガイウスに見せた。裏面は白く光っており、闇刻盾と全く同じデザインになっていた。
「理由はわからないけれど、闇刻魔法と聖煌魔法が表裏一体となっているわ。」
「何か意味があるのかもしれないね。後でよく調べてみよう。」
ガイウスは言うと闇刻盾を左肩に背負った。
続けてガイウスは髑髏杯を拾い上げ、傷が付いていないことを確認して、丁寧に上着のポケットに入れた。
二人は巨大な壁に描かれた古代聖魔法紋章に近づき、よく眺めてみた。するとその下に文章が刻まれていることが分かった。古代聖魔法ルーン文字である。
「この地を封印す。決して封印を解くことなかれ。」ガイウスが読み上げた。
「シンプルすぎて何のヒントにもならないな。ただ、この結界は古代の聖魔法術士達が構築したものだということはわかるね。非常に強力で、内側からでも簡単には破れそうにない。」ガイウスは言った。




