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第3章:セルシウス教皇の策謀 (3) 二人きりの探検隊①

 二人は並んで開かれた扉の中に慎重に進んだ。


 扉の中に姿が飲み込まれた、と見えた次の瞬間、二人の姿が扉からにゅっと現れた。

「うん、大丈夫だ、普通に帰れる。安心して進もう。」

 ガイウスが言った。セシリアがうなずくと、二人は再度扉の中に入って行った。


 分厚い壁を通り抜けると、大広間になっていた。古い城館らしく窓が小さくガラスも曇っており、中では薄暗く差し込む光線が空気中に漂う埃に反射されて鈍く光っていた。二人が大広間の入口に敷かれたカーペットに足を踏み入れた途端、壁に並べられた松明がぼおっと燃え始めた。魔法力に反応した仕掛けらしい。松明の明かりに照らされて、部屋の真ん中にそびえる大きな塊の姿が浮かび上がった。それは、どうやら古代の王の石像らしく、軍装をして剣を腰に提げ、右手を挙げて彼方を指さしている。足元には巨大な狼の像があり、王の石像はその狼を足で踏みつけて抑えている格好をしていた。


「これは、この城を立てた初代の王だろうか?。」ガイウスはつぶやいた。

「セルシウスの古代神話に神狼フェンリルを倒して建国した王がいたとの話があります。きっとその逸話を物語っているのでしょう。」セシリアは答えた。

 二人は顔を見合わせた。

「非常に危険を感じます。準備はいいですか?」ガイウスは声をかけ、魔法杖を構えた。

「大丈夫です。行きましょう。」セシリアも身構えた。


 二人はカーペットから石畳の床へ一歩踏み出した。するとギシギシと石の擦れる音がした。あたりを警戒しながら二人がゆっくりと石像に近づいてゆくと、音がだんだん大きくなっていった。石像の足元の銘文が読めるほどの距離に近づくと、急に像の足元にいた狼の石像が大きな咆哮を轟かせて立ち上がった。

「くるぞ。防御魔法を。」

 ガイウスはセシリアを庇う様に前に立ち、魔法杖を突きだして攻撃の構えをとった。

「ええ。中位聖魔法(Middle Class Holy)、詠唱(Spell)、神聖防護(Magical Protection)!!」

 すかさずセシリアは呪文を詠唱し、二人を包む半透明の半球を作りだした。

 石像狼は台座から降りると、足を引きずりつつゆっくりと二人に近づき、前足で二人を叩き潰そうとした。前足の攻撃を後退してよけると、ガイウスは攻撃に転じた。


「中位闇魔法(Middle Class Destruction)、詠唱(Spell)、火砕溶岩流(Pyroclastic Flow)!!」

 魔法杖の先端からほとばしり出た溶岩の塊の奔流が石像狼の前足を直撃し、溶かしながら砕いていく。しかし、それをものともせず、石像狼は二人の方へ前進してくる。その攻撃をかわしながら、断続的に魔法攻撃を繰り出し、ガイウスは着実に石づくりの巨体を砕いていった。攻撃を受けて半分ほどになった石像狼はさすがに動けなくなり、足をむなしく動かすだけとなった。


 ガイウスはまだ動きを止めない像の残骸に近づくと、とどめを刺そうとした。

「危ない、ハイト卿」

 その瞬間、後ろから石造りの剣がガイウスめがけて振り下ろされた。いつの間にか狼を足で押さえつけていた古代の王の石像が動き出し、剣を振りかざして襲い掛かってきたのだった。振り下ろされた剣は、セシリアによって張られた防御バリアに弾かれて、大きく跳ね返った。

「中位闇魔法(Middle Class Destruction)、詠唱(Spell)、中性子線奔流(Pulsar Burst)!!」

 振り向きざま、ガイウスは魔法攻撃を王の石像へ放った。

 魔法杖から放たれた光線は、王の石像に当たると大爆発を起こし、石像の全身を吹き飛ばした。爆風で飛び散った石像のかけらがセシリアの聖魔法バリアに当たり跳ね返っている。


「想定以上の破壊力だ。むっ、ひょっとすると王の石像は聖魔法属性なのか?」

 二つの石像のとどめを刺すと、王の石像の残骸に近づき、ガイウスはそのかけらを拾い上げて、慌てて放りだした。

「そのようですね。私の張った聖属性バリアを弾いていましたから。」

 ガイウスの後ろにピッタリと付いて来ていたセシリアが言った。

「闇属性と聖属性のダブル攻撃で来るとは考えたものだ。聖魔法術士のあなたがいて助かりました、セシリア皇女様。あ、でも戦闘中は私のことを「ガイウス」と呼んでください。「ハイト卿」だと呼ばれ慣れていないので咄嗟に判断できないので。」ガイウスは言った。

「わかりました、ガイウス。では私のことも「セシリア」と呼んでください。」セシリアは返答した。

「う、わかりました、セシリア。では、この部屋を調べてみましょう。」


 二人は石像の残骸を避けて、像があった台座に近寄ると銘文を見てみた。

「これも古代ルーン文字で書かれている。「古の王、神狼を制し魔王となる。」ととあるようだ。やはり伝説は正しかったのだろうね。」ガイウスは言った。

「何か、紋章のような印が刻まれているわ。なんでしょう?」

 セシリアが銘文の刻まれた銘板の横を指さした。

「うーん、ファーレンハイト封魔国の国章に似ているけど、もっと複雑で古風な感じだな。原始闇刻魔法紋章だろうか?」

 ガイウスは、用心深く魔法杖で紋章に触れてみた。

 そのとたん、壁の松明の明るさが増し、部屋の前後でガチャリと大きな音が響き渡った。


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