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第2章:邂逅への道程 (2) リリエンベルク辺境伯①

 トリビシを出発してから3日たち、一行はセルシウス聖撰国国境を越えて入国を果たした。入国審査や馬や食料、物資の補給に数日費やした後、皇都セレスブルクへ向けて出発することが出来た。


「きぃー、【金貨】のプリンスを止めているのは誰なのよ!!。クイーンを出せないじゃないの!!。後もうちょっとなのに。」ふくれっ面をして瑞鬼がメンバーを見渡した。

「いやいや、【剣】の3は持ってるけど【金貨】のプリンスは僕じゃないよ。」ルキウスが慌てて否定した。

「じゃあ、なによ。あなたが止めてるんじゃないでしょうね、副大臣。なんだかんだ言って外交官なんてみんな腹黒いんじゃないの。」瑞鬼は息まいた。

「滅相もない。そんな外交事案の種になることなんて、できませんよ。」副大臣は大汗をかきながら否定した。カードゲームの人数が足りないので、無理矢理7ならべに参加させられてどぎまぎしている副大臣であった。

「君たちさー、基本学校の修学旅行じゃないんだから、こんな低レベルの戦術で大騒ぎしないで欲しいな~。」ガイウスが余裕の表情でにやにやしながら皆を諫めた。

「戦術戦術ってウザいのよ。たかだかカード1枚だせば済む話なのに。やなやつ~。」瑞鬼が毒づいた。

「まあまあ、ゲームなんですから、落ち着いて。」大汗をかきながら副大臣がなだめた。

「でもさ、さっきから、【盾】ばっかり進んで、【十字】が進んでないよね。だれか止めてるんじゃないの。」ルキウスが空気を読まない発言をしたため、さらに混乱に拍車がかかり、カードゲームの行方は混沌とするのであった。


「そろそろセルシウス聖撰国国境の町リリエンゲートに着きます。そこから州都リリエンベルクへは1日の距離です。」馬車の窓越しに涼しい顔でローバックが声をかけた。

「なによ、州都までまだ距離があるじゃないの、もう一勝負よ。!!」結局パス2回でビリが決定した瑞鬼がいきり立って言った。

「まあまあ、熱くなりなさんな。まだまだ時間はあるんだから。」余裕の口調でガイウスが煽った。

「そろそろ国境ですから、私は役目に戻らないと…。」副大臣が逃げ出そうとする。

「いやいや、国境は通過するだけだから、副大臣は出番がないでしょ。」ルキウスがクソ真面目に反論し、またしても混沌に拍車をかけるのであった。


 セルシウス国境の町リリエンゲートには確かに国境警備と旅行者の入出国手続きのための最低限の設備しかなく、物資の補充もそこそこに、一行は州都リリエンベルクを目指して出発した。

「副大臣、リリエンベルクの情勢についてブリーフィングをお願いしたいのですが。」午後の政務が一段落するとガイウスは副大臣に尋ねた。

「リリエンベルクは皇都セレスブルクに次ぐ第二の規模を誇る都市です。支配する地方総監のリリエンベルク伯は古い家系をもつ貴族の一族です。当主のフランツ・マクシミリアン・リリエンベルクは老獪な政治家でセルシウス教皇会議のメンバーでもあります。リリエンベルク地方は森林が多く農作物には恵まれませんが鉱物資源が豊富で、工業生産は他の地方から抜きんでていて比較的豊かと言われています。今回我々は通りませんでしたが、南のグレゴリオ公国と接しており密かに連携しているとの噂が絶えません。」副大臣は説明した。

「聖撰国選挙でセルシウス公国と覇権を争っているというグレゴリオ公国ですか?。」ガイウスは尋ねた。

「その通りです。」副大臣はうなずいた。

「大陸のこの辺りは国と言っても貴族領の集まりなので、比較的合従連衡が起こりやすい土地なのです。グレゴリオ公国も一枚岩ではなく、地方伯の連合体であり、一部はリリエンベルクと手を結ぼうとしているようです。」

「なるほど。」ガイウスはうなずいた。

「リリエンベルク伯の嫡男のマルクス・マクシミリアン子爵は自身の聖騎士としての能力が高いこともあり、なかなかの強硬派でリリエンベルクを中心とした政治体制の再編を目指しているとの噂もあります。今回の件で何か動きがあるやもしれません」

「副大臣がそこまで言うということは、何か情報を得ているということですかな?。」ガイウスはさらっと聞いた。

「いえいえ、我々外務省の大使からの報告に準じているだけです。ただ、これから現地に乗り込むので、用心に越したことはないかと。」副大臣は相変わらず(芝居かもしれないが)慌てたように否定した。

「わかった。気に留めて置きますよ。有難う御座います。」ガイウスは王太子ではあるが、臣下でも実績ある者には丁寧な物言いを心掛けていた。傲慢は身を亡ぼすと父王から教わっていたのだ。


 リリエンベルクは辺境にありながらも栄えた都市だった。総監府の宮殿は壮麗で、領主の財力を物語っていた。宮殿前の広場に面してゴシック建築の教会、地方議事堂、地方行政機関や図書館等の建物が立ち並び、行き交う人々で賑わっていた。特にリリエンベルクは手工業が盛んで鉱物資源をふんだんに利用した武器や魔法具、金属製品の一大生産地となっていた。そんな製品を商う大小の商店が工房が立ち並び、商人や職人が賑やかに行きかう街並みを目で追いながら、ガイウス一行は総督府宮殿に乗り入れた。


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