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序章:アウレリウス戦役の終わり(1)

「ドドォォーーーン!!」

闇刻魔法術士たちの攻撃魔法の集中砲火が呑龍に命中し、最凶を誇る巨大魔法龍の半身を吹き飛ばした。

「今こそ、魔法騎士隊の総力を集結せよ。我に続け!!」

国王ファーレンハイト15世の檄と共に装甲魔法騎士隊が総攻撃をかけると、翼を切り裂かれ内臓をはみ出させた呑龍は必死の抵抗を試みた。騎士隊の激闘により呑龍の巨体が倒れ、首が地面について動かなくなったころ合いを見計らい、国王が聖煌剣でとどめを刺すため呑龍の頭に駆け寄った。その瞬間、呑龍は突然口を開けて炎を国王へ吐きかけた。国王は咄嗟に盾で石化炎を防ぎ、収まった瞬間に呑龍の目に聖煌剣を突き立てた。

「グォォォーーーーッ!!」

呑龍は断末魔の叫びをあげながら灰となって砕け散って消滅していった。

「やったぞ!!。ついに弑逆鬼神の化身、呑龍を倒したぞ!!」

勝利を喜ぶ歓喜の声があたりを包んだが、かき消すように悲痛な叫びが起こった。

「国王様、ご無事ですか!!」

国王は苦しげに笑顔を見せ片手をあげると、自身が無事な姿を軍団に見せるために振り返って手を振ろうとした途端に、足を取られて倒れこんでしまった。側近の騎士に肩を借りながら起き上がった国王を見た軍団兵たちは息をのんだ。

「国王様の足が石化している!!」

動揺する兵たちの前で、国王は笑顔を作り、聖煌剣を振り上げ、声を張り上げた。

「皆の者、私は大丈夫だ。諸君らの献身的な努力・活躍のおかげで、見事弑逆鬼神を打ち倒し、封じることができた。危機は去った。祖国へ凱旋しようではないか!!」

「オォォーーーー!!!!」

この国王の演説を聞き、兵たちは勝鬨の歓声を上げると、魔物が落とした魔石と、敵を打倒した武器を手に、負傷者を助けながら前線宿営地への帰還を始めた。


ローバックは神狼の獣身のまま国王に近づくとその背に乗せて歩きだした。

「すまない、フェンラント隊長。」

「獣人の身なればこそ可能なことです。お気になさらずに。」

しばらく歩いてから、ローバックは尋ねた。

「次代様を先に国にお返しになったのは、早計だったのでは?」

「いや、これで良かったのだ。ガイウスを危険にさらすわけにはいかなかった。彼にはやることがあるからな。これは我々の戦いだったのだよ、ローバック。」

「そういうものでしょうか?」

「うむ。これで、否応なしに彼に任せるしかなくなったがね。」

「…。」

「フェンラント隊長、君も彼を助けて行って欲しい。」

「御意。お気に召すままに。」

「ありがとう。恩にきるよ。」


アウレリウス戦役が終了し、国王が凱旋すると王都ドムスブルクは祝勝ムードに包まれた。長かった戦役が終わり平和が訪れると共に、戦利品輸出による景気回復が見込め、魔物による略奪・破壊も治まり、平穏な日常が訪れるであろうと皆感じていたのであった。国王の怪我も凱旋式に出席できる程度であり、王国の最高水準の闇魔法治療をもってすれば心配する程ではないと思われた。


「それでは、我々二人がセルシウス聖撰国まで持参するということですね。」

凱旋式の熱狂が冷めやらぬ日の午後、国王の執務室に呼ばれた王太子ガイウス・アウレリウス・ファーレンハイト16世はその瘦せすぎの長身を緊張で少し反らせながらこう問いかけた。

「うむ。知っての通り我がファーレンハイト封魔国は、魔界を封じる位置に建国されている。代々魔界封じの防具である封魔神器闇刻盾「アイギス」を国宝として受け継いできたが、アウレリウス戦役の魔界掃討作戦を始めるにあたり必要となる聖煌剣「ラグナロク」をセルシウス聖撰国から借り受けるため、交換条件として先方へ貸与していたのだ。」

国王がそう説明すると、次男であるルキウス・アウレリウス・ハイランドが口をはさんだ。

「なぜ交換条件でないといけないのですか?。魔界掃討は全世界の平和に必要なことなのだから、無条件で貸してくれてもいいでは?。ましてや今回は鬼神退治の難行があったのだからなおさらですよ。」

「封魔神器の威力は空前絶後なのだよ、ルキウス。それを一国で二つも保持するとパワーバランスが崩れてしまうのだ。エウレカ大陸近隣諸国で封魔神器を保持しているのは、わが国とセルシウス聖撰国のみ。神器を独占してしまうと明らかにわが国が警戒されてしまう。また、維持するにも膨大な魔法力を消費することにも事実だ。」

「我々だけに魔界対策を押し付けておいて、勝手なもんだよな~。」

「まあ、何事もバランスが大事だからな。ルキウス。」とガイウス。

「おお、魔法術に全振りの兄上もバランス感覚に目覚めましたね。まあ、魔法術と剣術のバランスなら私にお任せください。魔法剣の試合で最近は名人にも3本のうち2本はとれるようになりましたから。王国一の闇黒魔法術士で、王立高等魔術大学院の長老より強力な魔法を駆使する兄上にはまだ届きませんが。」大きな碧眼をくるくるさせながら語るルキウスであった。


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