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春嵐の鳥

作者: 池畑瑠七

思いもよらぬ春嵐の朝


仕事へ向かう 信号待ちのわずかな暇

車体は風に押され ビューッという風切り音の度に

揺れる 揺れる

思わずハンドルを握りしめる


かろうじて視認できる赤い灯火も

目の前で ゆらゆらと揺れ続けている

ますます激しく叩きつけてくる雨粒で

フロントウィンドーは

マジックミラーを覗いたかのように

景色が透明に流れ 歪む


その流れ落ちる景色の 暗い空低く

一羽の小鳥が突然 視界に入り込んできた

黒い鉛筆で線を引くみたいな航跡で

飛んでいく


えっ、こんな酷い嵐の中を!?


土砂降りの雨に打たれ 酷い強風に煽られ 

何度も何度も 押し流されながら 

それでも 必死に

必死に 小さな翼を羽ばたかせ

もがくように 向こうの空へと進んでいく

もしも風に巻かれ 地面に叩きつけられたりしたら

命がないだろうに


どうしてきみは こんな日に 飛んでいるの

ほかのみんなは 森の巣で羽を休め

雨を凌いでいるだろうに

何故

何故きみは 命を懸けて 飛んでいるの

何処に行こうとしているの

豪雨のさなか 餌を探しに出たきみを

待っている ヒナがいるの


あんな小さな体で

自らの翼だけを頼りに 風に抗い

命がけで飛び行く彼の姿に

思わず胸が 目頭が 熱くなった

「無事に辿り着けよ!」


今は穏やかに 春の星座が煌めく夜空だ

彼は 目的地へと 無事に到着できただろうかな

あたたかい巣で 過ごしているだろうかな


明日は隣の林から 向かいの原っぱから

きっと沢山 キミたちの嬉しそうな囀りが

響くことだろう





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