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小妖精に転生したら魔王のペット(友達)になりました  作者: 須野 リア


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第128話「姉ちゃんガンバ」

後日。私はちょっとした応接間のような部屋で、ユウナちゃんたちと話せる場を設けられていた。

 アルベヌはいない。増えていく書類を片付けるとのことだった。

 ちなみに、この部屋の扉はジャスティアさんが警護してる。


 騎士団長をこんな所で警備させていいの?


 いやよく考えたらレナルさん除いた騎士団数名も私が喋ることは知っているけど、ガッツリ転生者だって説明してはないんだよね……何となく察されてそうな気もするけど……

「ホノカさん、大丈夫ですか!?」

「消えかけたって聞いて心配したんだぞマジで!」

 

「大丈夫だから落ち着いて……」

 

 二人が部屋に入ると同時に、セシリスさんが膝上に持つ簡易な鳥籠に入っている私に向かってユウナちゃんとコウヘイくんが声を上げて勢い良く近づいてくる。

 私が顔の前で両手を振り苦笑を見せると同時に、セシリスさんが呆れたような疲れたような息を吐いていた。

「お前ら落ち着け。ホノカさんは無事だから。

 とりあえず座れ」

 言葉に応えるように2人が大人しく向かいのソファに腰を落ち着けると、私入りの籠をセシリスさんが置いて扉を開けてくれる。

「えーと……なんかめちゃくちゃ心配してくれてたみたいで……」

「カラドメイル騎士団長から聞いてびっくりしたんですからね!」

「俺は宰相の兄ちゃんから」

 

 ジャスさんは予想はしてたけどゲイルさんまでか。何言ってくれちゃってんですか。

 

 私が思わず肩をすくめると、セシリスさんが私の背中を突いてくる。

 そちらを振り向けば、少し怒ってるような彼の顔が見える。

「ホノカさん。言っとくけど余計なことでもねぇからな?

 俺たち一応異世界組だから繋がりがあるし、転移者のこいつらも除け者にできないって騎士団長と宰相様の配慮だよ」

「……それ言われると何も返せないよセシリスさん……」

「とりあえず教えてくれよ姉ちゃん。禁足地? で何があったんだよ」

 コウヘイくんの言葉に私は3人を改めてぐる、と見回してから。聖域でのことをかいつまんで教え出す。

 そうして、初めにセシリスさんが頭を抱えていた。

 

「創造神タチ悪いって……なんだよホノカさんの転生理由……

 別に言う必要なくねぇか!?」

 

「いや、まぁ、アルベヌがフォローしてくれてるし、なんだかんだ創造神様の望む方には行ってるみたいだし……?」

「それでも酷いですよ。この世界の言い伝えみたいなこと考えたら……ただの罪悪感から、だなんて」

「身勝手にも程があるでしょ。いやでも神様だからしょうがねぇの?」

 セシリスさんの怒声に落ち着いてと私が彼の前に飛んでヒラヒラと手を振っている最中に、ユウナちゃんとコウヘイくんも言葉を繋げていく。

 

「まぁとりあえず、そんな話の後で帝国が狙うものの話になりまして……禁足地には何も無いことが分かったんだけど……」

「何も無いのになんで姉ちゃんが消失なんてことになんの?」

 

 ズバッと食い気味に聞いてくるコウヘイくんに、私が言葉に詰まって中空に留まってしまえば。セシリスさんが顔をずいっと寄せてきた。圧がすごい。

「ホノカさん何したの」

「えぇっと……弱点になりそうなものがあったら隠すなりしときたいので教えてください……みたいなこと言った結果……その……私だったみたいで……」

 セシリスさんの顔から離れながら声を上げ、籠のてっぺんに腰を落ち着けてから彼らを見上げれば。

 思いっきり顔を引きつらせたり目を丸くしたりとしていた。

「は? え? 姉ちゃんがこの国の弱点?」

「……マジか……」

 コウヘイくんのぽかんとした声とセシリスさんの愕然とした声に私がなんとも言えない笑みを浮かべていれば、ユウナちゃんがそこでハッとした顔をする。

 

「陛下ってやっぱり、コウサキさんが好きだったんですね」

 

「やっぱりって何!?」

「いえ、だってその……執着? といいますか、なんかすごい感じがしたので……」

 私の言葉にユウナちゃんが言葉を選びながら言ってくるが、その内容に私は首をかたむけつつ、確かに執着といえば執着されてた気がしないでも、と考えて。

「……楽しいと思える友達だからって言われてはいたけど……?」

「……あの時の目は友達の範疇超えてると俺でも思うぞ……?」

 私の言葉にセシリスさんが苦い顔をして返してくる。

 あの時ってユウナちゃんたちと改めて顔合わせした日だと思うけど。

 創造神様から見せて貰ったあの顔思い出すと範疇は確かに超えてる気がしないでも……

 思い返して顔が熱くなる。

「……姉ちゃん顔赤いっぽいけど?」

「っ! な、なんでもないなんでもない!!」

「……あ、これは脈アリ? アリだよな? 体格差えっぐいけど」

「セシリスさん、こういうのに体格とか関係ないんですよ! 確かにすごいけど!」

 

「待って待ってセシリスさんもユウナちゃんも激しく待って……!」

 

「激しく待ってって……何言ってんの姉ちゃん」

 コウヘイくんの冷静な返しに私は頭を抱えるしかない。いやほんと何言ってんのか自分でもわかってない。混乱がすぎる。

 

「……その様子だと既にプロポーズか告白か、されてるっぽい?」

 

 セシリスさんの言葉にビク、と身を震わせてしまう。

 私のそんな様子を見て、コウヘイくんもようやっと理解したらしい。目を数度瞬かせ、私をギョッとした顔で見つめてくる。

 

「弱点ってそういうこと!?」

「コウヘイ鈍いよ……」

 

 コウヘイくんにユウナちゃんの呆れた声が投げられ、私はなんとも言えない顔で言葉を詰まらせる。

「……んで。返事どうするつもりなんだ?」

「……セシリスさん、他人事だからって楽しんでない……?」

「楽しんではねぇよ。身分差ヤバすぎるし。

 まぁ、ホノカさんが特殊なの知ってる俺は気にもしないんだけど、知らない奴らからしたら『なんで陛下と小妖精が!?』とかなる案件だぞ」

「そうですよね。私たちは知ってるから普通に応援できますけど」

「……国王と最下層の種だもんな。姉ちゃんガンバ」

 私が項垂れていれば3人からの言葉が降ってくるものの。

 

 応援は嬉しいけど返事に困ってんの!

 

「で……でもほら、帝国とのゴタゴタも落ち着いてないし」

「ホノカさーん? まさかとは思うけどその言葉で返事保留にしてる?」

 セシリスさんからの言葉に私はふい、と顔を背けて答える。

 少ししてから3人の口から重いため息が吐かれたような気がした。

 

「と、ところで話変えるんだけど!

 私たちが禁足地に言ってた時みんなは何してたの!?」

 

「……俺のとこは帝国への備えってことで医療品の補充を宰相の兄ちゃんから言われた」

「私は普通に訓練を積むように言われてました……」

「厨房の方は念の為の兵糧作りだな」

 

 無理な話題転換に乗っかってくれたことに感謝しつつ、私は胸をなで下ろして改めて彼らを見回した。

 

「そ、そうなんだ……にしても備えかぁ……」

 

 帝国が本格的に準備してる可能性もゲイルさんは考えてるんだろう。

 私が考えてなかっただけで、アルベヌも多分考えてたことなんだろうと思う。 

「帝国は何かしてくるかなぁ……あれからなにもないけど……」

「あの襲撃以降私たちは何も聞いてないので……」

 私の呟きにユウナちゃんが答え、コウヘイくんもそれに頷いて返してくれた。

 それからはユウナちゃんとコウヘイくんの訓練や仕事の話を聞いたりしてほのぼのと会話が続いていたのだが。


「――で、結局。話逸らしてきたけどどうする気なのホノカさん?」


 頼むからお話戻さないでセシリスさん……!


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