1
「ありゃ? ここは……」
「おお、目覚めたか少年よ」
俺は気付けば知らない場所にいた。
そして知らないお爺さんに話しかけられていた。
まるで雲の上にいるかのような空間。
お爺さんは白いヒゲを蓄え、天使の輪っかを浮かべていた。
「いきなりで驚いたかの。今回はお主にとあるミッションを託したいと思い呼び出したのじゃ」
「ミッションだって? そもそもあなたは誰なんでしょう。ここまでやってきた記憶もないですし」
「それは当然じゃの。なぜならお主は死んだからじゃ。地球での」
「え」
「そして儂は神じゃ。お主のおった地球を含めた宇宙を管理しておる。お主は地球で巨大なトラックに敷かれて死んだ。覚えておらんか?」
少し考え思い出した。
そうだ、俺は交差点を渡っていて、いきなり突っ込んできたトラックに撥ねられて……
「うう、あれ夢じゃなかったのか……」
「残念じゃったのう。まぁ人生そんなものじゃ。死に際は思ったよりもあっけない。安泰と思っておる日常の中で、ババを引くものは必ずおる」
「でも神様が一体僕に何の用が……」
「うむ、実はお主には異世界に転生してほしいと考えておる」
「異世界だって?」
「そうじゃ。実はその世界では魔王という凶悪な存在がおってのう。近年現れたそいつがかなり壊れた力を持っておって現代勇者らには少し荷が重いんじゃ。そこでお主には新たな勇者として、別角度から討伐をお願いしたいんじゃよ」
急な話だった。
「で、でも僕なんかが魔王を倒せるんでしょうか? こう見えても、僕は喧嘩すらしたことないんですよ」
「そこは安心せい。お主には最強のチート能力を授けようと考えておる。それにより魔王討伐は達成できるであろう。たぶん」
「たぶん?」
「うむ、付与する能力的には申し分ないと思うておるのじゃがの。なにせそれをどう使うかはお主にかかっておる。その世界には魔法という概念があっての。魔法はいくつかの属性に別れるんじゃが、お主にはその世界に存在する全ての属性の適性を最大限まで高めておいてやろうと思うておる。これが儂にできる最大限の心意気じゃ。世界で規定されている以上の力を付与すれば、人間なら確実に壊れてしまうじゃろうからの」
与えられる最強の力を俺が使いこなせるかどうかにかかってるってことなのか……?
「どうして僕なんですか? 僕なんかよりセンスのある奴は絶対にいると思いますが」
「まずはお主が若くして死んだという点。流石に死んだ者にしか頼めんからの。そして儂の神的超ハイスペック演算を行った結果、お主が一番魔王討伐の成功率が高いというデータが出た。それが理由じゃ」
「一体どんな演算なんだ……」
俺は自分自身に全く自信とかはなかった。
どこにでもいる普通の高校生だとしか思えない。
「というわけでどうじゃ、魔王討伐、頼めんかの」
そう言われ俺は考える。
魔王討伐……正直ちょっと想像がつかないし、不安はだいぶある。
しかし俺はもう地球で死んでしまった。
これはチャンスなのかもしれない。
本当なら無のままだった俺が、新しい人生を手に入れる……
「……わかりました。僕でよければやってみるだけやってみようと思います」
「そうか、それは助かる。では早速転生させようかと思うが、言葉が通じなければ不便じゃろうからの。異世界言語を自動翻訳できるようにしといてやろう。あとは大抵のことは魔法を使えばどうにかなるとは思うが……まぁお主ならうまくやるじゃろう。なにせ魔王討伐率七十三パーセントの逸材なんじゃからな」
「演算てやつか……てか思ったより微妙じゃねぇか……」
「それではそろそろ時間じゃ、お主の検討を祈るゾイ」
そうして俺の視界は光に覆われていった。
異世界、か。こんな展開になるとはな。
まぁ第二の人生だと思って、気持ち新たに生きていくか。
俺の意識は光に呑まれた。
俺は目を開ける。
空が青い。
どうやら一本の木の根元で寝ていたようだった。
上体を起こし周りをキョロキョロと見渡すと、一面に草原が広がっていた。
「そうか……俺転生したんだっけ?」
さきほどのことを思い出し納得する。
「ということはここが異世界、か」
俺はひとまず立ち上がる。
今のところ特に地球と変わった点は見受けられないが……
「ともかく俺は魔王を討伐しないといけないんだよな。でもいざポンと放り出されても何から手を付けたらいいかわかんないな……」
考えていても始まらないと思い、俺は歩き出す。
そういえば最強の力を持って転生したんだっけ?
魔法を使えるとかいう話だったと思うが。
「きゃああああああああ」
遠くの方で悲鳴が聞こえた気がした。
最初は気のせいかとも思ったが、何やら金属がこすれる音や獣のうめき声なども聞こえてくる。
間違いない、近くで何か起こってるんだ。
「とにかく様子を見てみよう」
一瞬無視しようかとも考えたが、流石に気になったので様子を見に行くことにした。
近づいてみると、一台の馬車があって、その周りを何匹かのサルのような生物が取り囲んでいる様子が目に映った。




