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第六話 浪人と妖刀と骸骨武者

江戸八百八町。天下は泰平、なべてこの世は事もなし。

そんな平和な町で、浪人と妖刀は座長から相談を受けていた。


「幽霊の辻斬りだって?」


座長が言うには、江戸では今、幽霊による辻斬りによる被害者が増えているそうだ。

その被害者が収容されている診療所に行くと、大勢の人が雑魚寝で寝かされていた。

運び込まれる頻度が高いうえに、一向に目覚めないのだという。


「座長さん、どうも見たところ怪我はしてねぇようだが、こりゃどういうことだ?」

「幽霊の攻撃というのは、身体に及ぶものではありません。精神に及ぶのです」


聞くと、被害者は怪我もなく、全員生きてはいるらしい。

だが、「霊力」とやらを斬られ、植物状態となっているとのことだった。


「幽霊の攻撃というのは、身体を斬らず精神を斬る。厄介なものなのです」

「しかしねぇ、俺だって幽霊とやりあったことなんぞねえぜ。倒せるかどうかも分からねぇ。なんで俺に話を持ってきたんだい」

「浪人さんの持つ妖刀であれば、それが為せます。加えて浪人さんの腕前を見込んでのお願いなのですよ」

「ふっふふふ、座長は解ってるな。だが俺は霊力だけじゃない。霊力も肉体も切り刻めるから妖刀と呼ばれるのだ。久々の戦いに血湧き肉躍る」

「おめぇは竹光だけどな」


その辻斬り幽霊の犯行には正確性があり、本所を起点に二日置きに次の場所へ、次の場所へと時計回りで移っているらしい。となれば、次の場所は日暮里だ。少し遠いが足早に向かう。


浪人と妖刀、座長と助っ人で来てくれた劇団員数人が手分けして幽霊を探す。

しばらく探し回ったとき、合図である笛の音が響いた。発見したのだ。


浪人と妖刀は急いでその笛の音の場所へ向かった。


現場に着いてみると、斬られて倒れている劇団員と、甲冑を着て刀を持った骸骨がいた。凄い気迫だ。とんでもない殺気を感じる。座長が少し遅れて到着した。


「これは…まずいですね。悪霊化してしまっている。浪人さん、お願いできますか」

「応。もともとこのために呼ばれたからな。きっちり片ぁつけてくるぜ」

「妖刀さんで相手を斬ることが出来れば、悪霊たる霊力を消すことが出来るはずです。そうすれば、あの骸骨武者を成仏させることが出来るかもしれません」


浪人が一歩前に出て八相で構えると、骸骨は上段で構えた。

少しずつ、お互いに間合いを詰めていく。


骸骨が上段から浪人の頭を目掛けて刀を振り下ろしてきた。

が、浪人はそれを妖刀で受け止め、そのまま弧を描き骸骨の刀を頭上へ弾いた。

返す力で袈裟斬り、さらにそこから横斬りで骸骨の首を刎ねた。


一瞬であった。一瞬で勝負はついた。


骸骨武者は光の粒になり弾けた。あたりを静寂が支配する。


「…成仏したんでしょう。貴方と戦ったことで、未練が吹っ切れたようだ」

「そうか。久々にこんなヒリヒリした立会をしたよ。お礼を言いたいくらいだぜ」

「ふははは、やはり俺の力は何者をも斬り倒すのだ。平服してよいぞ浪人」

「おめぇは竹光だけどな」


骸骨武者を倒したら、被害者が一斉に目を覚ましたそうだ。どうやら骸骨を倒したことで、斬られた霊力が戻ったのだろう。死者は一人もいなかったという。


それから数日後。


浪人と妖刀が報酬をもらおうと、座長の屋敷まで行くと、件の骸骨が着流し姿で道に水をまいている。驚いて立ち止まる浪人に気付いた骸骨が恭しく座長のもとへと案内してくれた。


「いやね、成仏の仕方がわからないとのことで、うちで用心棒兼雑用をやってもらっているのです」

「まぁ、確かにあの時みたいな殺気は感じねぇが…しかし驚いたねぇ。ちなみに骸骨がそうなった原因ってのは、わかったのかい?」

「そこはまだわからないのですが…まぁ気長に調べていきますよ」


「やはり、妖刀たる俺の力が絶大ということだな。おい浪人、俺を崇めても良いぞ」

「何度も言うけど、おめぇは竹光だけどな」


骸骨の淹れてくれたお茶は美味かった。

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