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第二話 浪人と妖刀と歌舞伎

江戸八百八町。天下は泰平、なべてこの世は事もなし。

そんな平和な町を、仕官を目指している浪人と竹光に憑いてしまった妖刀が歩く。


「お前、曲がりなりにも武士だろう。刀を売る武士など武士の風上にも置けぬわ」

「しょうがねぇだろう。当座の資金は必要さ。仕官が叶ったら買い戻すつもりだったんでぇ」


出来上がった傘を依頼主に渡し、賃金を手に入れた。これでしばらくは生活出来る。


帰り道、道中に派手な格好の男が、立て札を持って仁王立ちしていた。

曰く「腕に覚えのある者との腕試しを所望す」


これを見た妖刀は大喜びで浪人に腕試しを勧めた。

「これだ。こうやって武芸武術をさらに研鑽し、腕一本でのし上がっていくのだ」

「それは俺もそうしたいさ。しかしこんな平和な世の中じゃ剣だけじゃあ…」

「ええい、ごちゃごちゃうるさい。とりあえずあの傾奇者を倒すぞ」


しょうがないので相手にすることにした。


「あー、失礼。腕試し大歓迎かい? 竹光しかねぇんだが、良いかい?」

「応。俺は廻国修行をしている武芸者なのだ。俺は真剣を使うが、それでも良いなら頼みたい」


勝負は一瞬で付いた。浪人は元々剣技は一流。それに妖刀のチカラも加わっている。

なによりも、その武芸者が弱すぎた。額に一閃。真剣なら死んでいたところだ。


「もし、そこのお侍様」

突然横から話しかけられた。見ると歌舞伎一座の座長さんのようだ。


「今の立ち回り、見惚れてしまいました。もしよろしければ、数日間うちの一座の舞台に出てはいただけませんか。役者が急な病で寝込んでしまって…。お賃金も弾みますよ」

「はい。出ます。出させてください」


妖刀が勝手に了承し、浪人は舞台に登ることになった。


「なんでてめぇが決めてんだ、このすっとこどっこいが」

「うるさい。まずは目立つことが大事なんだ。とりあえずやってみろ」


脚本を読むと、どうやら浪人は立ち回り担当のようだ。これならまだ安心出来る。そして実際うまくいった。飛び入り参加の人間が、千秋楽には大歓声を得るまでになった。


座長さんも大喜び。帰り際、少なくない賃金と次の演目の脚本を貰った。

また興味があるのなら是非…ということだ。


家に帰ると妖刀が喋る喋る。

「おい、脚本をちゃんと読んでおけ。次の舞台でももっと活躍して目立つんだ」

「待て待て、おめぇ目的と手段がすり替わってねぇか。俺は仕官を目指してんだ」

「何を言うか。お前の今日の舞台はなんだ。次までに直しておかねばならないのだ」


「じゃあお前をあの一座にくれてやるから、そこで一所懸命やってくるか」


それ以降、妖刀は舞台のことを一切言わなくなった。

一人は心細いらしい。なんなんだこいつは。

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