その4
長いプロローグで申し訳ないです
暖かい目でみてやってください。
きっかけは幼稚園のときの集団登校だった。
歩いている正面から「カゼ」が吹き、前に進めないでいると引率の先生が全体を止める。
素直に「カゼが吹いた」と話しても信じてはもらえず、「幼稚園を行きたくなくてゴネている」ととらわれた。
そのさなか、自動車が歩道に乗り上げ、「ガアァーーーン」と大きい音を立てて街路樹にぶつかり、止まった。
園児はだれもケガはしなかったが、腰を抜かしたり、立ちすくんだまま泣いたりとあわただしかった。
それ以降も身の危険のときや、自分のミスが悪影響を及ぼすときにその「カゼ」を感じてきた。
誰に話しても信じてもらえず、理解されないままずっと生きてきた。
それなのに.....
人生で一番の衝撃からか、(それも二連発)なかなかココロが落ち着かない。対面の人物をみると、どう話そうか、あるいはオレが落ち着くのを待ってくれてるのかもしれない。
セムジュ
「大分落ち着かれたようですね。私からお話する前に、一つお尋ねします。扉の向こうで誰かと接触しましたか?本来は私専用の控え室でして、誰もいないはずで
すが」
ヤスオ
「まるで居酒屋のようでした。それにぃ、...あっ、すいません、ちょっと待ってください」
そうだ、なにか違和感があったんだ。
すっと立ち上がり、早足で事務室を出ていく。
貸倉庫の橫からおおむねの広さを確認する。
中に入った感じからすれば、あの扉の後ろにスペースはない。外になるハズだ。
だが居酒屋のような広さは確かに見受けられた。
うちの社長程ではないが、パニックに落ちそうだ。
フー、と一息ついて事務室に戻っていく。
セムジュ
「話しを続けても」と言われ、素直に頷く。
「横井さんが入られたあと、私も続けて入り、中の控え室で説明をするつもりでした。扉に近づこうとした私は弾かれ、アナタもすぐに出てきてしまいました。顔色がすぐれない様子でしたので、先程の推測に至ったわけです」
「ゴホン」とわざとしく、咳をついてから話しを続ける。
「あの漆黒の扉から先は「この世界」ではありません。先程外から確認されて、気付かれたとおもいますが、「扉の向こう」に「別世界」が存在するのです。」
ヤスオ
まあ普通なら信じられないし、「何言ってるの?」となる。
だか貸倉庫でない「空間」に足を踏み入れてしまったし、褐色の男達も見てしまった。
腑に落ちないが、納得はする。
あの「空間」にとどまっていれば、命の危険が迫っていたかも....
あっ、そうだった。
「あのカゼの正体はなんですか?」
セムジュ
「あれは私の住む「別世界」へ召還するかたを護る「導きの加護」です」