最終話 最強のレベル1
「アタシの全魔力を込めるわ! インフェルノ・バースト!」
「オレ様の渾身の一撃だ! ギガント・ブレイク!」
ミコトと猿田が、残った全ての力を振り絞る。
だが、攻撃する先はスピンフォームではない。
「ミキ! 頼んだ!」
「うん! みんなの想い、繋げるよ!」
ミキが両手を広げる。
ミコトの業火と、猿田の剛力が、光となってミキに集まる。
そしてミキは、その膨大なエネルギーを俺に向けた。
「スキル! コネクト・フルバースト!!」
ミキから放たれた光が、俺の胸に飛び込んだ。
「うおおおおおおおおおおおおお!」
熱い。
ミコトの燃えるような情熱。
猿田の揺るぎない闘志。
ミキの温かい優しさ。
全ての力が俺の中で渦を巻く。
ステータスの数値が異常な勢いで跳ね上がり、表示限界を超えて文字化けを起こしている。
『危険。危険。エネルギー臨界点突破』
スピンフォームが防御障壁を展開する。
だが、今の俺には関係ない。
「リストリクト……対象、スピンフォーム!」
俺は自身のスキルを敵に向けた。
本来は自分にかけるスキル。だが、全ての力を結集した今ならできるはずだ。
「お前のレベルを『1』に制限する!」
『警告。ステータス低下。レベル低下。レベ……ル……1……』
スピンフォームの輝きが急激に弱まる。
絶対的な管理者が、ただのレベル1の雑魚へと成り下がった。
「これが、俺たちの力だあああああ!」
俺は全力を込めて、キングコボルドの斧を振り下ろした。
255分の1の確率。
攻撃力倍加のエフェクトが、この土壇場で発生した。
ズドォォォォォォン!
スピンフォームは粉々に砕け散り、美しい光の粒子となって霧散した。
同時に、タワー全体を覆っていた不気味な気配が消え去り、天井が透けて青空が広がった。
戦いが終わり、数日が過ぎた。
スピンフォームの消滅により、『アセンション』は阻止された。
大国総理と建御雷神大将は失脚し、新たな政府によって異世界との平和的な共存が模索されることになった。
孤児院も正式に認可され、ミキは毎日嬉しそうに通っている。
あの時見せた幻覚ではなく、本物の子供たちの笑顔がそこにはあった。
俺たち4人は、学校の屋上で昼休みを過ごしていた。
「結局、ヒサシの本当のレベルっていくらになったの?」
ミコトがパンをかじりながら聞いてきた。
「さあな。あの一撃のあと、ステータス画面がバグっちゃって表示されないんだ」
俺は笑って答えた。
実は嘘だ。
表示はされている。ただ、数値が『Lv.1(リストリクト効果発動中)』となっているだけだ。
またレベル1に制限しているが、解除すればどうなるのか、俺にもわからない。
もしかすると、レベルという概念すら超えてしまったのかもしれない。
「まあ、ヒサシはヒサシだろ」
猿田が背中を叩いてくる。
相変わらず痛いが、心地よい痛みだ。
「うん。ヒサシ君は、私たちのヒーローだよ」
ミキが優しく微笑んだ。
俺は今でも公園でスライムを倒している。
近所の人からは相変わらず「スライム掃除屋さん」と呼ばれているし、学校の他の生徒からは「万年レベル1の最弱」と思われている。
だが、それでいい。
大切な仲間と、守るべき場所がある。
それだけで俺は、最強になれるのだから。
「さて、今日もスライム掃除に行きますか!」
「アタシも付き合ってあげるわよ」
「オレ様もな!」 「私も!」
俺たちは笑い合いながら、青空の下を歩き出した。
最弱から最強へ。
俺の物語は、まだ始まったばかりだ。
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