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第十九話 マゴニア会議

――第186回マゴニア会議 『ザ・タワー』最上階フロア――


 雲を突き抜けた塔の頂、外界とは隔絶された密室に、重苦しい空気が漂っていた。


「ふむ。ついにレベル100を超えてくる者が現れたか」


 円卓の上座で、大国おおくに総理が長い白ひげを指で弄りながら呟いた。その目は、好々爺の仮面の下で鋭く光っている。


「喜ばしいことではありませんか」


 漆黒の席に座るベルゼバブが、腕を組んだまま冷ややかに相槌を打った。


 テーブルを囲む者たちは、互いに不可侵条約を結びつつも、腹の底を探り合っている。

 人間界からは、大国総理と建御雷神たけみかづちのかみ大将。

 異世界からは、ベルゼバブと四天王たち。

 そして、テーブル中央に向けられた二つのモニターには、『ノード』と『スピンフォーム』という文字だけが無機質に表示されていた。


『人間界の統一から、現在は第二フェーズ「人類の進化」へと順当に計画は進行中です』


 『ノード』と表示されたモニターから、合成音声による報告が響く。


『人間界、異世界、そして我々第三世界の平和のために、粛々と計画を遂行してください』


 『スピンフォーム』と表示されたモニターから指令が下ると、プツンと画面が消え、会議は静かに幕を閉じた。


 ◇ ◇ ◇


 ベルゼバブの存在、そして未だ謎多き『ザ・タワー』の攻略。

 推奨レベル300を超える脅威に対し、とても俺一人では対処しきれない。

 だが、ミキの『コネクト』があれば話は別だ。俺の力を仲間に、あるいは仲間の力を俺に集約することで、人類の限界と言われるレベル40の壁を突破できるかもしれない。


 俺は昼休みの食堂に、ミキ、ミコト、猿田を集めた。

 そして、意を決して俺の能力について打ち明けた。


「れ、レベル257ですってぇぇぇッ!?」


 ミコトがガタッ! と椅子を蹴倒して立ち上がり、絶叫した。


「ちょ、ちょっと落ち着いて! みんな見てるから!」


 俺は慌ててミコトを制する。

 ただでさえ目立つメンバーなのに、ミコトの大声で食堂中の視線が俺たちに集中していた。


「あぁん? お前ら! 何見てんだコラァ! 見世物じゃねえぞ!」


 猿田が凄むと、野次馬たちは蜘蛛の子を散らすように視線を逸らした。


「ふぅ……これで話しやすくなったな」


 猿田は満足げに椅子に座り直した。

 こういう時のコイツの威圧感は頼りになる。


「いや、そういう乱暴なのはどうかと思うけど……まあいいや。とにかく、どういうことか詳しく話してくれ」


 猿田が身を乗り出してくる。

 俺は小声で、これまでの経緯とスキルの詳細を説明した。


 ◇ ◇ ◇


 放課後。俺たちは早速検証のために『びっくりダンジョン』を訪れた。


「ミキ、そしたら打ち合わせ通りに頼むぞ」

「ええ、わかったわ!」

「リストリクト! 対象、ミコト!」


 俺はスキルを発動すると同時に、ミキが『コネクト』で俺とミコトを繋いだ。

 俺の『レベルを1に固定する』効果が、ミコトに流れる。


――――――――――――――――――――


 華雅はながミコト 17歳 女 

 レベル:1


 HP:10/10 MP:10/10

 攻撃力:1

 耐久力:1

 速 度:1

 知 性:1

 精神力:1

 幸 運:1

 スキル:炎


――――――――――――――――――――


「な、なによこれ……体が鉛みたいに重い……」


 ミコトは自分の手を握りしめ、愕然としている。

 ステータスが極限まで低下した感覚に戸惑っているようだ。


「気をつけて! ゴブリンだ!」


 通路の奥からゴブリンが現れた。

 レベル1のミコトには強敵のはずだ。


「ナメないでよね!」


 ミコトは炎を纏った拳で、ゴブリンの攻撃を紙一重で回避すると、カウンターで顎を撃ち抜いた。

 一撃。ゴブリンは崩れ落ちた。


「嘘……レベル1でも倒せるの?」

「やっぱりミコトはすごいな。ステータスが下がっても、戦闘技術やセンスはそのままなんだ」


 レベル1でさえ、エリートはエリートだということか。

 俺のスキルとミキのサポート、そして彼らの才能が噛み合えば、とんでもないことができる。


 ◇ ◇ ◇


 それからの夏休み、俺たちはスライムとゴブリン討伐に明け暮れた。

 俺が考案した「レベル1状態で格上を倒す」レベリング方法を全員で実践したのだ。


 結果は劇的だった。


 ミキ  LV101

 ミコト LV125

 猿田  LV113


 三人とも、人類の限界を超えてレベル100の大台に乗った。

 そして俺のレベルは、ついに320にまで達していた。


 二学期の始業式。

 三人がレベル100を超えていたため、すぐに職員室へ呼び出されたのは言うまでもない。

 「どうやってレベルを上げたのか?」と問い詰められたらしいが、三人は口裏を合わせて誤魔化したそうだ。

 ちなみに俺は『リストリクト』でレベルを35に抑制したままで、今回は呼び出しを免れた。

 ミコト曰く、「ヒサシは最後の切りジョーカーだから、ギリギリまで隠しておくべき」とのことだ。


 そんなある日の昼休み。

 四人で食堂で話をしていると、頭の中にあのアナウンスが響いた。


 ウウゥゥゥゥゥゥ――ッ!!


『サーベイランス招集! アラート発令! アウトブレイク! アウトブレイク!』


 久しぶりの警報だ。


「夏休み明け初日に仕事とは、パンデミックも空気を読んでくれてるのかしら?」


 猿田がくだらない冗談を言ってニヤリと笑う。


「いくわよ! 特訓の成果、試してやるわ!」


 ミコトはレベル100を超えて初のアウトブレイクに、武者震いしているようだ。

 俺とミキも顔を見合わせ、飛び出した二人の後を追った。


 ◇ ◇ ◇


 俺たちは最前線へと招集された。

 場所は『ザ・タワー』の直上。

 これまでに無いほどの巨大な魔力反応がGCR測定で観測されたとのことだ。


「来たぞ!」


 雲を突き破り、巨大な影が高速で降下してきた。

 五つの首を持つ、伝説の竜。


――――――――――――――――――――


【ヒドラ】


 ・討伐推奨レベル:400

 ・スキル:高速飛行、五属性ブレス


――――――――――――――――――――


「推奨レベル、400……!」


 俺が数値を告げると、場に緊張が走った。

 レベル300のベルゼバブを超える強敵だ。


「腕試しなんて余裕はなさそうね……」


 ミコトの表情から笑みが消え、真剣な眼差しになる。


「へっ、相手にとって不足なしだ! オレ様の力を見せてやるよ!」


 猿田は強がっているが、その手は斧を強く握りしめている。


「ヒサシ……どうしよう」


 ミキは不安そうに俺を見た。

 個々の力では負ける。だが、今の俺たちには連携がある。


「大丈夫だ。ミキ、猿田の『黄金の鎧』とミコトの『炎』を、俺に渡してくれ!」


 俺の指示に、ミコトと猿田は一瞬だけ悔しそうな顔をしたが、すぐに頷いた。


「わかったわ! ヒサシ、決めなさいよ!」 「オレの最強の鎧だ! 傷一つ付けんじゃねーぞ!」


 ミキが二人からスキルを抽出し、光弾に変えて俺に撃ち込む。


「うおおおおお!」


 黄金のオーラと紅蓮の炎が、俺の体を包み込んだ。


 ヒドラの五つの頭が鎌首をもたげ、同時に口を開いた。

 炎、氷、雷、岩石、業風。

 五つの属性ブレスが、暴風となって俺たちに襲いかかる。


「関係ないッ!」


 俺は正面から突っ込んだ。

 猿田の『黄金の鎧』は、あらゆる属性攻撃を遮断し、ダメージを無効化する。

 灼熱も絶対零度も雷撃も、俺の体を傷つけることはできない。


「はあああああッ!」


 俺は炎を宿した剣を一閃させた。

 レベル320の身体能力と、ミコトの火力が上乗せされた一撃。


 ズパァァァァァン!!


 空間ごと断ち切るような斬撃が走り、ヒドラの五つの頭は、悲鳴を上げる間もなく粉々に吹き飛んだ。

 巨大な胴体が青い光となって崩れ落ち、空に美しい粒子が舞う。


「すげえな……」


 猿田が呆然と口笛を吹いた。


「ええ……。瞬殺ね」


 ミコトも言葉を失っている。


「アタシ達、四人の力だからね」


 ミコトは少し誇らしげに、俺の方を見て言った。


「ああ、もちろんだ」


 俺は剣を納め、仲間の元へと戻った。

 本当に、四人全員の力が合わさったからこそ、こんなにも簡単に勝てたんだと思う。

 俺たちは、最強のパーティーになりつつあった。

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