表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

第十二話 レベルアップ加速

 昨日の激闘が嘘のように、俺はいつも通り登校した。

 だが、教室の席に着くと、昨日までとは明らかに周囲の視線が違う。突き刺さるような注目度だ。


「ヒサシ君、よかったわね」


 隣の席に座るミキが、嬉しそうに話しかけてきた。


「天野ヒサシ。一応、前に出てきて挨拶しなさい」


 三年A組の担任が、冷ややかな声で言った。

 黒いスーツに一分の隙もなく整えられた髪型。いかにもエリート銀行員といった風貌で、眼鏡をクイッと上げる仕草には神経質さが滲み出ている。

 今までUクラスで見てきた、ヨレヨレスーツのやる気のない担任とは大違いだ。


「えーっと……一応、はじめまして。天野ヒサシです。特別に一人だけクラス替えで、今日からA組に入ることになりました」


 俺は教壇に立ち、ぎこちなく挨拶した。

 昨日の作戦でレベル35(偽装)の実力が公になり、最下位クラスからの異例の移動が決まったのだ。

 軍の作戦で功労者となった生徒を、いつまでも「戦力外」のUクラスに置いておくのは世間体が悪いという、大人の事情だろう。


「では、席に戻りなさい」


 担任の指示で席に戻ると、前の席に座っている猿田が背中越しに振り返った。


「……何かわからないことがあれば、オレに聞きな」


 ボソッと言い捨てると、すぐに前を向いてしまった。

 耳が少し赤い。猿田の奴、照れているのか?

 あんなに嫌な奴だと思っていたが、意外に面倒見がいいのかもしれない。


「では授業を始める。今日はGCR測定の原理について、数学的アプローチによる検知パラドックスの解説を行う」


 エリート先生が淡々と説明を始めた。

 黒板に書かれる数式は呪文のようだ。今まで自習ばかりだった俺には新鮮な光景だが、レベルが高すぎてついていけそうにない……。


 ◇ ◇ ◇


 久しぶりに「授業らしい授業」を受けて脳が疲弊した放課後。

 だが、日課のスライム退治は欠かせない。


 現在、一般的に知られている人類の最高到達レベルは40。

 世界にはそれ以上の実力者もいるかもしれないが、あの天才ミコトでさえ40からレベルが上がらず停滞しているのが現実だ。

 それに対し、俺のレベルは200。十分すぎる気もする。


 しかし、あのベルゼブブの存在が、俺の不安を駆り立てる。あんな化け物が、まだウジャウジャいるかもしれないのだ。

 そして何より、この街のどこからでも見える巨大なタワー。


 通称『バベルの塔』。


 元々は六十階建てのビルだったものが、異世界パンデミック第二波セカンドウェーブ後に変貌し、百八階相当の塔になったと言われている。

 周囲百メートル以内は完全に封鎖され、噂ではレベル40の冒険者でさえ、中に入ることすらできなかったという人類未踏の魔境だ。


「もっとレベルを上げる方法は無いものだろうか?」


 スライムを効率よく倒す方法(無限湧きダンジョン)を見つけて、レベルアップの速度は劇的に上がった。

 だが、レベルが上がるにつれて必要討伐数も増え、このままではすぐに頭打ちになる。

 『バベルの塔』に入ってみるというのも手だが、慎重には慎重を期したい。


 公園のスライムを片付けた後、『びっくりダンジョン』でスライムを機械的に討伐しながら、俺は知恵を巡らせた。

 もはやスライム討伐は、呼吸をするのと変わらない作業になっていた。


 今の俺は『リストリクト』でレベル1の状態だ。

 それなのに、敵の攻撃パターンが手に取るように読める。剣の使い方も熟練し、ほんのわずかな労力で敵を葬れるようになっている。


「……もしかして?」


 ふと、あるアイデアが脳裏をよぎった。

 スライムを次々と蹴散らしながら、仮説を立てる。

 今までやったことはない。リスクは高い。だが、もし成功すれば、一気にレベルを上げられる可能性がある。


「やってみるか」


 俺はダンジョンの2層へと降りた。

 そこはレベル2の魔物、ゴブリンで溢れかえっていた。


「リリース! レベル2(ツー)!」


 まずはレベル2に設定して小手調べだ。

 ゴブリンが棍棒を振り上げ、襲いかかってくる。

 俺はそれをヒラリとかわし、無防備な後頭部に剣を振り下ろした。


「ぐぎゃあああ!」


 ゴブリンは真っ赤な鮮血を噴水のように吹き出し、どうと倒れた。

 人間のような魔物が血を流す光景は、何度見ても気分のいいものではない。

 しかし、数秒と経たずに死体は飛び散った血と共に青い光となり、綺麗さっぱり消え去った。


「よし! ゴブリンも問題なく倒せる。もう少しこのまま戦って、対ゴブリン戦の動きに慣れよう」


 一体、二体、三体……。

 同時に二体、三体と囲まれても、冷静に対処してゴブリンを倒しまくる。


 ゴブリンはスライムと違って、所持する武器が個体ごとに違っていたり、体格にも差がある。人間のように個性があるのだ。

 たまにやたらと腕っぷしの強い個体も混じっている。


「ゴブリン討伐のコツ、だいたいわかってきたぞ。……いよいよ、実験開始だ」


 俺は深呼吸をして、意識を集中した。

 次は初めての試みだ。格上の相手に対し、あえてレベルを下げて挑む。


「リリース! レベル1(ワン)!」


 俺のレベルは1に制限された。

 身体が鉛のように重くなる感覚。ステータスが激減した証拠だ。

 通路の奥から、ゴブリンが一体、こちらに向かってくるのが見えた。


「よし! 来い!」


 ゴブリンが振りかぶった棍棒を、剣で受ける。


 ガギィィン!!


「くっ……!」


 重い! そして速い!

 試しに受けてみたが、ゴブリンの攻撃は受けるべきじゃない。

 レベル1の貧弱な耐久力では、一撃でも貰えば即死しかねない威力だ。


「やっぱり、レベル1でレベル2の魔物と正面から殴り合うのは無理があるな」


 俺は戦法を切り替え、ゴブリンの攻撃を紙一重でかわし、隙を見て喉元に剣を突き刺した。


 ガチンッ!


 硬い!

 レベル1の攻撃力では、ゴブリンの硬い皮膚に弾かれて、剣が深く刺さらない。


「ゴブリンって、こんなに強かったのか……。いや、俺が弱くなってるだけだが」


 そこからは死闘だった。

 十分ほど攻防を繰り返しただろうか。

 ようやくゴブリンの喉元の柔らかい部分に剣をねじ込み、絶命させることに成功した。


 ◇ ◇ ◇


 レベル1で格上のゴブリンを倒すのは無謀な挑戦だったが、数時間も戦い続けると、だんだんと身体が慣れてきた。

 スライム相手のようにはいかないが、一体三分ほどで倒せるようになってきた。


 その時、頭の中で待ち望んだ電子音が響いた。


『レベル201になりました』


 来た!

 俺はすぐさまステータスを確認する。


――――――――――――――――――――


 天野あまのヒサシ 17歳 男

 レベル:201


 HP:40085/40085 MP:36087/36087

 攻撃力:180

 耐久力:210

 速 度:220

 知 性:180

 精神力:139

 幸 運:150

 スキル:リストリクト(任意のレベルに制限するスキル)

     リリース  (リストリクトの効果を消して本来の力を発揮する)


――――――――――――――――――――


「よし! 思った通りだ」


 仮説は正しかった。

 レベル200から201になるためには、同格以下のスライムなら「次のレベルと同じ数」、つまり201体を倒す必要がある。


 しかし、レベル1の状態(格下)で、レベル2のゴブリン(格上)を倒すと、カウントの進みが早い。

 計算すると、100体倒した時点でレベルが上がったことになる。

 つまり、格上の敵を倒せば、今までの倍以上の速度でレベルアップができるということだ。


 来週からは夏休みが始まる。

 パンデミックが起きない限りは、一日中時間がある。


 俺はニヤリと笑った。

 この夏休みは、全てをレベルアップに費やすのだ。

【どうか下記をお願いします!】


○ブックマークへの追加。

○画面下の「☆☆☆☆☆」から評価


ぜひ!お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ