第90話 木箱の中身と魂の欠片
「これを使えば……」
「ええ。貴方の邪魔な存在を壊し尽くす事も容易いでしょう。少量であれば、貴方自身の『形』を破壊するような事もありません」
壊し尽くす……形、破壊……
凄く……いかにもな話をしていますね……
「………………」
今の会話とこれまでの会話から色々見えてきた私は、頭の中でそれを分析し、纏め始める。
と、そこで、
「も、もう少し近づければ見えるのに……」
なんて事を呟きながら、なんとか近づこうとするかりん。
……ここが限界と言ったのはかりんじゃないですか……
危なっかしいかりんは制止すべく、私は頭の中で分析し終えた結果――推測を小声で口にします。
「いえ……近づかなくても大丈夫です。これまでの会話を分析して大体わかりました。おそらく、あの木箱に入っているのは、魂の欠片を『一部分だけを取り込む事が出来るように加工した物』なんだと思います」
「えっ!? そ、そうなの!?」
器用に小声で驚くかりんに対して頷いてみせる私。
そして、そのまま続きの言葉を紡ぎます。
「無論、あくまでも私の分析に基づいた推測でしかないので、絶対というわけではないですが、自身の形を破壊するというのが、使いすぎ……多量に取り込むと、先日のように異形化してしまうためと考えれば、ほぼ間違いないのではないかと……。まあ、どういう風に加工したのかまでは情報不足で推測出来ませんが……」
「な、なるほど……。私が魂の欠片の存在を感じたのも、舞奈の言う事を前提として考えると納得がいくわね。って、話……というか、受け渡しが終わったみたいね……」
かりんが言う通り、私とかりんが話している間にふたりの会話が終わり、女性が司書さんから木箱――例の欠片を加工した何か――を渡されていました。
「……うーん、これはあの女の方を拘束して木箱を奪うのが妥当かしらね……?」
ふたりがその場から離れていくのを確認しつつ、そう告げてくるかりん。
さらりと、とんでもない事を言いますね……
「それ、一歩間違えたら強盗その他諸々でこっちが拘束されると思います……。警察に」
「警察なら透真がなんとかしてくれるんじゃないかしら?」
「してくれるかもしれませんが、さすがにちょっとどうかと……。まあ、とりあえず司書さんの方は学校にいるのがわかっているので、女性の方を追いかけましょう」
お店から出ていった女性の後を追いかけながら、
「拘束するのが駄目なら、このままあの女を追いかけていって、人の少ない場所に入ったタイミングで、私が極限まで存在感を薄くして掠め取るってのはどうかしら? 幽霊の仕業って事なら問題ないでしょ?」
「……う、うーん……問題なくはないですし、あまり褒められる行為ではありませんが、まあ……物が物だけに仕方がないといか、そこが落とし所な気もしなくはないですね……」
と、そう返す私。
さすがに、このまま放っておくというわけにはいかないですし、これ以上このやり取りを続けていたら見失ってしまいますからね……
「それじゃあ、頃合いを見計らって掠め取ってくるわ。あ、舞奈はこの場に居て」
そんな風に告げるなり、さっさと女性を追跡するように動き始めるかりん。
色々な意味で心配ではありますが、自力で隠形とやらが出来ない私が付いていくと、逆に見つかってしまう可能性があるので、ここは任せるとしましょう。
だから、かりんもこの場に居るようにいったのでしょうし。
……あ、っと……そうです。とりあえず透真さんにこの事を伝えないと。
そう思い、私はポケットからスマホを取り出しました。
何やら色々な意味で物騒さが増してきましたね……(何)
といった所でまた次回!
次の更新は若干空いて申し訳ありませんが、10月28日(木)の予定です。




