第88話 かりんと舞奈の遭遇
今回は舞奈視点です。
一方その頃――舞奈サイド
成伯さんに逃げられるとは想定外です……
まあ、逃げたくなる気持ちも分からなくはないですが……
今も着せかえ人形の如く、かりんに服をとっかえひっかえさせられていますし……
「うーん、あっちのも良い気がするわね……」
なんて事を言いながら服を眺めるかりん。
……個人的には何でもいいのですが、あまり適当すぎると、成伯さんに呆れられてしまいますし、少しは気にした方が良いというのは理解したので、これも仕方がないと思いましょう。
と、そんな事を考えつつ後ろで眺めていると、ふとどこかで見た後ろ姿の男性が視界に入りました。
……たしか……えっと……私の記憶が正しければ、成伯さんに校舎の案内をした時に、あの4階の非常扉が開いていた階段の所で、上から降りてきた先生……ですね。
今日は休みの日なので、このショッピングセンターに居てもおかしくはないのですが……どうしてこうも気になるのでしょう……?
何かを買いに来たという雰囲気ではないから……でしょうか?
「舞奈、これを――ってどうかしたの? 射抜くような眼差しというか……狩人が獲物の姿を捉えた時のような目をしているけど……」
なんて事を言ってくるかりん。
いつの間にか、そんな目をしていたようです。
「あ、いえ……あちらに学校の先生がいたもので」
「学校の先生……?」
私の説明にそう呟きながら周囲を見回し、そして、
「ああ、あそこの人?」
と、私の視線の先にいる人へと顔を向けるかりん。
「はい」
「あの人は司書教諭よ」
私の頷きに対し、かりんがそんな風に答えてきました。
司書教諭……。えーっと、要するに図書室の司書さんという事でいいですね。
「オカルト的な物が好きみたいで、私も良く話を聞いたり聞かせたりしたわ」
「オカルト……。私たちの学校の図書室、オカルト関連の書籍が多めなのは、あの方の影響なのでしょうか……?」
「影響っていうか、あの人の寄贈品が多い感じかしらね」
「ああなるほど、そういう事ですか」
「折角だから、挨拶くらいしてくるわ……って、誰か来たわね」
かりんが言う通り、その図書室の司書さんに近づく人がいました。
「……こう言ってはなんですが、随分やつれている人ですね」
「うーん……たしかに、幽霊より幽霊っぽい感じね」
なんて事を言うかりん。
……えっと……それはさすがに……と、思いつつその人の動きを観察する私。
「なんだか、妙に周囲を気にしているようですね……」
「そうね。まるで密会といった雰囲気ね。……あの人、未婚だと言っていたから、不倫とかではないはずだけど……」
「それはどうでしょう? 図書室の司書さんの方が未婚でも、あちらの方が未婚であるとは限らないですし……」
「それは……うーん……そうかも? ……って、なんで不倫前提の話になってるのよ……」
呆れた表情で、ため息交じりにかりんがそう言ってきます。
「……そ、それもそうですね……」
「で? 舞奈としてはあの様子、どう分析するのかしら?」
「……そう……ですね。何か……『危険な物』の受け渡し……な気がします」
「え? なにそれ……もしかして、アレなクスリとか銃とか?」
私の分析――推測に対し、若干引き気味にそう問いかけてくるかりん。
まあ、危険な物の受け渡しといったら、まずそれが出てきますよね……ですが――
「いえ、そういう感じではないのですが……。ううーん……上手く分析出来ませんね……。情報が足りません……」
「もう少し近づいてみる? そーっと」
そう提案してくるかりんに対し、私はしばし思考を巡らせた後、
「……そうですね。何か気になりますし……」
と、首を縦に振りつつ、そう返しました。
なにやら不穏な感じですが……?
という所で、また次回!
そしてその次の更新なのですが……申し訳ありません、少し間が空きます。
次の更新は……10月20日(水)の予定です。
ただし、その次からは元のペースに戻る予定です!




