第81話 雅樹の考え
「な、なんで俺がここに隠れていると分かったんだ?」
プランターの陰から姿を現し、俺たちの方へと歩み寄りながら問いかけてくる雅樹に対し、俺とかりんは顔を見合わせた後、「「気配で分かる」」と告げた。
「マジかよ!? そんな事まで出来るのかよ、お前ら!」
「まあ、そこまで難しい事でもないしな。それで? 雅樹は一体何してんだ?」
更に驚く雅樹に対して俺がそう言うと、横で顎に手を当てていた舞奈が、
「鈴花たちに存在を知られたくないといった所でしょうか? ……尾行でもしているんですか?」
と、俺の発した問いへの回答を推測しつつ、そんな言葉を投げかけた。
「あ、いや、まあ……近からず遠からずっつーか……なんつーか……。ほら、あれだ。紘都ってよ、見た目的には軟そう――あまり強くなさそうな雰囲気がするじゃん?」
「んー、まあたしかに、そうだと言われたらそうだなとしか言えないな」
「だろ? だからよ、ふたりがナンパ野郎とか不良に絡まれたりしねぇように、こうしてそーっと見守っておいて、もしそういった輩が実際に現れたらすぐにシバいてやろうと思ってるんだよ」
「……おいおい雅樹、お前、そんな事してたのかよ……」
「そんな事って言うけどよ、こういう所では付き物だろ? そういうイベント。紘都は俺の幼なじみにして大の親友だかんな。ナンパ野郎とか不良に絡まれんのを見過ごすわけにはいかねぇんだよ」
呆れる俺に対し、真面目な表情でそう言ってくる雅樹。
……こういうのを『ガチ』というんだったか? 違ったか?
なんて思っていると、同じく呆れた様子で、
「小説やマンガの読み過ぎじゃないかしら? そんな事滅多に起きないわよ、普通は」
なんて事を言うかりん。
……なんで『それ』を知っているんだ、とは敢えて言わない。
なにしろ、学校の図書室にもそういうラノベ結構置いてあるし。
「……もしかして、今までもこんな事をしていたんですか?」
「おう!」
舞奈の問いかけに対し、胸を張って答える雅樹。いや、胸を張るなよ。
「……ちなみに、今までそういう事態になった事はあるのか?」
「ないな! きっと俺の威圧のお陰だろう!」
「絶対違うと思うわ……」
嘆息しながらかりんがそう言うと、舞奈もまた、
「……鈴花が前に、デート中に妙な視線を感じる時があると言っていましたが、緋村さんだったんですね……」
と、そんな風に言ってため息を漏らす。
「思いっきり気づかれてんじゃないか……。……邪魔になるから、そういうのは私服警官とか私服警備員に任せておけよ。あっちとかこっちとかそっちとか、そこかしこにいるんだしよ」
あまり大っぴらに指し示すのはどうかと思ったので、俺はそういった人物の方へ、静かに視線だけ順番に向けながら、そう告げる。
言うまでもない話だが、普通こういう場所には、そういった人物があちこちに配置されているのだ。
よって、雅樹が懸念しているような事態にはまずならない。
……以前、桜満がその事について話していたが、実際に見たのは俺も始めてだった。
うーん、本当にあちこちにいるんだな。この国の治安の良さが良く分かるというものだ。
なんとも妙な尾行理由ですね……(何)
とまあそれはそれとして……
次回の更新ですが……明後日、月曜日を予定しています!




