第77話 魔法使いの帽子
「ようやく終わったか……」
「ようやく終わりましたね……」
俺と舞奈が疲弊した表情で呟くように言う。
結局、スカートはそのままで、フリル付きキャミソールの上にTシャツを合わせるという形に落ち着いた。
そして、そこに必要に応じてモッズショートと呼ばれるモッズコートを羽織る形だ。
……言うまでもないが、これらの用語はすべてかりんから聞いたものだ。俺がそんな用語を知っているわけがないからな。
というか、かりんも良く知っているものだ。
「あ、でも、成伯さんがファンタジーだと言った服も、個人的には気に入ったので、あれも買っていきましょう。なんとなく魔法使い感がありますし! ……出来れば、魔法使いが被っている鍔が広くてあの途中でクタッとしているトンガリ帽子があればいいのですが……」
「ああ、あれか。あれなら……」
俺はそう言いながら、魔法収納空間から舞奈のお望みの帽子を取り出す。
「あ! それです! それ!」
「なんで持ってるのよ……?」
「いや、俺、魔道士なんだが?」
「そういえばそうだったわね……」
「あれ? という事は、その帽子は成伯さんが使っていた物なんですか?」
「いや、これはドイツに行った時に、とある城の倉庫に眠っていた物だ。いつからそこにあったのかは持ち主も知らないらしいが、必要ないっていうから貰ったんだ」
と、そう言いながら帽子を舞奈に手渡す。
……しかし、本来、あの地の魔女が使っていたとされる帽子――エナンは、こういう感じじゃなくて、角みたいに尖っていて鍔のない物だったはずだ。
何故この形状の物があそこにあったのだろうか……? 改めて考えると、よくわからんな……
「あ、何かピッタリです! ここまでピッタリだと、まるで私の為に作られたかのような感じすらします!」
帽子を被った舞奈が、鍔を持ちながらそんな喜びの声を上げる。
「なにその、自意識過剰気味な反応……。舞奈にしては珍しいわね。……って、本当にピッタリすぎね……ソレ」
なんて事をため息交じりに言いつつ、驚きの表情を見せるかりん。
見ると、たしかにふたりが言うとおり、まるで最初から舞奈用だったかの如くピッタリだった。
偶然だとは思うが……なにかの魔法でもかかっていたりする……のか?
特にそんな雰囲気は感じないが……巧妙に隠蔽されている可能性も……
……って、そんなわけないか。
「なら、それは舞奈にやるよ。俺は使う事ないしな」
「いいんですか! ありがとうございます!」
嬉しそうにお礼を述べてくる舞奈に、
「……それを被ったまま歩いたりしないようにね?」
と、かりんが釘を差した。
まあ……向こうの世界ならともかく、こちらの世界――というか、日本でこれを、しかもショッピングセンター内で被って歩いたりしようものなら、思いっきり目立つのは間違いないな。
何かありそうな無さそうな、そんな帽子の登場となりました。
といった所でまた次回! 次の更新は明後日、日曜日の予定です!




