第76話 着せ替え舞奈
――とまあそんなわけで、商業施設内のショッピングセンターへと足早にやってきた俺たちは、まず最初に舞奈のクラスチェンジ……じゃなくて、服装チェンジを行った。
下のスカート――かりん曰く、プリーツスカートというらしい。かなり昔の人間のはずなのに良く知ってるな――は、特に問題があるわけではないので、上のパーカーだけをまずは変えた。
「とりあえず、無難な感じでスカートに合うブラウスにしてみたわ。……問題はないとは思うけど、なんというか……こう、制服――夏服感があるのよねぇ……。どう?」
試着室前で待機していた俺に対し、そんな事を言って試着室のカーテンを開けるかりん。
ちなみに、かりんのお金で買うわけじゃないから、『3人が納得出来る物を買いたい』とかいう妙な理由で、感想を求められていたりする状態だ。
……舞奈のお金で買うんだから、舞奈が納得すれば良いんじゃないかと言ったのだが、舞奈のセンスでは危険すぎると言われては否定も拒否も出来なかった。
というわけで――
「うーん……。言われてみると、たしかにちょっと制服っぽいな……」
と、ブラウスとスカート姿の舞奈を見て、そんな感想を口にする俺。
「私はこれでも良いと――」
「やっぱりそうよねぇ……。こういう時は、フリル付きのブラウスにジャンパースカートの方が良いのかしらねぇ……」
かりんが舞奈の言葉に被せるようにしてそんな風に言い、そして再びカーテンが閉じられる。
「そういうわけで、こっちに着替えて!」
「えっと……これってどうやって履くんでしょう? 上から被ればいいんですかね?」
「え? こういうの履いた事ないの?」
「ありません!」
「胸を張って答えるような事じゃないわよ……?」
なんて声を聞きながら待つ事しばし、再びカーテンが開かれ、今度はある意味懐かしい雰囲気のする服装の舞奈が姿を現した。
「どうよ、このリボンとフリルをふんだんに取り入れた格好は!」
「……ああうん。良いとは思うが……ファンタジーだな」
昔は良く見かけたなぁ……。年齢的に少し幼い貴族令嬢とかが良く着ていた服にそっくりだなぁ……なんて事を思いながら、かりんに対してそう返す俺。
「むむ……。言われてみると、ショッピング向き――カジュアルじゃないわね……」
そう言って再びカーテンが閉じられる。
そして――
「こんな感じでどうかしら?」
「いや、それは時代が違いすぎる」
「大正ロマンって感じですよね。嫌いではないですが」
とか……
「ならこれは?」
「あ、ちょ、ちょっとまだ開けな――」
「……露出度上がりすぎじゃね?」
「あうぅ。は、恥ずかしいです……」
だとか……
「じゃあこんなのは?」
「服自体は悪くは……ないが、舞奈には致命的なまでに似合わないな」
「ですよねぇ。……それにしてもこの服、なんでこんなにチェーンがいっぱいあるんですかね? 凄くジャラジャラです」
なんていう、セクシーな女性ミュージシャンとかが来たら似合う……かもしれないような、ジャラジャラと音がする奇抜な服が出てきたりした。
……というか、どこにあったんだ? その服。
それにしても……
俺はあと何回感想を言えばいいんだ……。ゼ――げふんげふん。
……おっといかん、あまりの舞奈の格好にむせてしまった。
などと心の中でアホな事をしたりしつつ、舞奈が着替えて俺が感想を言うのを繰り返す事、約2時間――
「そうねぇ……。まあ、この辺りが良いかしらね?」
というかりんの言葉と共に、遂に舞奈のファッションショーが終演を迎えた。
……ふぅ、なんだかどっと疲れたぞ……
舞奈の服装チェンジだけで1話が終わってしまいました……
といった所でまた次回! 更新は明後日、金曜日を予定しています!




