第74話 ショッピングセンターへの道すがら
「うーん、護符を使った悪霊の進入を防ぐ術の応用で、なんとなく結界を張る魔法は使えるようになったけれど……他はさっぱりだわ」
魔法を教えた翌日、調理器具と舞奈の服を買うために、駅の近くにある複合商業施設……の、ショッピングセンターへと向かう道すがら、そんな事を言ってくるかりん。
「一晩で結界魔法が使えるようになっただけでも十分すぎると思うぞ。やはり、土台があるのとないのとでは、習熟のスピードが違うな」
と、そう返す俺。
「土台があるといっても、あくまでも結界魔法に限った話でしかないわよ? 結界魔法と符術には近しい所――共通している部分があったお陰で、符術の知識や技術をもとに、上手く紐解いていく事が出来たって感じだから、他の魔法は今回みたいな感じではいかなさそうだわ。符術と近しい所なんてまったくないし」
「そうでもないんじゃないか? ひとつ分かれば他の所も自ずと分かる部分が出てくるはずだからな」
「そうですよ。わたしもきっかけをひとつ掴んだ瞬間、それはもう目の前にあった越えられない壁がガラガラと音を立てて崩壊するかの如く、一気に理解が広がりましたし!」
開いた両の手を握る仕草をしながら、自信満々といった雰囲気でそんな事を言ってくる舞奈。
それに対し、俺とかりんは顔を見合わせた後、ほぼ同時にやれやれと首を振った。
「いや……それは高い分析能力を持つ舞奈だからだと思うぞ……。さすがに俺も、そんな一気に使える魔法が増えた事はないしな……」
「そうね……。そしてその分析能力を、もうちょっと服装とかそういう見た目の部分に使って欲しいものだわ……」
「あ、あれ? どうして呆れられるんですかね? それにその……ですね、手持ちの服も……色々踏まえた上で、4着あれば十分だと思いましてですね……」
何故か急に自信がなくなったかのように声の勢いがなくなる舞奈に、
「なんでそこで分析能力がポンコツ化するのよ……?」
と、ため息まじり言うかりん。
……多分、元々服装とかそういうのに興味を持っていないから、知識――情報が不足していて、上手く分析能力が発揮されないんだろうなぁ……
なんて事を、舞奈の代わり……というわけでもないが、分析しながらその服装へと視線を向ける俺。
下のスカートは普通なのだが、問題は上――『古武術』という文字と、いかにも武道やってます感のある美少女の絵が、デカデカとプリントされているという、ちょっと微妙な感じのデザインのパーカーだ。
パーカー自体は別に悪くないと思うが、デザインのせいで、こう……家用の普段着だな、としか言えない格好になってしまっている。
……というか、本当に『古武術』が好きなんだな、舞奈……
でも、さすがにそのチョイスは……まあ……なんだ?
近くのコンビニに行くくらいなら問題はない……と思うが、こうしてショッピングに行くのには不向きである、とでも言えばいいだろうか……
とはいえ、俺もこっちの世界に来た直後は、服装なぞ気にしてもいなかったから、舞奈と同じようなラフな……いや、舞奈以上にラフすぎる格好でデパートとかに行っていたりしたんだよなぁ……
なんて事をふと思い出し、今になって改めて考えてみると、あの格好はなかなかに酷かったな……と、少し恥ずかしくなる俺だった。
センスがアレすぎる舞奈さんです(何)
といった所でまた次回! 次の更新は明後日、月曜日の予定です!




