第73話 かりんの資質
「――さて……と。それじゃあとりあえず、かりんの魔法の資質を調べてみるか」
夕飯の後片付けが終わった所で、俺はそう言って舞奈の資質を測った時に使ったプレートをテーブルの上に置く。
「なんだか少し緊張するわね」
なんて事を言いながらプレートに手を伸ばすかりん。
舞奈の時と同様、かりんの手が触れた瞬間、触れた部分を中心に白く発光するプレート。
そして、そこから緑色へと変化していき、その後は緑色と銀色の明滅を繰り返した。
「私の時とは明らかに反応が違いますね」
「ああそうだな。まあ、大体こういうのが多いけどな。……んで、かりんだが、どうやら治癒系の魔法と魔法の武具――俺が使っている魔法剣みたいなもの――を生成する魔法、それから結界や魔法陣を展開する魔法に資質があるようだな。しかも、上の下……そこそこ高位の魔法まで使えそうだ」
舞奈の言葉に頷き、計測結果についてそう説明する俺。
「支援型……という感じですね。結界や魔法陣というあたりはある意味、凄いイメージに合っていますが」
「支援型ねぇ……。ま、たしかに私は最前線で敵と斬り結んだりするのは得意じゃないわね。だからこそ、破壊の化身――正確にはその一部だけど――を封印するのが精一杯だったし」
「それって、この間遭遇したあれを何万倍にもした存在ですよね? 封印するだけでも十分凄いと思いますよ、私は」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、あれも私ひとりで出来たわけじゃないのよねぇ……。だからまあ、魔法の資質があった事に関しては、純粋に喜ばしいわ」
「霊体化する前は、術とか使えなかったのか?」
「一応、符術の類は使えたけど……せいぜい悪霊とかそういう邪な存在を鎮めたり、進入を防いだりする程度の物が限界だったわ」
かりんは俺の問いに対し、ため息交じりにそう返すと、肩をすくめてみせた。
符術……。縦長の札に文字や紋様を描いて特殊な力を持たせる術……だったか?
向こうの世界だと魔導具……いや、魔力を帯びた石に、魔法の文字や紋章を直接刻み込んで作る『魔法石』が近い代物になるか。
この類の物は一度作ってしまえば、作った物自体は誰でも使えるという点が便利な所だな。
自身には使えない魔法も擬似的ではあるが、使えるようになるわけだし。
「上手くやれば、符術と魔法を組み合わせられそうな気もするな」
「あ、たしかに魔法の矢とか魔法の爆弾みたいなのが作れそうな気もしますね」
俺の言葉にそう続けて言ってくる舞奈。
「魔法の爆弾ってなによ、魔法の爆弾って……」
「錬金的な?」
呆れ気味に返すかりんに対し、舞奈がそんな風に答える。
いや、錬金って……
「――ま、その辺を試す前に、まずは魔法を使えるようにしないと駄目だがな」
「それはまあ、その通りね」
そんなわけで、俺は先日舞奈に説明したのと同じような説明を、かりんに対してするのだった――
錬金……爆弾……と言ったら、まあなんというか……工房的なアレですよね。
とまあそんな所でまた次回! 次の更新は明後日、土曜日の予定です!




