第70話 山と平野と未知の味
「た、たしかにそうですね……。――あ、ちなみに、封印の儀というのを行ったのは何歳の時だったんですか? 今のその姿がその時のですよね?」
「ええそうよ。これは封印の儀を行った時――15歳の時の姿ね。それからまったく変化していないわ。お陰で胸も成長しないのよね……ぐぬぬぬぬっ」
なんて事を言って歯噛みしつつ舞奈を……いや、舞奈の胸を見るかりん。
いや、ぐぬぬぬぬって……。そこまで悔しいのか……?
たしかに胸に関しては、舞奈は山で、かりんは平野といった感じだが、あれはあれ、これはこれ、というものだ。
まあもっとも……そこに関して何かを口にするのは、とても危険な行為である事は、向こうの世界の時点で百も承知しているので、何も言わないが。
……それにしても、いつも余計な事を言っては義理の妹にハンマーでふっとばされていた奴がいたっけなぁ……
もっとも、弓の腕は凄まじいの一言で、空を飛ぶ魔物相手に無双の強さを見せつけていたし、小国とはいえ、一国の王という立場になったにも関わらず、破壊神との戦いでは最速で援軍として駆けつけてきた義理堅い奴ではあったが。
なんて事を思い出している間に、胸の話は終わり、用意した料理もなくなっていた。
「どれもこれも、凄くおいしかったです!」
「ええ、とても良かったわ」
満足げに満面の笑みでそう言ってくるふたり。
「それは良かった。ふたりから見れば、大分変わったメニューだから、口に合うかちょっと心配していたんだ」
「バッチリ合いました! こういうの、何気に好みです!」
「私は元々和食主体……というか、ほぼそれしかない時代だったから、なんというか、こう……『未知の味』を知った気分だわ。こういう料理も作れるようになりたいわね」
ふたりが俺の言葉に対し、そんな風に返してくる。
かりんに至っては、なんだか妙な気合を感じるが……まあ、そこは一旦置いておくとして――
「だが、まだ終わりじゃないぞ」
と、告げる俺。
「え? 他に何か作りましたっけ?」
「何も作っていなかった気がするけど……」
不思議そうに小首を傾げる舞奈と、顎に手を当てて目を瞑るかりん。
「いや、これから作るんだ。……と言っても、すぐに完成するが」
そう言いながら、材料を魔法収納空間から取り出す俺。
「卵、砂糖、牛乳、生クリーム?」
「このサヤインゲンを真っ黒く焦がして乾燥させたような物は何かしら……?」
材料を見ながらそんな疑問を口にするふたり。
サヤインゲンを真っ黒く焦がして乾燥……
う、うーん……そういう感じにも見えなくはない……か?
なんて事を思いつつ「それはバニラビーンズだ」と、告げる俺。
「バニラビーンズ……? ……あっ! わかりました! これって、アイスクリームの材料ですね!」
舞奈が取り出した材料から作れる物を予測し、そんな風に言う。
「ああ、そうだ。俺が作ろうとしているのは、まさにアイス――アイスクリームだ」
俺が舞奈に対し、頷いてそう告げると、
「でも、今から作るの? 時間かかるんじゃ……?」
という、もっともな問いの言葉を口にするかりん。
「そこで、魔法の出番だ」
「えっ!? 魔法で作るんですか!?」
俺の告げた言葉に、舞奈が驚きの声を上げる。
まあ、そういう反応になるよなぁ……。でもあるんだよなぁ……最適すぎる魔法が。
なかなかアレな感じのタイトルに……
といった所でまた次回! 次の更新は明後日、日曜日の予定です!




