第67話 マジックッキング2
「……それ、魔法で加速して大丈夫なんですか? 爆発したりしないんですか?」
「あまり加速させすぎると、魔法が暴走してしまい、時間の進行と変化の関係が乱れる事によって爆発が引き起こされる……という可能性はゼロではないが、今付与した5倍速くらいまでなら、その可能性はゼロだ。全く問題はないぞ」
舞奈の疑問にそんな風に答えつつ、スパゲッティの入った袋を冷蔵庫から取り出すと、続きの言葉を紡ぐ。
「――さて、3分で出来るから、それに併せてこれを茹でる」
この状態で売られている上に、3分で茹で上がるのが実にナイスだ。
あまりにも早すぎて加速魔法が不要だしな!
てなわけで、大さじ3杯の塩を入れた水でスパゲッティを茹でている間に、他の物も冷蔵庫から取り出す。
「にんにくとトマトで作るの?」
「ああ。それと余ったベーコンを使おうと思う。まあ、さっぱりとしたのが好みなら、ベーコンはなくてもいいんだけど……どうする?」
かりんの問いかけにそう答え、逆に質問する俺。
「あった方が良いと思います! 肉は大事です!」
「……と、舞奈が言っているから、私もそれでいいわ」
手を上げて告げてくる舞奈と、それに追従する形で答えるかりん。
……舞奈は肉が食べたいらしい。実家では和食ばかりだと言っていたので、その反動みたいなものなのだろうか? 一般的な和食だと、肉を使うような物は、西洋の料理ほど多くはないっぽいし。
「じゃあ、今回はベーコンありでいくか」
というわけでベーコンも使う事にする。
なお、玉ねぎを入れても良いのだが、残念ながら買ってこなかったし、冷蔵庫にも残っていなかったので、今回はなしだ。
……てな事をやっている間にも時間はドンドン過ぎていくので、なかなかに恐ろしい。
新たな食材に続き、プラスチック容器を冷蔵庫から急ぎ取り出す。
「そのプラスチック容器はなんですか? 妙な紋様が描かれていますが……?」
「ああ、これ自体は腐敗防止効果を持つ魔法の術式を刻み込んだだけの、単なるプラスチック容器だ」
首を傾げてくる舞奈に対し、そう説明すると、
「魔法の術式が刻み込まれている時点で、既に単なるプラスチック容器じゃない気がするわよ……」
なんて事を呆れた声で言ってくるかりん。
ま、まあ……たしかにそうだな……と思いつつ、時間がもったいないので敢えて何も反応を返さず、1つ目の容器の蓋を開ける俺。
「見た事がない食べ物ですが……見た目から考えると、ピクルス的な何か……ですか?」
中に入っている物を見ながら、問いかけてくる舞奈。
「その通りだ。これはカ……カープルとフランスでは呼ばれる植物のツボミを、ピクルスにした物だ。一般的にはケッパーとも言うな」
と、そう答える俺。
……危うく向こうの世界での名称――カパリッサと言いかけたが、フランス語でも『カ』から始まる事を思い出し、ギリギリ言い直した。
「これをこういったシンプルなトマトパスタに、パンくずと一緒に混ぜるとウマいんだよ」
俺はそう言いながら、弱火にしてあるフライパンにオリーブオイルを投入。
即座に魔法剣を生み出すと、ガーリックを放り投げ、超高速斬りでみじん切りにしつつ、フライパンに投下する。
……と、そうこうしているうちにスパゲッティが茹で上がり、ついでにキッシュの方も出来上がった。
あともう少しだな。
調理法は個人的な嗜好に基づいている為、ウマイかどうかは人によりますが……トマトパスタにパンくずとケッパーを足すのは、割といけるのではないかと……
あともう少しと言っている通り、マジックッキング終了まであと少しです。
次の話の全部は使わない気がします。
さて、その次の話ですが……更新は明後日、月曜日を予定しています!




