第65話 舞奈の服
「はぁ……まったく……」
額に手を当てて、ため息混じりに呟くかりんの姿に、なんだか妙な力関係……というか、姉妹みたいな感じになっているなぁ、と思う俺。
「ん? どうかしたのかしら?」
俺の視線に気づいたらしいかりんが、そう問いかけてくる。
「いや、随分と世話を焼いているから、まるで姉妹みたいだと思ってな」
「……しょうがないじゃない、あのまま放っておいたら、将来とんでもない事になりそうだし……。――知ってるかしら? 舞奈の私服って4着しかないのよ」
「少なっ!」
反射的に言葉が口を衝いて出る俺。いやだって、4着って……
「でしょ? 基本的に舞奈って自分の興味がある所以外は無頓着というか、気にしないというか……極端なのよねぇ……。ここ数日一緒にいて、家の中を見て……それをよーく、とてもよーく理解したわ……。だから私は思ったのよ、このままじゃだめだわ……これは矯正しないと大変な事になる、とね」
かりんは腕を組んでそんな風に言うと、舞奈の方を見て嘆息する。
「な、なるほど……」
そう口にしながら俺は、舞奈の部屋で妙に物が少ないように感じたのはそういう事かと思う。
自分が生活している場所以外の内装――レイアウトには興味がないし、服も大して持っていないから、あんな感じだったんだな……
「……うん、決めたわ。――舞奈、明日は調理器具と一緒に服も買いに行くわよ!」
急に頷いたかと思うと、そんな事を舞奈に告げるかりん。
「ええっ!? あ、あの……調理器具はともかく、私服は4着あれば別に問題ないというか……困らないのですが……。外に出る時は制服を着るという手もありますし……」
「色々な意味で問題があるのよっ! 大ありなのよっ!」
舞奈に対し、フシャー! と威嚇する猫の如き姿で言い放つかりん。
……というか、なんか本当に猫の耳が現れたぞ?
どうなってんだ? これ。もしかして、霊体だから……なのか?
そういえば……幽霊は、少しだけなら容姿とか見た目とか変えられる、という論文を以前、研究塔で見た事があるな……
たしか、感情の昂りによるとかなんとか……
なんて事を思い出していると、かりんは俺の方を見て、
「――というわけで、悪いんだけど透真も付き合ってくれないかしら?」
と、そんな風に言ってきた。あ、猫の耳が消えた。
「まあ、特に何かする予定があったわけでもないし、別に構わないが……」
おそらく魔法で荷物を預かるか送るかして欲しいという事だろうと考え、俺はそう答える。
「じゃあ決まりね」
「え、あの……」
「じゃあ決まりね」
「あっはい……」
同じ言葉を繰り返し、強引にOKさせるかりん。
まさに、有無を言わさないとはこの事だな……
最終調整をしていた為、少しばかり更新が遅くなりました……
次回の更新ですが……明後日、木曜日を予定してます(多分、大丈夫なはず……です)




