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外伝I-VI かりんとカフェ6

「くそっ! まさか本物の幽霊がいやがるとは思わなかったぜ!」

「全くっス……。でもアニキ、あれ本当に幽霊だったんスかね……?」

「分からん。俺たちがあそこで店をやっていた時は、出た事ないんだがな……」

「たしかにそうっスね……。まあ『アレ』の扱いが大分アレだったスから、俺たちがパクられた後に『怨み』を抱いたままおっ()んだのがいたのかもしれないっスけどね……」

「……もしそうだとしても、だ。俺たちはどうしてもあのホーンテッドカフェとやらをどかして、あそこを取り返さにゃならねぇ……」

「そうっスね……。じゃないと俺たちの稼いだカネが、全て水の泡になっちまうっスからね」

 なんて事を話す二人組。

 

 ……良く分からんが、あそこに金が隠してあるようだな。

 だが、それにしては方法が随分と遠回りというか……お粗末すぎやしないか? 所詮は小者……といった所か。

 などと心の中で呟いていると、

「何を目的としているのか分からないけど、方法が雑すぎだわ。まさに小悪党、ザコの考えるアホみたいな手段って感じねぇ……」

 という俺の思った事をそのまま――いや、より酷い言い方をするかりん。

 

「……っ!? て、てめぇは!?」

「あの時の幽霊店員!? 何故ここに!?」

 驚くふたりに対し、

「――闇に踏み込む者は、闇に狙われる覚悟が必要なのよ?」

 なんて事を言うかりん。

 

 ……桜満の書いた物語――こないだかりんが買っていた本――に、そんなセリフあったなぁ……と思っていると、不意にかりんの姿が薄くなる。

 

「なっ!? き、消え……!?」

「や、やっぱり本物……!?」

 恐怖と共に混乱する二人組。

 そんな二人組の後ろへと回り込み、

「――貴方たちは私という闇に踏み込んだ。だから私に狙われるのよ。さあ、冥府へ誘ってあげるわ」

 なんて事を言った。……うん、そのセリフもあったな……

 

 しかしその言動は、この二人組には効果抜群だったようで、口から泡を吹いてあっさりと気絶してしまった。

 その結果、

「……って、あ、あら? これじゃあ『話が出来ない』わね……。ど、どうしようかしら……」

 と、逆に慌てるかりん。

 

「そうだな……。こいつらが何らかの事件に関わっていそうなのは間違いない。こういう時は桜満に話をするのが一番だな」

 そんな風にかりんに告げ、桜満に連絡を取る俺。

 

 ……

 …………

 ………………

 

「――あそこは今でこそカフェになっているけど、昔はあのふたりが経営していた『客に対して店員が非合法のサービスをする飲み屋』だったんだよね」

「ふぅん、客に対して店員が非合法のサービスをする飲み屋……ねぇ。敢えて詳しくは聞かないけれど、いつの時代にもそういうお店って存在するものなのねぇ」

 やれやれと首を横に振るかりんを見ながら、いつの時代どころか、別の世界にも存在するな……と、心の中で付け加える俺。

 

「だった……という事は、当然捜査が行われて潰されたって話だよな?」

「その通りだよ。ただ、摘発した際に金庫の中身が空っぽでね、取り調べでふたりにその事を追求した所、金は使ってしまったと言っていたみたいなんだけど……どうやら、捜査でも見つからないように『巧妙に隠していた』みたいだね。あ、ちなみに『怨み』を抱いたまま死んだものがいるんじゃないかって言っていたみたいだけど、それは一切なかったよ」

 俺の問いかけに対してそう返してくる桜満。

 そうなのか……と思いつつ、ふたりの行動に納得がいった俺が口を開く。

「なるほど……。だから店を自分たちの手に取り戻そうとしていたんだな」


「うーん……。わざわざそんな回りくどい方法を取らなくても、それこそ深夜に忍び込んで、こっそり盗み出すとかすれば良かったんじゃないかしらねぇ……」

「それはまあ、たしかにそうだな。だが、そうする事が出来ない何らかの理由があったんだろうな」

 腕を組みながらそんな風にかりんに返すと、

「ま、その辺は追々判明すると思うよ。なにしろふたりは業務妨害で再び取り調べをする事になるからね」

 と、そう言ってくる桜満。

 

「ま、たしかにそれもそうだな」

「そうね。でも、警察の捜査でも見つからないように隠す程の連中が、どういう理由でそんな事をわざわざしたのか気になるわねぇ……」

「案外、しょうもない理由だったりするかもな。なんせ小者だし」


                    ◆


 ……そんな風に口にした俺だったが、後日その理由が判明し、本当にしょうもない理由だった事に、俺は色々な意味で大いに驚かされる事となった。

 

 ――まさか『金を壁に埋めて隠していた』とは思わなかったが……

 それ以上に『埋めた場所が分からなくなっていて、壁を片っ端から壊して回収しようとしていた』……とはなぁ。さすがにそれは想定外すぎるというものだ……

全6話という思ったよりも長い話になりました……

外伝と銘打っている事もあり、読まなくても大丈夫なように、設定とオチは(本編に影響しないよう)比較的軽くしていたりします。

なお、マスターや璃紗に関しては、今回は顔見せ程度の登場となりましたが、今後の外伝ではもう少し出番が増える予定だったりします。


※追記

1ヶ所、フリガナを追加しました。

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