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外伝I-IV かりんとカフェ4

「財布を置いていったってどういう事だ?」

「あ、透真。実はあの男子生徒が、床とウォーターサーバーの乗っている台の隙間に財布を落としてしまってね。私が床に潜り込――」

「――ちょっと待った」

 かりんの発言に被せるように静止の言葉を発すると同時に、俺はかりんと俺の間でだけ会話が成立する『スフィア』を展開する。

 

「――床に潜り込んだって……それつまり、すり抜けたって事か? 客の前で」

「い、いえ、さすがに客の前ですり抜けるのはマズいと思ったから、一度裏に回ってから潜り込んだのよ。でも、こうニョキっと顔と手を出した所で偶然目があってしまって……」

「……うんまあ、そりゃ驚くよな。確実に」

 かりんに対してそう返しながらスフィアを解除すると、

「――まあ、事情は分かった。財布は俺が返してくる。あの男子生徒なら知っているからな」

 と告げる。

 

「え? 今のアイコンタクトで理解したのぉ? 随分と深い仲なのねぇ」

 なんて妙な誤解をしてニヤニヤとした顔をするマスター。

 ……あ、スフィアの外から見るとそういう風に見えるのか。これはこれでマズったな。

 

「そ、そんなんじゃありませんよ!」

 顔を赤くしてそう否定するかりんだが、それだとまるで肯定しているように見えるぞ……

 

 これは何か言うと余計に誤解されそうだ……

 そう考えた俺は、敢えて何も言わずに、

「というわけでマスター、少し空けますね」

 とだけ告げて、かりんから財布と、何故か一緒に持っていた伝票を受け取り、男子生徒を追う。

 

 足痕追尾の印を刻んであるので、足跡……というか、走っていく後ろ姿がバッチリ『視えて』いる。

 故に、すぐに男子生徒を見つける事が出来た。

 

「おーい!」

 壁に手をついて息を整えている男子生徒に対してそう呼びかけると、

「……!? ……あ、ああ……成伯か。こんな所でどうし――」

 と、そこまで言った所で、俺の格好――カフェの名前が入ったエプロンを身に纏った姿を見て、

「――って、あのカフェでバイトしてたのか」

 と、そんな風に言ってきた。

 

「ああ。財布を置いたままいきなり逃げ出したって聞いたから、追いかけてきたんだよ。あと、会計の為にな」

 そう告げて、伝票を見せる俺。

 

「す、すまん。無銭飲食をするつもりはなかったんだ。ただ、ちょっと恐ろしい物を見てしまったもので……」

「財布を置いて逃げて行った奴を食い逃げだとは思わんから安心しろって。それより、恐ろしい物って言うのは、目と手か?」

「あ、ああ。幽霊屋敷は雰囲気だけだと思っていたが……まさか本物の幽霊までいるとは……」

 俺に対してそんな風に言いつつ、青ざめた顔をする男子生徒。

 

「あ、いや……あれは猫がたまたまホラーグッズを加えたまま入り込んでいたんだわ。幽霊じゃないから、そっちについても安心してくれ」

 適当な事を言いつつ、精神を落ち着かせる魔法を使う俺。


「そ、そうだったのか……。本物の幽霊が出たのかと思ってマジで驚いちまった……」

「まあ……タイミングが悪かったな、としか言えないが……驚かせてすまん」

「い、いや、気にしないでくれ。勝手に見間違えて驚いた俺が悪いんだ」

 魔法の効果でクールダウンした事により、そんな風に返してくる男子生徒。

 

 ふぅやれやれ……。とりあえずどうにかなったな……

 心の中でため息をつきつつ男子生徒から飲食代を支払って貰い、店へと戻る俺。

 

 すると、

「す、凄いです! 一体どうやったんですか!?」

 と、そんな感じでかりんとは別のバイトの女子――俺たちとは別の学校の生徒らしい――が、感激と共に興味津々といった様子でかりんに食いついている姿が、店のドアを開けると同時に目に入ってきた。……今度は何だ?

『スフィア』は簡単に言うと、魔法の作用している領域――フィールドの事です。

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